間取りと妄想

著者 :
  • 亜紀書房
2.99
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本棚登録 : 781
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515076

作品紹介・あらすじ

世界初(!?)の間取り小説集
13の間取り図から広がる、個性的な物語たち。身体の内と外が交錯する、ちょっとシュールで静謐な短編小説集。

まず家の間取を決め、次にそこで展開される物語を書いたのは大竹さんが世界初だろう、たぶん。13の間取りと13の物語。
―藤森照信氏(建築家・建築史家)

家の間取りは、心身の間取りに似ている。思わぬ通路があり、隠された部屋があり、不意に視界のひらける場所がある。空間を伸縮させるのは、身近な他者と過ごした時間の積み重ねだ。その時間が、ここではむしろ流れを絶つかのように、静かに点描されている。
―堀江敏幸氏(作家)

川を渡る船のような家。海を見るための部屋。扉が二つある玄関。そっくりの双子が住む、左右対称の家。わくわくするような架空の間取りから、リアルで妖しい物語が立ちのぼる。間取りって、なんて色っぽいんでしょう。
―岸本佐知子氏(翻訳家)

感想・レビュー・書評

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  • 間取りが13、そしてその間取りで物語が始まるという…なんとも不思議な短編集。

    どれも見たことのない間取りに何度も「えっ!」と驚かされる。
    なんでこんなところにドアが⁇とかどういう意図で⁇となる。
    耐震は大丈夫なのかと思う私には驚きの連続。

    なかなか面白い。
    今は、建て売りが多いと思うので拘って建てた家はなかなかお目にかかれない。
    だが注文住宅でもここまでは…と思うのだが。
    妄想は果てしない…




  • 間取り図を見たり、自分で書いたりして楽しむのが好きだった頃があった。
    だから表紙を見て思わず手に取った本。
    個性的な間取り図のあとに続く13の短編。
    その家に住んだから、その人が出来上がったみたいな感じも味わえたし、怖さや不思議な感じも味わえた。

  • 建売住宅の多い現代ではやや薄めだが、住宅の間取りやインテリアは、住人の生活や嗜好を色濃く反映している。それが設計士に頼んで建てた住宅ならなおさらである。だからかもしれないが、マイホームに客を招待するのは、まるで自分自身の心のうちをさらけ出すようで、抵抗感と心もとなさを感じてしまう。

    本書は、著者が考えた13の間取りをめぐる妄想の物語。ストーリーをドラマチックにするためか、設定された間取りはかなり特殊なものばかりだが、それぞれの住人の秘密を覗き見てしまったあとは、背徳感やエロティシズム、恐怖など、さまざまな感情に揺り動かされる。

    一番印象的だったのは、最初の短編『船の舳先にいるような』。2つの川の合流点にある三角形の土地にセカンドハウスを建てた主人公。尖った敷地に合わせて船の舳先のような形のガラス張りのリビングを作った彼女は、大雨の日、一人で船に乗っているような高揚感を覚える。
    生活の基点とするには突飛すぎる間取りだが、セカンドハウスなら住んでみたい家。

    窓の一切ない隠れ部屋で残酷な殺人ストーリーを夜な夜な書き連ねる『仕込み部屋』も、主人公の心の闇が表れていて印象的だった。閉所恐怖症の自分には耐えられない間取りだけれど。

    なぜこのような間取りになったのだろう、と首をかしげるような面白間取りがテレビ番組で紹介されることがあるが、そのような家には、私たちの及びもつかないような住人たちの不思議な、または恐ろしい秘密が隠されているのかもしれない。

  • 間取りを眺めるのが大好きな自分にドンピシャな本!
    部屋を想像しながら読みました。
    もっと読みたいです。

  • 物語のはじめにユニークな間取り図。
    コンセプトがおもしろくて、装幀もかわいい。

    間取りありきでちょっとずつ頭の中に空間のイメージを膨らませていく過程が楽しくて、物語への没入感が心地よかったです。
    だけど、全体的に言えるけど、ちょうど全体の間取りが頭の中で構築されて、さぁ次はこの部屋で何が起きるの…!!とワクワクし始めたときに、ぱたっとお話は終わってしまうのが少し物足りなくも思いました。この先はあなたが想像してね、ってことか。笑
    だから星は4つにしました。

    好きだったお話。
    ゆるくて刺激的な日々を過ごす2人の「四角い窓はない」。夜更かしした後の明け方にぴったりな気分でした。

    間取り図が大作の「家のなかに町がある」。
    古き良き時代の家族の日常を勝手にいろいろ想像したくなりました。小さい頃走り回ったおばあちゃん家を思い出すなあ...。

    家の数だけ物語がある...まさしく間取りと妄想の時間にどっぷり浸かれます。笑

  • 間取り図はついつい見入ってしまう不思議な魅力があると思う。この本に出てくる間取りは所謂普通の間取りではなく、「なんでその位置に台所?」「庭広すぎでしょ」などと勝手に考えながら読み進めるのが楽しかった。

  • 間取りを見るとワクワクする気持ちは共感。自分でもチラシに入っているマンションの間取りを見て、勝手にそこでの生活を想像したりするから。でもチラシに載ってるのは結構ベタなの多くて、あまり突拍子もない間取りないですね笑

