ちいさな労働者: 写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち

  • あすなろ書房
4.15
  • (6)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 57
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (117ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751517970

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 4.17/46
    内容(「BOOK」データベースより)
    『マニュエルは5歳。カンヅメ工場で働く。アンジェリカは3歳。1日に540個の造花をつくる。パトリックは9歳。炭坑で働き、事故で死んだ。過酷な労働をする子どもたちがいた。写真家ルイス・ハインが撮影した彼らの日常。この写真がアメリカの良心をゆさぶり「子どもの人権」について考えるきっかけを与えた。』

    原書名:『Kids at Work』
    著者:ラッセル・フリードマン (Russell Freedman)
    写真:ルイス・ハイン( Lewis Wickes Hine)
    訳者:千葉 茂樹
    出版社 ‏: ‎あすなろ書房
    単行本 ‏: ‎117ページ
    発売日 ‏: ‎1996/9/1

  • アメリカの数十年〜100年ぐらい前のできごと。写真は劣悪な労働環境を非常によく物語っている。そして残念ながら、今もこのような出来事は無くなっておらず、世界各地で起きている。カメラでの撮影が今ほど簡単では無い時代に、重い器材を抱えて各地で撮影を行い、最終的には貧困にあえぎながら無くなった1人の写真家の歴史。彼が目指した公正・公平な社会。人間らしく生きていける社会が持続可能なものになることを願って止まない。

  • 【読書記録】
    ・人間は、なんて馬鹿なことをしてきたんだろう。
    ・歴史を学ばないから、「子どもの人権」侵害がいつまでも違う形で繰り返される。
    ・ルイス・ハインは偉大。報道撮影の意義も感じた。
    ・自分は、まだまだ無知だ。学びます。

  • 図書館の本。買おう

  • 100年前のアメリカで児童労働の現実を世間に知らせた写真家、ルイス・ハインの生涯。
    たくさんの写真の大部分は労働する子供。後半に少し労働の光の部分もある。
    描かれていることがことごとく現代の南アジアと同じでぎょっとした。

    今まで見たことのあるいくつかの写真は美しいものだったから、ちょっと疑問をもっていた。
    美しい写真は、美しくない現実までも美しいものに見せてしまうんじゃないだろうかと。
    写真を見たらそんなことはなかった。写真は確かに美しい。被写体の美しさも尊厳もきっちり写ってる。
    だけど悲惨さも写ってる。古い白黒の写真でもはっきりとわかる汚れた服、労働者の手、子供なのにしわだらけの顔、子供なのに大人の表情。

    「一九〇〇年代のはじめになると、幼い子どもを働かせることは、子どもを奴隷にしているのと同じことだと気づく人が増えました。(p10)」という文章に、でもそれって白い子供のことだろ?と思ってしまったんだけど、ルイス・ハインはちゃんと移民の子も黒い子も撮ってた。
    工場で働く子の写真は白い子ばかりだけれど、それは(少なくとも南部では)黒人を雇わなかったかららしい。
    現代の南アジアの子や、ちょっと前のヨーロッパの子が「路上で働くよりはまし」「メイドよりはまし」と工場労働を歓迎していたのに似ている。
    じゃあ有色人種の子はどこにいたかといえば農場(季節労働)なんかの過酷な肉体労働で、強い日差しにさらされた顔は子供サイズなのにしわがよっている。

    大恐慌前の普通に子供が働いていた時代、経営者側の妨害や嫌がらせにあって、写真を撮るのはなかなか難しいことだったらしい。
    ハインは身分を偽ったり、深夜早朝に突撃したり、自分の服のボタンの高さを覚えておいてそれを基準に子供の身長を目測したりしたという。

    大人にはそもそも子供を働かせちゃいけないという感覚がない。
    駄目だと思っている人でも、ある程度は仕方ないとか、工場労働は駄目だけど家族で農園ですごすのはいいことじゃない?とか町でモノ売りをしている子たちは商売人の一歩を踏み出したたくましい子だとか、現実をみないままに幻想を押しつけて安心する。
    その感じはちょっとわかる。炭鉱の煤だらけの子や工場で肺を壊す子は明らかにかわいそうだけど、鳥打帽子に胸当てズボンの東京シューシャインボーイにはロマンを感じられる。実態を知らないから。

    最後にちょっとだけ写っているルイス・ハインは繊細そうな顔をしている。
    この本は写真多めの簡易な伝記といった厚くない本。
    ルイス・ハインをちゃんと読むのは初めてだから興味深かったけど、伝記部分も写真自体も、もっと見たいと思った。

    訳者あとがきの「巨大な的にひとりで立ち向かった」という言葉は疑問。
    写真以外の手段で闘った人はたくさんいるし、ハインがとった写真を公にした人たちだって一緒に闘っていたんだから。

  • 世界各地で今なお、学校に通えず働く子供たちは多い。つい100年ほど前のアメリカで、4~5歳児が過酷な状況で労働する姿を写真にとらえた本。日本もかつてはそうだった。

    いろいろな現実を見ておきたい。中学生だもの。

  • 1900年代のアメリカの、ちいさな労働者たち。子供の労働というと、真っ先に思い浮かぶのが産業革命時の英国なのですが、安い賃金で、時には命も落とすような劣悪な環境で大勢の子供が働かされていた過去が米国にもあったなんて。心が痛む写真が多いです。

  • 資本主義のヒエラルキー、その最底辺をささえていたのは“貧しいおとな”だけではなかった。
    人間らしい子ども時代を過ごすことさえ許されなかった子どもたち。
    働かざるをえない子どもたちから搾取することに、なんの疑問も抱かない工場主や農場主。
    そんな社会の不条理を、わが身の安全さえかえりみずに撮り続けたルイス・ハインの投じた一石は、後の子どもたちに「守られた子ども時代」を保障する第一歩に繋がった。
    そのことは、貧困の中に生涯を終えることになったハインにとっては、大きな喜びとなったであろう。


    しかし。
    現代においてもなお、この問題はなくなってはいない。
    すべての子どもたちに「守られた子ども時代」を!!と、
    こころから願うばかりである。

  • まず表紙の5歳児の女の子の表情からびっくりした。外国人労働者の問題を考え中の私にはこの本はかなり衝撃的だった。世界で豊かなアメリカが、100年ちかく前にこれだけ児童が働かされてたのは驚きである。貧困で苦しみ、素晴らしい作品をのこしながらも貧困でなくなっていった彼のとらえる子どもたちは、衝撃的な表情をしている。彼らの人権が勝ち取られた後の表情は子どもらしかったが、働く彼らの無表情で険しい表情からは彼らの子どもらしいところが感じられなかった。正義感をもち写真で不正を伝えるその武器としてカメラを使ったということは素晴らしい。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

アメリカとカナダの「Grief Recovery Instetute」で子どもたちを悲しみから回復させるプログラムを作成、実践し高い評価を得ている。

「2014年 『子どもの悲しみによりそう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ラッセル・フリードマンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×