帝都の事件を歩く――藤村操から2・26まで

  • 亜紀書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750512211

作品紹介・あらすじ

近代日本の青年たちが、『坂の上の雲』をつかんだ先には、おおきな虚空があるだけだった。日露戦争後、青年たちは「なんのために生きるのか」を自らに問いかけ、悩みを抱えるようになった。そして本郷・東大の周辺に集まった煩悶青年たちは、やがて政治へ目覚めていく。
第一次世界大戦後の好景気、不況、震災は、社会に格差を生み出し、青年たちは鬱屈をさらに深めて、血盟団事件、5・15、2・26などのテロを生む。
森まゆみさんを案内役に、本郷にはじまり東京駅、日本橋、両国、田端、赤坂・・・・・・、東京で繰り広げられた近代史の現場を歩く!

感想・レビュー・書評

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  • 所謂、現場散歩探索もの。これは近代事件を扱っている

  • 東京巡検をまえにして。ざっと読んだ。中島氏と森さん(このひとは初めて知った書き手)が東京をぶらぶらしながら主にテロ・クーデター事件(右翼)の経緯などをはなしてまわる。最初が本郷で煩悶青年からはじまるのが興味深い。
    まあ、概説というより一般向けの本やね。
    ・井上日しょう 群馬に資料館あるん?
    ・宮沢賢治の国柱会
    ・芥川龍之介 下町生まれの葛藤
    ・震災で江戸っ子がいなくなった
    ・田端 ゆっくりあるいてみたい
    ・宮本けんじ 小林秀雄
    ・5・15で日銀も襲われる
    ・5・15で変電所をおそう愛郷
    ・満川亀太郎と革新の神楽坂
    ・大日本印刷 創始者が彰義隊ってまじ

    ・島村抱月 やりましたね。心中

  • ノンフィクション

  • 「血盟団事件」の中島岳志が中沢新一の「アースダイバー」のように、「谷根千」の森まゆみが「ブラタモリ」のように、実際の町を歩いておしゃべりして、そのエリアに封印されている人と歴史を開放し、時代の空気までも召喚する本です。本よりもETVの番組の方がその空気感じられるかも。タイトルは「ブラタケシ×ブラモリ」(お粗末!)。とういうのは、この本のテーマが明治という幼年期をすぎた日本の青春期のモヤモヤを「煩悶青年」の帝都での行動として、現代の東京に、再び纏わせることで、高度経済成長期の後の懊悩に対する視点を持つことにあるように思うからです。だから、この本の本当の主役は章ごとにつけられた地図であり、巻末につけられた人名索引で何回も行ったり来たりしました。この本片手にもう一度、街歩きしたくなります。っていうかお二人と一緒に歴史散歩したい!たまたま2.26近くに読了。

  • 「煩悶」「不安」「鬱屈」のエネルギーがリエゾンして、社会を動かしてしまう。今、まさに。15年戦争に至る過去の現象を読み解くキーワードではないのだ。
    実に興味深い。おもしろい。東京を読み解く、帝都を読み解く、さすが、森さん。私も見聞きし、歩きながら、考えたい。考えることは生きることだ。しかし…何か、良い社会へと、盲目的で、何かを待望してしまう大衆…それも私だ。

  • 2013.01.01読了。

  • 新潮社本館の裏に住んでいたのは、小さん師匠ではなく、志ん朝師匠です。
    いやあ、お二人ともさすがに詳しく、勉強になりました。ボースさんのことは知らなかった。中村屋の「カリー」がおいしい理由がわかりました。

  • 森鴎外や正岡子規、芥川龍之介などの文士や、社会に対して鬱屈した気持ちを抱えていた若者が暮らしていた約100年前の東京を巡る本。
    関東大震災、5・15事件が起こるまでのあらましと世相の雰囲気、貧富の差、革命を起こそうとする若者の機運…インターネットやケイタイが無いだけで驚くほど現在のマインドや空気感の中に合致している点が多いことに気づく。歴史は繰り返すのか?

  • 以前、20代前半の友人とイスラム原理主義者の自爆テロの話をして
    いた。「日本じゃテロなんて考えられないですよね」と言う。

    え…日本にもテロはあったじゃん。虎ノ門事件とか、浜口首相や
    原首相の暗殺事件とか。

    クーデターだってあったぞ。2.26事件とかさ。学校で習わなかった
    かい?

    本書は日露戦争後、燃え尽き症候群とも呼んでもよさそうな気持ちを
    抱えた青年たちが引き起こした事件の場所を歩きながらの対談集だ。

    本郷、江戸川橋、東京駅、隅田川、田端、日本橋、永田町を、東京案内
    と言えばこの人、森まゆみを案内役に歩き回っている。

    路上対談とは言っているが、事件やその背景の思想形成に関しては
    各章の「まとめ」で語られているのが残念。歩きながら話している
    のは建物や風景の話が多かったね。

    これ、全部歩きながら話しているのかな。年号とかばんばん出て来るん
    だよね。わたしゃ資料を見なきゃ言えないよ。

    「隣の建物に残っているらしいですよ。あ、あった」

    なんてのが同じ発言のなかで出てくるのだが、これ、編集の方で移動した
    ことの一文を挿入した方がよかったんじゃないか。瞬間移動した訳じゃ
    あるまいし。

    森さんの東京話は、相変わらず奥が深くて知識が豊富で愛情たっぷり
    で楽しい。出来れば、「まとめ」の部分も路上でやって欲しかったな。

  • 歴史上の重要事件や重要人物にゆかりのある東京の各地域を、明治から昭和まで時系列になるように中島・森両氏が散歩する。
    各地域ごとに、路上での対談と、同じく対話形式での解説編に分けて収録されている。
    本書全体を通じて読むと、明治期に本郷で生まれた「煩悶」が、やがて昭和初期のテロリズムへと繋がってゆく流れがよく理解できる。
    またかなり詳しい地図も付いているので、本書を携えて歴史散歩をすることも可能だろう。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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