3うその楽しみ (中学生までに読んでおきたい哲学)

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制作 : 松田 哲夫  南 伸坊/案内人 
  • あすなろ書房 (2012年10月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751527238

3うその楽しみ (中学生までに読んでおきたい哲学)の感想・レビュー・書評

  • 全ての生き物にはそれぞれ、
    生きてゆく為の
    特殊な能力が与えられているものだが、
    「うその楽しみ」を読んでいると、
    人間に与えられた多くの能力の中に
    あぁ、<これ>もはいっているのか。
    …と、思わざるを得なかった。

    だけど、
    嘘の背後に潜んでいる<真実>がなんぼのもだと言うんじゃいっ!!
    文豪達の豪傑な筆致によって描かれた<うそ達>の千変万化には救われたし、楽しませても貰った。
    世の中、四角い箱に納めてしまうのはつまらない…。

  • とっても勉強になるなあ

  • 【収録作品】
    星 新一   ……「約束」
    幸田文    ……「うそとパン」
    柳田国男   ……「ウソと子供」
    井伏鱒二   ……「うそ話」
    井上ひさし  ……「昭和二十に年の井伏さん」
    種村季弘   ……「贋エチオピア皇帝の訪れ」
    河合隼雄   ……「うそからまことが出てくる 他一編」
    串田孫一   ……「嘘について」
    加藤周一   ……「嘘について」
    米原万里   ……「北風と太陽」
    池田晶子   ……「正直者は馬鹿をみるか」
    遠藤周作   ……「嘘」
    太宰治     ……「嘘」
    伊藤 整   ……「正直な夫」
    佐野洋子   ……「悪女と善人」
    内田百閒   ……「正直の徳に就いて」
    吉田健一   ……「とぼけることの効用」
    桂三木助   ……「饅頭こわい」
    小松左京   ……「完全犯罪」

    面白かった。考えさせられた。今まで自分が漠然と思っていたことを
    言語化してくれた感じだ。
    これは、中学生までに、は難しいんじゃなかろうか。

  • ただ今、ある都知事の借用書に対する「言い訳」が、巷の話題になっているらしい。詳しいことは知らないけれど、小学生が書く様な借用書を振り回して「私の言うことはホントだ」と言っているらしい。

    テレビは「この書式は法律的には云々」「なお残る三つの謎」とかはしゃいでいる。楽しんでいる、と言っていい。その事態を見ていて、最近読んだ柳田国男の「ウソと子供」という文章を思い出した。それを読むと、つくづく日本人はウソを楽しむ民族だったらしい。

    鷽(うそ)という鳥がある。鶯(ウグイス)ではない。「醒睡笑」という本に「鷽という鳥は木のそら(てっぺん)にて琴を弾く(足を踏み変える)ゆえに、うそをそらごとというなり」と書いているらしい。

    「町の女たちは何かというと「ウソよ」とか「ウソおっしゃいよ」などと、平気でいう人がたくさんあるのである。これをうっかり英語などに直訳して、you lieだのlierだのと言おうものなら、それこそ大変な騒ぎになるだろう」

    ウソは娯楽の一種だった。または、人生の中ではどうしても敵を欺く必要があった時のための「実習」でもあった。

    やがては、ウソの競技も出てくる。専門家も出てくる。柳田国男は秀吉の寵を受けた曽呂利新左衛門を例に上げている。私は「そうか、落語家はこうやって出て来たのだ」と思った。

    柳田は世の母親に「子供がウッカリうそをついた場合」のことをこうアドバイスしている。「すぐ叱ることは有害である。そうかと言って信じた顔をするのもよくない。また興ざめた心持を示すのもどうかと思う。やはり自分の感情のままに、存分に笑うのがよいかと考えられる。そうすると彼等は次第に人を楽しませる愉快を感じて、末ずえ明るい元気のよい、また想像力の豊かな文章家になるかもしれぬからである。」

    多分某都知事は親からその様に笑われたことはなかったのだろう。もちろん、柳田は「ウソ」と「欺く」をきちんと区別している。「自分勝手なウソをつくのが「欺」くであって、アザムクはアザ笑うなどと同じく相手を愚と認めること、すなわち仇敵を意味するアダと、もとは一つの語だったらしいのである。こういうことをすれば、すなわち悪人で、これと曽呂利との境目はほんの紙一重であった。」
    某都知事は「相手を愚と認めて」いるのだろう。日本人は優しいから、彼を笑ったりしていつか「いい大人」になることを期待しているけど、決して悪人から立ち直ることはない。都知事の間は。

    では、そもそも「国」と「個人」とのウソの関係はどうなっているのだろうか。

    「嘘について」加藤周一

    「すべての政府は嘘つきである」と書いたのは、「冷戦」時代の米国で活躍していた記者、I・F・ストーンである。政府の操作する情報の行間に真実を読み取るほかないと感じていたのが、彼だけではなかったからこそ、彼が1人で書き、編集し、印刷し、郵送までしていた個人週刊紙「ストーンズ・ウィークリー」には報道関係者の読者が少なくなかったのである。

    と、書いたのは加藤周一(「夕陽妄語4」平成13)である。加藤はここで、嘘は人間関係をなめらかにするためには必要だとは認めたうえで、大きな損害を与える嘘もあることを指摘している。

    日本国民は太平洋戦争の末期に「大本営発表」をほとんど信用しなくなっていた。(略)繰り返される嘘は、狼少年と村人、政府と国民の間の信頼関係を壊す。信頼関係の破壊は嘘をつく側にも跳ね返って、嘘の効用そのものを失わせるに至るだろう。しかもそれだけではない。

    民主主義国では国民が主人公であり、国民の支払う税金で雇われ、国民から委託された業務を行う政府は、使用人の集団である。使用人が主人を騙すのは、原則として不正であり、民主主義の破壊である。使用人の嘘が正当化されるのは、主人の利益を守るためにどうしても嘘が必要な例外的な場面に限ら... 続きを読む

  • 中学生をとうに超えた大人が読みました。
    面白かった。

  • 元「ちくま文学の森」&「ちくま哲学の森」の松田哲夫さんが
    手がけた青少年向きシリーズ。
    5年生以上の漢字はふりがなつきで脚注も多めで懇切丁寧。
    「中学生までに」とはあるけれど、
    オトナでも十分楽しめるアンソロジー。

    編集の妙、作品の並べ方に感銘を受けた。
    一つ一つの話もおもしろいものばかりでどんどんよめた。
    柳田国男あたりは小中学生にとっては骨の折れる文体
    かもしれないけれど、内容としてはおもしろいので
    いったん入りこめたらしめたもの。

    ちょっと前の映画「クヒオ大佐」をみたばかりだったし
    「iPS研究捏造」事件がマスコミを騒がせたのも耳目に新しく
    世相をバッサリ切るようなエッセイもあり、
    「うそ」についてしみじみ考えてしまった。

    巻末の編者による解説は全作品について一言ずつ紹介した
    親切なもので、教育的にはゆきとどいているけれど、
    蛇足の感もなきにしもあらず。

    ともあれ、おためしで一冊買ってみたけれど、
    シリーズ揃えたくなった。

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3うその楽しみ (中学生までに読んでおきたい哲学)の作品紹介

米原万里「北風と太陽」、遠藤周作「嘘」、小松左京「完全犯罪」など、「うそ」をテーマにしたエッセイ・掌編小説・小評論・落語を19編収める、考える楽しみに満ちた1冊。

3うその楽しみ (中学生までに読んでおきたい哲学)はこんな本です

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