- Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757102675
作品紹介・あらすじ
心は「脳の中」にあるものではない。脳と身体と世界の相互作用から「創発」するものである。ロボット、赤ちゃん、人工生命など、豊富な事例を交えながら提起する、「心」への斬新なアプローチ。身体性認知科学の古典的名著、待望の翻訳。
感想・レビュー・書評
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・心の発生の物語。
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人間の認知、思考のメカニズムを、脳だけでなく身体や外部環境、公共言語といった社会システムとの相互作用の中で理解しようという発想に立った本。
原著は約20年ほど前に書かれた本であり、最近のAIに関する研究内容を反映しているわけではない。しかし、そのような技術的な動向の背景に、そもそも認知や思考というものをどのように捉えるかということに対する深い洞察が必要であり、そのような観点においてはこの本は現在においても決して古びてはいないということを強く感じた。
人間の思考は脳内のニューラルネットワークにおける電気信号の処理だけで行われているわけではなく、身体という物理的な環境から得られる力学的なフィードバックを使いながら、動作をダイナミックに制御している。そうであるからこそ、外界の環境に関する情報を脳が一元的に処理して最適な動作を筋肉に指示するという方法よりも圧倒的に素早い反応が可能になるし、老化や一時的な怪我という身体機構の変化に対しても柔軟に対応していくことができる。
また、脳は途中のアウトプットを紙に書いたり、概念を言語化したりすることで、自身の情報処理能力を拡張し、そうでないときよりも圧倒的に複雑な思考を行うことができている。さらには、途中のアウトプットを外部に出力することで、そこから異なる成果(創造)を生むこともできるようになる。
これらの発想で脳の情報処理を分析していくことで、人間の認知や思考について、より広い視野から理解をすることができるようになるだろうと筆者は考えている。
また、著者は本書の中で脳科学や情報処理に関する幅広い見解をバランスよく取り上げており、決して一つの見方で脳のあり方を把握しようとしない。このことが非常に大切であるとも感じた。
脳は融通無碍で、使えるものを(中途半端な形であっても)活用して、最も楽に、つまり計算量の少ない形で求める結果を得るという能力に長けている。生物全般の進化過程にみられることではあるが、このような効率的な形で変化、発展していく脳を理解するためには、筆者のような幅の広い思考が求められるのであろう。 -
本書は、『身体化された心』(ヴァレラ、2001)から多大な影響を受けているため、併読をお勧めする。
本書では、ヴァレラが反対した「認知の本質は表象である」という考え方に好意的である。
情報処理に基づく分析手法(ただし、中央集権的ではなく、再帰的ネットワークという)を多用している。
このような科学的アプローチを媒介にして、身体・行為・世界から心を説明する試みを可能にしている。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784757102675