間取りと妄想

著者 :
  • 亜紀書房
2.99
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本棚登録 : 774
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515076

作品紹介・あらすじ

世界初(!?)の間取り小説集
13の間取り図から広がる、個性的な物語たち。身体の内と外が交錯する、ちょっとシュールで静謐な短編小説集。

まず家の間取を決め、次にそこで展開される物語を書いたのは大竹さんが世界初だろう、たぶん。13の間取りと13の物語。
―藤森照信氏(建築家・建築史家)

家の間取りは、心身の間取りに似ている。思わぬ通路があり、隠された部屋があり、不意に視界のひらける場所がある。空間を伸縮させるのは、身近な他者と過ごした時間の積み重ねだ。その時間が、ここではむしろ流れを絶つかのように、静かに点描されている。
―堀江敏幸氏(作家)

川を渡る船のような家。海を見るための部屋。扉が二つある玄関。そっくりの双子が住む、左右対称の家。わくわくするような架空の間取りから、リアルで妖しい物語が立ちのぼる。間取りって、なんて色っぽいんでしょう。
―岸本佐知子氏(翻訳家)

感想・レビュー・書評

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  • 間取りが13、そしてその間取りで物語が始まるという…なんとも不思議な短編集。

    どれも見たことのない間取りに何度も「えっ!」と驚かされる。
    なんでこんなところにドアが⁇とかどういう意図で⁇となる。
    耐震は大丈夫なのかと思う私には驚きの連続。

    なかなか面白い。
    今は、建て売りが多いと思うので拘って建てた家はなかなかお目にかかれない。
    だが注文住宅でもここまでは…と思うのだが。
    妄想は果てしない…




  • 建売住宅の多い現代ではやや薄めだが、住宅の間取りやインテリアは、住人の生活や嗜好を色濃く反映している。それが設計士に頼んで建てた住宅ならなおさらである。だからかもしれないが、マイホームに客を招待するのは、まるで自分自身の心のうちをさらけ出すようで、抵抗感と心もとなさを感じてしまう。

    本書は、著者が考えた13の間取りをめぐる妄想の物語。ストーリーをドラマチックにするためか、設定された間取りはかなり特殊なものばかりだが、それぞれの住人の秘密を覗き見てしまったあとは、背徳感やエロティシズム、恐怖など、さまざまな感情に揺り動かされる。

    一番印象的だったのは、最初の短編『船の舳先にいるような』。2つの川の合流点にある三角形の土地にセカンドハウスを建てた主人公。尖った敷地に合わせて船の舳先のような形のガラス張りのリビングを作った彼女は、大雨の日、一人で船に乗っているような高揚感を覚える。
    生活の基点とするには突飛すぎる間取りだが、セカンドハウスなら住んでみたい家。

    窓の一切ない隠れ部屋で残酷な殺人ストーリーを夜な夜な書き連ねる『仕込み部屋』も、主人公の心の闇が表れていて印象的だった。閉所恐怖症の自分には耐えられない間取りだけれど。

    なぜこのような間取りになったのだろう、と首をかしげるような面白間取りがテレビ番組で紹介されることがあるが、そのような家には、私たちの及びもつかないような住人たちの不思議な、または恐ろしい秘密が隠されているのかもしれない。

  • 前回、間取りの本を読んだが
    今回のこの本はまず間取りを作り、
    その間取りの部屋を元にお話を書くという作り。
    完全に妄想の世界だ。

    私も子供の頃、間取りを見るのが好きで
    その間取りの部屋で生活するなら〜とか、
    この部屋に家具を置くなら〜とか妄想したが
    この本は更に上を行く妄想っぷりで
    こういう楽しみ方もあったのか!と感心した。
    間取り一つで冒険できる素敵な一冊。

  • 間取り図を見たり、自分で書いたりして楽しむのが好きだった頃があった。
    だから表紙を見て思わず手に取った本。
    個性的な間取り図のあとに続く13の短編。
    その家に住んだから、その人が出来上がったみたいな感じも味わえたし、怖さや不思議な感じも味わえた。

  • 「間取り」で「妄想」することが好きすぎて、定期的に間取りの夢を見るほどだ。そんな私だから、この本が様々な書評で取り上げられ話題になっていたときから気にはなっていたが、登場する間取りが如何せん個性的すぎないか…?というのが引っかかっていた。でも読み始めたら、それぞれのクセがある間取りから広がる暮らしぶりが何とも面白く、シュールな物語世界と淡々とした文体に早速魅せられました。
    独特の世界観なので好みは分かれそうかなとも思うけど、間取りと文章を交互に見比べながら、脳内であれこれ想像するのはなかなか楽しかった。ストーリーとして面白かったのは、ユニークな間取りにちょっとした助平心を挟んできた「浴室と柿の木」かな。最終話の「夢に見ました」、半分は自分のことかと思いました!「現実では決して体験することのない至福感に全身を持っていかれる」、まさに、私が間取り夢を見たときの思いそのもの。最近は見てないが、本書に出てくるようなシュールな間取り夢を見たいなぁ。

