麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか

著者 :
  • 亜紀書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750509075

作品紹介・あらすじ

毎年麻疹が流行し、先進国で唯一エイズが増え、結核が減らない国。
ワクチン行政が世界標準より20年遅れている国。
なぜこんな状態になってしまったのか!?
日本の医療、行政、マスコミ、製薬会社、そしてわれわれ国民のなかにある“盲点”をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 同じ過ちを幾度となく繰り返す
    今までの失敗の本質を熟慮して、今後を考えて欲しい。

  • タイトルを見ると感染症だけの話をする本のように感じるが、実際は感染症の話を入り口として、医療全般について言及されている本である。感染症についての話では、受診することのリスク、抗菌薬に対する耐性化の問題に加えて、新興感染症対策のあり方と現実の批判にも触れられており、感染症対策においては、時に倫理や人権が制限される場合も考える必要があると、冷徹に指摘する。感染症対策は特に公衆衛生的な視点が大切であることは、私自身も取材を通じて思うところである。医療に従事する側の理解ももちろん抗菌薬の使い方等の専門的知識の点でbrush up してもらいたいところであると同時に、一般市民が適切な対応をとれるよう、メディアは必要な情報を提供する役割を担わなければならない。

    また、医療全般の話に話題が及ぶと、リスクとベネフィット、科学の進歩と現在の医療、医師患者間の信頼構築等、普遍的な話題について、示唆に富む記述が明快な文章でなされる。特に、信頼関係の構築について著者は"Shared decision making" を提唱している。すべての情報を明らかにした上で関わるすべての人が議論し、最良の方向を決める。これは患者も含め、医療に関わるすべての人にとってよい結果をもたらす考え方ではないだろうか。本書の内容とはそれるが、この点について最もわかりやすい例となるのは出産だろうと私は思っている。出産に対する産婦からのニーズは多様であり、そのためもあって医療者と産婦側とのトラブルも多い。オプションをできる限り示して対応をともにじっくり考えることができれば、信頼関係の構築もスムーズにでき、管理分娩であろうが自然分娩であろうが、食事がどうであろうが、良好な関係の中で出産を迎えることができるだろう。

    臨床感染症学についての紹介、医療に欠かせない公衆衛生学の問題、製薬企業とのつながりの問題、自己犠牲的な日本人医師のメンタリティの問題、医師患者関係の問題と、現代医療をとりまくさまざまな課題を、本書はきわめてわかりやすく、だれにでも読みやすく噛み砕いて解説している。これだけの内容をコンパクトにまとめた本書はまさに快著と呼ぶにふさわしいだろう。

  • 10/11/16。

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著者プロフィール

1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。著書に『コロナと生きる』(朝日新書、内田樹との共著)、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)、『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル新書)ほか多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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