    間取り的には「どちらのドアが先?」のような、ベランダが異様に広いマンションに憧れる。家だけど屋外で、でも地面ではなくて、っていう空間があるのがいいな。
    妄想的には「船の舳先にいるような」や「月を吸う」が好きでした。

  • 前回、間取りの本を読んだが
    今回のこの本はまず間取りを作り、
    その間取りの部屋を元にお話を書くという作り。
    完全に妄想の世界だ。

    私も子供の頃、間取りを見るのが好きで
    その間取りの部屋で生活するなら〜とか、
    この部屋に家具を置くなら〜とか妄想したが
    この本は更に上を行く妄想っぷりで
    こういう楽しみ方もあったのか!と感心した。
    間取り一つで冒険できる素敵な一冊。

  • 59冊目(5-5)

  • 幸か不幸か、読んだ本の内容を一晩経てばほぼ忘れるという特技()を持っています。
    まあでも読んだことのある本を初めて読む心持ちで再度読めるのは幸いだし、途中で「こりゃ前も読んだぞ」と思い出して歯噛みするのは不幸ではあるかもしれませんが、自分の忘れっぽさに呆れながら笑えるのもまた一興かしらん(?)。

    麻耶雄嵩先生の本(蛍)を再読した時、中盤まで読んだことがある本だと気付かなかったのは私です(ひどい)。


    閑話休題。

    そんな私でも、なかなか内容を忘れない種類の本があります。
    それが本作のように、

    見取り図

    が付いている小説です。
    やっぱり文章だけではなくイラストがあると覚える動機付けが強くなるんでしょうか。

    見取り図といえば、不動産の雑誌か賃貸のアプリか推理小説で位しか一般には頻出しないでしょうが(そうか?)、今作は13の短編に13の見取り図がそれぞれ付いているという大盤振る舞い。見取り図付きの推理小説があれば購入してしまう人種からすれば、まさに垂涎ものの一冊です。

    内容に関しては、何とはない生活のワンシーンを切り取ったものばかりなので、劇的な展開や見取り図の中に死体出現をお望みの方にはオススメできません。
    ですが、後者にあたるような私でも、垣間見える市井の人々の呼吸が、見取り図があることでいやに生々しく感じ取れる読感が面白かったです。

    多分、本作の見取り図を数年後に見ても、忘れっぽさに自信のある私でも、何となく内容思い出せるんじゃないかな。斬新な読書体験でした。



    内容まとめ(2020年に入って、我ながら頑張ってまとめてる)(ので、やっぱり間違いがあるかもしれないまとめを以下に)

    ◉船の舳先にいるような…二辺のガラス窓から川を臨む三角形の部屋。土地の持ち主である老人と、その部屋の住人である男の奇妙なダンス。

    ◉隣人…中庭を囲うように立つその建物は、薄暗く長い正面通路が奥に伸びる不愛想な住宅だった。そこに一人で暮らす男を訪問した若い恋人達が、そこで目撃した「同居人達」とは。

    ◉四角い窓はない…その二階建ての建物は、一階の一部がカーポートになっており、開放感あふれるウッドデッキになっていたが、二階は一転、違和感を感じるほどに外界を小さく切り取る極小の窓が付いていた。

    ◉仕込み部屋…叔父の家にささやかな改築を施し、自分が自分になれるスペースを作った私は、夜な夜なそこで人には言えない空想を文字に置き換えていく。

    ◉ふたごの家…何もかもが瓜二つで同じことをしなければ気が済まない双子の少年は、別棟に与えられた部屋の間取りもそっくりにしてほしいと主張した。ところが、いつしか彼等は互いにそれぞれの個性を手に入れていく。二人の質を分けたのは、一体なんだったのか?

    ◉カウンターは偉大….高校教師を辞めた私が次に選んだ仕事は、自宅で数学を教えることだった。

    ◉どちらのドアが先?…親友の同棲相手は、帰ってきて
    ◉浴室と柿の木…敷地の中央に立つ柿の木を挟んで向かい合う二世帯住宅。玄関だけが繋がった必要最低限のコミュニケーションが取れる家には、息子夫婦には秘密の窓があった。

    ◉巻貝…人生初めての失恋のショックをロフトで持て余す青年を、外の世界に駆り立てたものとは。

    ◉家の中に町がある…作家の家に連れられて行った編集者の奇妙な体験。

    ◉カメラのように…漢方医の伯父が亡くなり、遺品の整理をしていた仲子は、独り身を貫いた伯父の細やかな秘密を垣間見る。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、批評など、ジャンルを横断して執筆。短編小説集としては、本書は『図鑑少年』『随時見学可』『間取りと妄想』に続く4冊目。人間の内面や自我は固定されたものではなく、外部世界との関係によって様々に変化しうることを乾いた筆致で描き出し、幅広いファンを生んでいる。
写真関係の著書に『彼らが写真を手にした切実さを』『ニューヨーク1980』『出来事と写真』(畠山直哉との共著)『この写真がすごい』など。他にも『須賀敦子の旅路』『個人美術館の旅』『東京凸凹散歩』など著書多数。
部類の散歩好き。自ら写真も撮る。朗読イベント「カタリココ」を主宰、それを元に書籍レーベル「カタリココ文庫」をスタートし、年三冊のペースで刊行している。

「2022年 『いつもだれかが見ている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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