  • 間取りを見るとワクワクする気持ちは共感。自分でもチラシに入っているマンションの間取りを見て、勝手にそこでの生活を想像したりするから。でもチラシに載ってるのは結構ベタなの多くて、あまり突拍子もない間取りないですね笑

    間取り的には「どちらのドアが先?」のような、ベランダが異様に広いマンションに憧れる。家だけど屋外で、でも地面ではなくて、っていう空間があるのがいいな。
    妄想的には「船の舳先にいるような」や「月を吸う」が好きでした。

  • 「”世界初”の間取り小説集!」というコピーに惹かれて、発売から間もなく手に取った。懐かしの青焼きコピー風にデザインされたカバー・表紙がシックで可愛い。

    表紙デザインのような、いささかエキセントリックな間取りの建物を中心に据えた連作短編集。最初の「船の舳先にいるような」を読んで、アラサー女性が思い立ってデザイン住宅を建てる、中島たい子『建てて、いい?』のような努力の話が続くのではないかと思っていたが、続けて読んでいくと、ちょっと違った。語り手自身の住む家のことだけではなく、お隣の家のこと、付き合いのある人と行った家のことなど、視点の幅は広いし、別に家が主役というわけではない(重要な要素ではあるけど)。この間取りの家を選んだ、持ち主や借り主の考えや人生のうち、何日かを切り取った出来事の入れ物、という形の「間取り」なんだろう。それに、どの作品も、間取り自体というよりも、そこから見える景色や、そこから一歩出たときの、今までとは違った新鮮な感覚を描いた作品が多かったように思う。

    シンプルでクリーンな筆致に品よくのせられた色っぽさが非常に好み。川上弘美作品のような濃厚さを求めるとちょっと違うと思うけど、中島京子『妻が椎茸だったころ』がお好きなかたは楽しめると思う。

    各章に登場する部屋の間取りが、読んでいる途中で「どうだったかな?」となっても、ページをいちいち戻らなくてもいい体裁に作られているという、さりげなくも気の利いた造本も素敵。

  • +++
    13の間取り図から広がる、個性的な物語たち。身体の内と外が交錯する、ちょっとシュールで静謐な短編小説集。
    まず家の間取を決め、次にそこで展開される物語を書いたのは大竹さんが世界初だろう、たぶん。13の間取りと13の物語。
    ―藤森照信氏(建築家・建築史家)
    家の間取りは、心身の間取りに似ている。思わぬ通路があり、隠された部屋があり、不意に視界のひらける場所がある。空間を伸縮させるのは、身近な他者と過ごした時間の積み重ねだ。その時間が、ここではむしろ流れを絶つかのように、静かに点描されている。
    ―堀江敏幸氏(作家)
    川を渡る船のような家。海を見るための部屋。扉が二つある玄関。そっくりの双子が住む、左右対称の家。わくわくするような架空の間取りから、リアルで妖しい物語が立ちのぼる。間取りって、なんて色っぽいんでしょう。
    ―岸本佐知子氏(翻訳家)
    +++

    個人的に、子どものころから家の平面図を眺めてはあれこれ想像するのが好きだったので、タイトルが魅力的過ぎて手に取った。それぞれの物語の初めに平面図が置かれているので、物語を読みながら図面を改めて眺めて想像をたくましくし、また物語に戻って先を愉しむ、という読み方をした。文字を追っているだけの時以上に、見知らぬ町や世界にトリップした感じが強くして、興奮する読書タイムになった。密室ミステリなどでもよく間取り図が載せられているが、それとはひと味違うのめり込み方ができる一冊である。

  • 間取りを眺めるのが大好きな自分にドンピシャな本!
    部屋を想像しながら読みました。
    もっと読みたいです。

  • 本棚の陰から向かいの風呂をのぞいたり
    船のへさきのような部屋から 
    水の上に立ったようになったり
    線対称な双子の部屋に彼女がきたり
    物語の最初につけられた
    間取りを何度も見直しながら
    ほうほう なるほど と主人公たちと一緒に
    部屋をうろうろして楽しみました

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、批評など、ジャンルを横断して執筆。短編小説集としては、本書は『図鑑少年』『随時見学可』『間取りと妄想』に続く4冊目。人間の内面や自我は固定されたものではなく、外部世界との関係によって様々に変化しうることを乾いた筆致で描き出し、幅広いファンを生んでいる。
写真関係の著書に『彼らが写真を手にした切実さを』『ニューヨーク1980』『出来事と写真』(畠山直哉との共著)『この写真がすごい』など。他にも『須賀敦子の旅路』『個人美術館の旅』『東京凸凹散歩』など著書多数。
部類の散歩好き。自ら写真も撮る。朗読イベント「カタリココ」を主宰、それを元に書籍レーベル「カタリココ文庫」をスタートし、年三冊のペースで刊行している。

「2022年 『いつもだれかが見ている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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