- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784753102570
作品紹介・あらすじ
現代ハリウッドの世界戦略を、その作品群のみからではなく、資本主義・国家・ナショナリズムの変貌を通して捉えなおす画期的な論考集。これまでの作家論一辺倒に傾いていた映画批評に新しい視点を導入し、活性化を図る。
感想・レビュー・書評
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ハリウッド映画批評。『マトリックス』や『プライベート・ライアン』など、誰もが知っている映画を丹念に読み込む。「帝国」アメリカの反影としてのハリウッド、あるいはハリウッドが増産するイメージの乱反射の中でぼんやりと浮かび上がる「帝国」アメリカ。ハリウッドと「帝国」の共犯関係の痕跡を分析。
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予想を遥かに超えて面白かった。なぜ、日本の映像を教える場所にこういう明快な話ができる人がいないんだろうか。すぐに個人的な愛情で映像を語る人か、1人で仕事をするアニメーターを異端のように切り捨てて映画はチームプレーだとしか考えていない○○組の人ばかり。映画というのは前後のつながりとその総体としての一連の映像によって生み出されるもので、それを読めない人ばかりなのだ。今の日本の映画もテレビも映像の仕組みを習ったことのない、組織論しかない人によって作られている。だから、こういう文章は出て来なかった。著者はUCLAで映像を勉強している。それだけに明快なのだ。
著者の進める話は映画の範囲ではない。今の映画産業全体と世界の関わり合いについてまで話は広がる。映画を見てもいないのに、ある映画を話題にして、それは見逃せないと普通の人が普通に言うのが今の世界だ。すでに批評できる空間に私たちはいない。今、私たちは映画という巨費を投じて作られた商品とどう付き合わされているか、というのを改めて知る本だ。
映像制作に関わっているのなら読むべきだろう。ハリウッドにすべてが飲み込まれる映画のシステムを知りたければ読むべきだろう。9.11に違和感を感じたとしたら読むべきだろう。今書かれた、今読むべき、これまでと今についてのいい本だと思う。
ハリウッドは地球すらコントロールできそうだ。