福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一
- 明石書店 (2017年7月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750345338
作品紹介・あらすじ
西田哲学と福岡生命科学は驚くほど似ている!
生命の定義と知の統合に向かう京都学派の記念碑的成果!
「動的平衡」概念の提唱者・福岡伸一氏(分子生物学者)が、西田哲学の継承者・池田善昭氏(哲学者)を指南役に、専門家でも難解とされる西田哲学を鮮やかに読み解く。その過程で2人の碩学は生命の真実をがっちり掴む1つの到達点=生命の定義=にたどり着く……。
西田哲学を共通項に、生命を「内からみること」を通して、時間論、西洋近代科学・西洋哲学の限界の超克、「知の統合」問題にも挑んだスリリングな異分野間の真剣"白熱"対話。
福岡伸一訳西田幾多郎「生命」、池田―福岡往復メール、書き下ろし(プロローグ、「動的平衡」理論編、エピローグ)も収録!
感想・レビュー・書評
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ちょっと進んでまた戻って、そこでぐずぐず立ち止まって。なるほど〜と思っても、やっぱり分かってないな、私、と眉間に皺が寄る。
哲学という、実体のない、曖昧模糊とした思考の迷路が、生命を考える生物学を道案内に迎えると、ちょっとだけ道幅が広がって、ちょっとだけ歩き易くなる感じ。
それにしても#福岡伸一 先生は難しいことをとっつき易く、硬いものをやわらかくしてくださる、すてきな「先生」だなあ。福岡先生の本を読むと、世界の明度が一段あがる眼鏡をかけたような気持ちになる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一』紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=kGXRsnU7jio -
この本に出会えてやっと西田哲学の絶対矛盾的自己同一や無の意味がわかったような気がしました。
福岡さんの生物の無生物の間も読んでみたいです。
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今回のプログラムを通して、気になった一冊。
「生命をめぐる思索の旅」のお供に。(じん)
生命は時間を先回りする?型破りな生命科学と西田哲学の交差点(福岡伸一、西田哲学を読む-生命をめぐる思索の旅-)
https://beyondthenexus.com/fukuokashinichi_nishida/ -
「逆限定」について福岡さんが食らいついていくところは痛快。私も同じ疑問を感じてました。
ロゴスとピュシスについての話は、科学への違和感の要因が少し分かったようです。
西田幾多郎は生命の本質に気づいていたのに、言葉が難解で一般に広く伝えることができなかったということだろうか。
西田幾多郎も動的平衡も初めて触れたが、自分の中でいちばん腑に落ちる「生命の在り方」だった。 -
二人の、その分野における碩学、それも自らの専門分野だけにとらわれない柔軟な思考を持ったお二人のダイアログがもたらす知的興奮を存分に味わうことができる。
「一冊で二冊分おいしい」とも言えようか。西田幾多郎の哲学のエッセンスと、福岡伸一の「動的平衡」・「ベルグソンの弧」の連関を二つながらに楽しむことができる。
特に福岡が西田の「逆限定」をどう理解していくかというところが、少しの疑問のないがしろにしない科学者としての姿勢が伺われて、それがまた読者にも理解を容易にさせてくれている。好著。 -
西田幾多郎の哲学が、福岡伸一の生命科学にフィットすることを強く感じた。
ただ第三章で、「逆限定」という言葉に対して、(正確には、「包まれつつ包む」に対して)、なかなか福岡さんが理解できなかったのは、それが哲学と生命科学の壁にあったからではないかと思う。
因果関係と同時性、これも重要なところだと思った。福岡さんの「先回り」という言葉がいかに斬新であっても、因果関係の世界にとどまっているように思われる。科学においては、やはり同時性を扱うのは至難であるのだ。だが、これは眉唾物だ。統計学においては、同時性を表す相関関係のほうが因果関係より簡単だといわれているからだ。
池田さんは、あまり大したことはないと思ったが、あえて評価すれば、福岡さんという名馬を見つけた名伯楽であったところであろう。
実は、池田さんの『西田幾多郎の実在論』を先に読んでしまっているので、それもあってか、池田さんに対する言葉遣いが気になってしまった。西洋哲学と西田哲学という「西」にかけた言葉遊びや、先ほどの「包まれつつ包む」という訳の分からない言葉。それから、西田幾多郎を絶対視するあまり、他の人間を低評価する傾向にあるところ。
一方、福岡さんの『生物と無生物のあいだ』もだいぶ昔に読んだが、シュレーディンガーや、シェーンハイマーなどの名前は憶えていた。「内の内は外」とかというのも覚えていた。でも、動的平衡というのは、新書で題名だけで知っていたので、新鮮ではあった。ベルグソンの弧という例があったが、エントロピー状態にいる我々生命が物質を壊しながら、物質を生成するというようにしてエントロピー機構それ自体は壊さずにうまく流れているというところである。 -
この本を読む事により、なんとなく西田哲学の難解な表現が何故難解に到ったかの理由が、少し理解できたような気がする。福岡ハカセが池田先生に食いついていくところがなかなか面白かった。