対象関係論を学ぶ―クライン派精神分析入門

著者 :
  • 岩崎学術出版社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753396054

作品紹介・あらすじ

本書は臨床との戦いのなかで得た知識とその肉付けがあるだけに、臨床的身近さを感じさせる。クライン学派の理論と実践を学ぶには、フロイトはいうに及ばず、自我心理学、さらには自己心理学とは臨床素材の考え方にも扱い方にも異質なものがあるだけに、一度は古い着物を脱ぎ去って、装いを新たにしないとクライン理論を本当に理解することは難しいということも教えてくれる。

感想・レビュー・書評

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  • 心理臨床の名著シリーズ。なかなかに理解の困難な「対象関係論」を、わかりやすく知りたいなら松木先生の本を読め!と聞いてはいたのですが、初めて読みました…(恥)

    結論は、素晴らしい!!

    臨床家に向けて書かれているのですが(読者が精神病圏のクライエントの訴えを毎日のように?聞いていることを前提としている語り)、学部生でも読むと理解が深まると思う。大学院受験のためにもオススメ。

    ただし、これを読む前にフロイトの精神分析の基礎的概念は理解しておいた方が良いかも…(冒頭にそこから説明はされていますが。しかもわかりやすく。)対象関係論の入門書ではあるけれど、精神分析の入門書ではない。

    クライン→ビオンまでのつながりや発展を、ときにウィニコットとの比較も交えながら、シンプルに、しかし本質的に、学べるのは本当にありがたい。

    フロイトの後継者たちの仕事を、わかりやすく、難しすぎず・詳細すぎずに学べる本ってあんまりない気がして。


    しかし、この本の白眉は、わかりやすさとか必要十分な網羅性とかには止まらず、なんといっても、暖かな人間味に満ちた人生観にあるだろう…


    「一つにまとまった全体自己そして全体対象とはけっして苦悩のない万能的な自己や対象ではないことは、もはや充分に理解されたことと思います。それは、抑うつ的な心の痛みを避けることなく味わい続ける現実的な自己-対象関係であり、そこにおいて外界の対人関係と内的対象関係が歪みの少ない形でつながっていることができるのです。」 (82ページ)


    「『深い思いやり』は、私たちの日々の生活での抑うつ的な心の痛み、あるいは羨望であったりもする被害感情でさえも自分自身の心の中の感情として認め、傷ついた対象との結びつきの中で味わい、そしてもちこたえ続けることから、ゆっくり育ってくることのように私には思われます。」(115ページ)


    しかも!対象関係論の立場から、転移の治療機序を説明し(9章)、精神分析が言葉によって行われることに限界はないのか?という問いにまで答えようとする(11章)。

     
    ちなみに、後者についていうと、松木先生はあくまでも言語化の重要性を強調する立場(p.105)で、非言語でのやり取りをより大切だと思う私とはまた異なるんだけども。(もちろん、松木先生は非言語を否定しないと明記しているし、私も言語化を否定しているわけでは全くない。単に比重の話。)


    この本を足がかりに、もっと対象関係論の本を読んで見たいなぁと思ったし、臨床においてこの視点を忘れずに事象を見ることは助けになるなぁと思った次第。

  •  対象関係論に関する基本的な概念が順序良く説明されており、クライン派(特にビオン)の入門書としてはかなりわかりやすくまとめられている。ほかの入門書は難解なものが多いので、私のような初心者には大変有難い内容といえる。
     クラインやビオンの理論が特に重点的に紹介されており、それによる一貫性が読みやすさの要因としてあるのかもしれない。しかし、「わかりやすい」ということは「わからない」ことを見落とさせてしまい、「わかったつもり」になってしまいがちである。なので、またしばらく間を空けてから読み返そうと思う。
     

  • 非常に分かりやすかった。大学院生の頃に読んでいたら良かった。とは思うのだが,今だからよく分かったと思えるのかもしれない。
    エディプス・コンプレックスのあたりは,やはりムズイというか,現実的な感じがしなかったものの,それぞれの概念の説明に事例が挙げられていたので理解しやすかった。

    ただ,症状の原因を説明・理解することができても,どのようにアプローチしていくのかは,これを読んでも分からない。
    アプローチにも特化した類書があれば嬉しいと思う。

  • 対象関係論の初歩はここで学ぶ。何回でも読み直したい。

  • 知りたかった躁的防衛だけはなく、防衛機制の解説が詳しくわかりやすい。

    ただ躁的防衛と抑うつとの関係のあたりはサラッと読めてしまいなんかもの足りない。そもそも全体的にカンタンすぎるので数時間で読み終えてしまえる。
    もうすこし読み進められなくなって悩ましいところがあってもいいと思うのだけど、何度も繰り返し読める本(というか教科書)はこういうものか。

    あと患者の心の動きよりも、それを受けての心の実感とか動きの描写が生々しくて読んでてなんというか、そうした生々しさが、読んでて本をパタッと閉じてさせてしまうのでした。(でまた開く)

  • 146

  • とてもわかりやすかった。
    理解の枠組みの一つに。

  • わかりやすい言葉で書かれており、
    対象関係論を学び始めるのには丁度よい本であったように思う。

    対象関係1つとっても心の体勢(PS/D)や部分対象と全体対象の変遷から、防衛機制から見たりと、色んな角度から深められ、かつ、それぞれを関連づけて理解しやすいように書かれているので、読みやすかった。

    今まで認知行動的な見方に触れる機会が多かった私からみると対象関係論は、精神病圏など病理が深い人の理解にとくに役立つ視点をくれるように感じました。

  • 平易な言葉で表現された、クラインの深く広い理論について。臨床像と結びついて、非常にためになる。

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著者プロフィール

1950年佐賀市に生まれる。1975年熊本大学医学部卒業。1999年精神分析個人開業。京都大学大学院教育学研究科教授を経て,現在京都大学名誉教授。日本精神分析協会正会員,日本精神分析学会運営委員。著書 「対象関係論を学ぶ―クライン派精神分析入門―」(岩崎学術出版社),「分析空間での出会い」(人文書院),「分析臨床での発見」(岩崎学術出版社),「私説対象関係論的心理療法入門」(金剛出版),「精神分析体験:ビオンの宇宙―対象関係論を学ぶ立志編―」(岩崎学術出版社),「分析実践での進展」(創元社),「不在論」(創元社),「摂食障害との出会いと挑戦」(共著,岩崎学術出版社)その他。訳書 ケースメント「患者から学ぶ」,「あやまちから学ぶ」,「人生から学ぶ」(訳・監訳,岩崎学術出版社),ビオン「ビオンの臨床セミナー」(共訳,金剛出版),「再考:精神病の精神分析論」(監訳,金剛出版)その他。

「2021年 『体系講義 対象関係論 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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