ぼくとくまさん

  • あすなろ書房
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本棚登録 : 119
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751522769

感想・レビュー・書評

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  • 『よあけ』や『ゆき』でよく知られているユリ・シュルヴィッツのデビュー作。1963年。
    原題は「THE MOON IN MY ROOM」

    ちいさな家に住む、ちいさな男の子の部屋には、なんでもある。自分だけのおひさま、自分だけのおつきさま、星も庭も山も谷もある。

    でも何かが足りない……それはくまさん。
    男の子は部屋中を探し回るけれど、くまさんはいない。

    「おーい、くまさーん、でてきてよ!」
    そう呼びかけるとようやく、ベッドの下から返事がある。
    「ぼく、ここに いますよ」

    「どうして かくれてたの?」
    と男の子がきく。
    「だって、ぼくのこと もう わすれちゃって、ちっとも あそんでくれないんだもの」

    男の子はくまさんに冠をさずけ、王様にしてやる。
    そして、自分の月や星を分けてあげるのだった。

    ーーーーーーーーー

    本作は以後のシュルヴィッツ作品と比べても、絵の線がとても繊細。そして余白をとても活かし、構図も面白い。ちょっと、ジャン・コクトーの線画を思い出した。

    本書はひとまず、「他者」を発見するお話だと言っていいと思う。そしてひとりだけのものだった世界を他者と共有するにいたる。

    作者の生い立ちを考え合わせると、他者の意味は重い。ワルシャワに生まれ、ナチスの迫害を逃れてイスラエル、パリに移り、アメリカへ移住。
    本書はまだつたない英語で書かれた。

    私は「どうして かくれてたの?」という男の子の言葉をはじめて読んだとき、ドキリとした。
    隠れるユダヤ人、発見するナチス、という構図を思い出したからだ。

    また、何度目かに読んだときには、イスラエルという国家の成り立ちにも思いをはせた。ヨーロッパでは他者であったユダヤ人が、自分たちだけの国家を建設したとき、とたんに他者が見えなくなった。この他者については言うまでもないだろう。

    自分に夢中であるあまり、他者が見えなくなってしまう。かつて他者であった自分が、こちらでは王様になってしまう。

    ところで、原題のTHE MOON IN MY ROOMの月はそのことのメタファーなのではないだろうか。
    (また、くまさんがベッドの下から出てくるというのも、月の出を暗示している)

    新月と満月は時とともに入れ替わる。つまり、自己と他者は容易に入れ替わる。しかしそれは、同じモノの見え方の違いにすぎない。
    時とともに移り変わる月の形が、より繊細な共存のあり方を象徴している。

  • 子どものための絵本を創作し続けてきた、ユル・シュルヴィッツのデビュー作絵本。〝男の子の部屋には、なんでもあります。山や谷、自分だけのお星さま、それに月だって! でも、いちばん大切なのは…「おーい、クマさ―ん、出てきてよ!」「ぼく、ここにいますよ」ベッドの下から声が聞こえました。 「みつかってよかった!」 男の子は、クマさんをぎゅっと、抱きしめました・・・〟

  • 4歳と3歳の娘達に読みました。

    あれ、大切なくまさんがいない。
    「いない、いない」と次女も一緒になって絵本の中を探していました。
    くまさん、出てきてくれたけど寂しそう。
    男の子がしばらく遊んであげていなかったからかな?

    物を大切にしようと改めて思いました。
    そして、部屋の掃除もしなきゃ (^-^;

  • 絵が素敵だ。ぼくだけのおつきさま、星、おひさま。なるほど。そうだね。私の家にも素敵な窓があって月が見えるのに、そんな風に考えたことはなかった。贅沢でもったいないな。

    毎日一緒に寝て、お出かけにも連れて行きたいと娘が泣いた、そんなくまさんが、我が家にもいる。シロクマなのに汚れて黒い、毎日一緒にいたくまさん。
    何処にいるんだろう。家のどこかにいるわ。
    この本を読んで、母はふと思い出したよ。

  • わたしもくまのともだちがいるよ。しろくまちゃん

  • ユリ・シュルビィッツのデビュー作。絵がマンガ的でこんなふうに描いていたのかな。

  • シュルヴィッツも、初期はこういうタッチなんだ。

  • ぼくとくまさんは、いろんなものがぜーんぶながかったからなんだかおもしろかった
    (4さい)

  • 2015年12月10日

    <THE MOON IN MY ROOM>
      
    装丁/桂川潤

  • じぶんだけのおひさま、じぶんだけのおつきさま、じぶんだけのおほしさま、おとこのこのへやにあるものはみんな彼のもの。あれれ、じぶんだけのくまさんがいなくなっちゃった。どうしよう。(はま)

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