フェリックスとゼルダ

  • あすなろ書房
3.68
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本棚登録 : 163
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751522240

作品紹介・あらすじ

10歳の少年フェリックスは一人、孤児院を脱けだし旅に出る。3年8ヶ月の間に世界が変わってしまったことも知らずに・・・。つらい運命を想像力ではねとばすフェリックスの長い旅。

感想・レビュー・書評

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  • 第2次大戦中のポーランド。ユダヤ人で本屋を営む両親に育てられたフェリックス少年。両親は少年を助けるため嘘をついて孤児院に預けるが少年は両親会いたさに脱走する。豊かな本で培われた想像力でこの極限の悲惨な現実を乗り切ろうとするが・・・。

  • タイトルと装丁からは想像もできなかったが、本書はナチスドイツが跋扈していた時期のポーランドにおける、一人の少年と一人の少女のお話。全ての章が「昔、ぼくは」という大きなフォントから始まる、少年の一人称で語られていく物語。

    タイトルにもある主人公、フェリックス少年はポーランドの孤児院で父親と母親の帰りを待ち続ける男の子。子どもらしい語り口で、随所に父親と母親への思慕を隠すことなく表現していて、そのいじらしさを想うだけで愛おしく、心が苦しくなる。
    過酷な現実の中で常に展開される、フェリックスの無邪気で無垢であまりにも楽天的な空想の数々には時折ウンザリすることもあるが、ナチス時代の異常な世界において、このぐらいの楽天性と妄想力が無ければ、常人が瘴気を保って生きていくことはできなかったのではないだろうか、という気もする。

    タイトルにあるもう一人の主人公、ゼルダは物語の中盤からフェリックスと行動を共にする。少女ゼルダはフェリックスよりもさらに幼く、しかし大人びた口調でフェリックスや周囲の子どもたち、大人たちに接していく。彼女がフェリックスと一緒に歩いていくようになった理由も語られており、これもやはりナチス政権下では日常茶飯事のように起きていたことだと思われるが、そのむごさ、残酷さには目をそむけたくなる。

    読むこと、知ることが辛いテーマの小説ではありながら、読み始めると止まらずに読み続けたくなる迫力とエネルギーが満ちている。限りなくノンフィクションに近いフィクションとして、かつて存在した残酷と狂気を知ることができる後ろめたいエンターテインメントとして、読む価値は充分。

    実は、この作品はこの一冊では終わらないらしい。続編は既に邦訳されて刊行されている。そちらも手に入れて読んでみたい。フェリックスとゼルダに、どんな酷薄な現実が待ち受けているのか。フェリックスとゼルダは、きっと強く生きてくれていると信じて、続編を読んでみたい。

  • 第二次世界大戦禍のポーランドが舞台。ナチスによるユダヤ人迫害に息子の身を案じた両親は主人公を山奥の孤児院へ預ける。孤児院を抜け出した主人公は両親を探す旅に出る。

  • 172

    2016年では52冊

  • 人は、それがルールだと決められたら、どんな残酷なことでもできるのか。自分がそういう状況に置かれたら、いったいどうすればいいのだろう。こういう事は二度と起こしてはいけない。

  • 読書感想文の課題図書で読みました。
    ポーランドが舞台でユダヤ人がナチスに迫害される物語です。
    映画[life is beautful] と重なり号泣します‼
    絶対に読んで欲しい本です!

  • 主人公フェリックスの想像力の翼が
    存分に羽を広げられない世界。

    ナチスドイツが
    イディッシュ語の本を集めて燃やしている
    わけではないと気がつき

    『僕たちユダヤ人がいじめられるのは、
    本のせいだけじゃなかったらどうする?
    何かほかに理由があるとしたら?』
    と考えるせつなさ。

    フィリックスはもう気がついている!と
    伝わってきて彼を抱きしめたくなります。

    『ぼくは自分が、
    この答えを知っているような気がして、
    ぞっとしたからだ。
    もしかして、ナチスがきらいなのは、
    ぼくらの本だけじゃないのかもしれない。
    きらいなのは、
    ぼくたちユダヤ人かもしれないのだ。』

  • 物語の舞台は、1942年、第二次世界大戦中のポーランド。語り手は主人公のフェリックス、10歳になるユダヤ人。預けられていた修道院を抜け出し、両親を探す旅に出る。

  • ニンジン一本からなぜそんなすごい思い込み(想像)が出来るんだろうと不思議に思いながら読み進めていった。後半から一気にフェリックスの素晴らしい
    本質が見えてくる。

  • 読書感想文の課題図書ということで読みました。
    戦時中のユダヤ人迫害についての小説を読むことが多いのですが、はずれはあまりありません。どの作家も強いメッセージと覚悟を持って書いているからだと思います。このおはなしの特徴としては、主人公のフェリックスが幼くて、当時の社会状況等をまったく知らないままにストーリーが進んでゆくところ。

    日頃軽いYAを読んでいる中学生にとっては重いテーマだと思いますが、時々は本を読むなり映画をみるなりして、史実にふれるべきでは・・と思います。

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