- Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
- / ISBN・EAN: 9784751522769
感想・レビュー・書評
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『よあけ』や『ゆき』でよく知られているユリ・シュルヴィッツのデビュー作。1963年。
原題は「THE MOON IN MY ROOM」
ちいさな家に住む、ちいさな男の子の部屋には、なんでもある。自分だけのおひさま、自分だけのおつきさま、星も庭も山も谷もある。
でも何かが足りない……それはくまさん。
男の子は部屋中を探し回るけれど、くまさんはいない。
「おーい、くまさーん、でてきてよ!」
そう呼びかけるとようやく、ベッドの下から返事がある。
「ぼく、ここに いますよ」
「どうして かくれてたの?」
と男の子がきく。
「だって、ぼくのこと もう わすれちゃって、ちっとも あそんでくれないんだもの」
男の子はくまさんに冠をさずけ、王様にしてやる。
そして、自分の月や星を分けてあげるのだった。
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本作は以後のシュルヴィッツ作品と比べても、絵の線がとても繊細。そして余白をとても活かし、構図も面白い。ちょっと、ジャン・コクトーの線画を思い出した。
本書はひとまず、「他者」を発見するお話だと言っていいと思う。そしてひとりだけのものだった世界を他者と共有するにいたる。
作者の生い立ちを考え合わせると、他者の意味は重い。ワルシャワに生まれ、ナチスの迫害を逃れてイスラエル、パリに移り、アメリカへ移住。
本書はまだつたない英語で書かれた。
私は「どうして かくれてたの?」という男の子の言葉をはじめて読んだとき、ドキリとした。
隠れるユダヤ人、発見するナチス、という構図を思い出したからだ。
また、何度目かに読んだときには、イスラエルという国家の成り立ちにも思いをはせた。ヨーロッパでは他者であったユダヤ人が、自分たちだけの国家を建設したとき、とたんに他者が見えなくなった。この他者については言うまでもないだろう。
自分に夢中であるあまり、他者が見えなくなってしまう。かつて他者であった自分が、こちらでは王様になってしまう。
ところで、原題のTHE MOON IN MY ROOMの月はそのことのメタファーなのではないだろうか。
(また、くまさんがベッドの下から出てくるというのも、月の出を暗示している)
新月と満月は時とともに入れ替わる。つまり、自己と他者は容易に入れ替わる。しかしそれは、同じモノの見え方の違いにすぎない。
時とともに移り変わる月の形が、より繊細な共存のあり方を象徴している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵が素敵だ。ぼくだけのおつきさま、星、おひさま。なるほど。そうだね。私の家にも素敵な窓があって月が見えるのに、そんな風に考えたことはなかった。贅沢でもったいないな。
毎日一緒に寝て、お出かけにも連れて行きたいと娘が泣いた、そんなくまさんが、我が家にもいる。シロクマなのに汚れて黒い、毎日一緒にいたくまさん。
何処にいるんだろう。家のどこかにいるわ。
この本を読んで、母はふと思い出したよ。 -
わたしもくまのともだちがいるよ。しろくまちゃん
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ユリ・シュルビィッツのデビュー作。絵がマンガ的でこんなふうに描いていたのかな。
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シュルヴィッツも、初期はこういうタッチなんだ。
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ぼくとくまさんは、いろんなものがぜーんぶながかったからなんだかおもしろかった
(4さい) -
2015年12月10日
<THE MOON IN MY ROOM>
装丁/桂川潤 -
じぶんだけのおひさま、じぶんだけのおつきさま、じぶんだけのおほしさま、おとこのこのへやにあるものはみんな彼のもの。あれれ、じぶんだけのくまさんがいなくなっちゃった。どうしよう。(はま)