やりなおし教養講座 NTT出版ライブラリーレゾナント005

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  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757140851

作品紹介・あらすじ

「理性」と「教養」に邪魔されなければ人間は野放図になるばかり!真っ当な大人になるためのリベラルアーツ入門。

感想・レビュー・書評

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  • 教養教育の整理や歴史は参考になった。

  • "モラル、規矩、品格、知識人、の心得を古代~大正時代~そして現代まで振り返る。私が共感したところは、現在の問題点は2つというところ。一つは、知的刺激を求めなくなった。最大の原因は受動的に楽しめる刺激が増えたため。もう一つは、他の世代とのつながりがなくなったことで、世代を超えて伝えるべきものが伝わりにくくなったということ。
    これから、我々は若者の行動を嘆くだけでなく、何ができるかを問われている。"

  • 著者の考える教養について、欧米の教養教育の歴史からひもとき、日本の戦前と戦後の教養教育について語られ、最後は自身の読者遍歴から作られた考えで、まとめられる。何度も「規矩」という言葉が出てくるが、これは自分独りに課したものでありながら、自分の生きる社会との関係の中で、自らと社会との協働関係の中で、見出し、自分に課していくもので、それは世代を継いで受け渡され、変化し、展開していくものであると述べているが、この基礎作りをするのが、教養なのだろう。

  • 社会への苦言になってしまっている。

    教養とは「規矩」(自分と社会との協働関係の中で、自分に課すもの=常識、マナー)
    ギリシア、ローマの「古典」はイスラム世界から
    広い知識や広い体験だけでなく、様々なもので自分をつくりあげる作業。
    いつも開かれており、常につくりあげられている。

  • 伝記や自伝と言われるものは本当におもしろい。いろいろな著書や講演会での話などで、今までに著者の考えにはいろいろと触れてきたが、そのような考え方がどこから生まれてきたのかということが、本書を通して垣間見えてきた。教養とは一体どういうことなのかというのが本書のテーマですが、それはこの著者が考える「教養」ということであり、村上先生自身が育ってきた時代・環境というのが大きく影響されている。過去にほとんど先生自身の生い立ちなどを知る機会がなかったので、本当に楽しく読ませてもらうことができた。私は大学生のころ、集中講義で村上先生の「科学思想史」という授業を受けたことがある。これはもう名人としか言い様のない授業だった。どこからどこまでが本題で、どこからが余談なのか分からない。ちょうど落語の名人が、まくらから本題に入るとき、羽織を脱いだりしなければいつの間に本題に入ったのか分からないのと似ている。私にとってこの講義のノートは今も宝物である。たぶん板書された内容よりも多くのことをメモしていたことだろう。ノートには細かい字でびっしりと書き込みがあった。本書の最後に「教養のためのしてはならない百箇条」というものを書かれている。(こういうことを書くこと自体が教養のないこと、と断り書きをした上で。)その中に、流行語・略語を使わない。「ハリー・ポッター」を「ハリポタ」などとは言わない、というのがある。また、頸に青筋が立つような話し方をしない、ともある。歩きながらものを食べない、ベスト・セラーは読まない・・・などなど。先生らしいなあと思えることが多い。自分もそうありたいと思うことが多い。でもちょっと息苦しいかなあと思えることもある。もう少し気楽に行きたいなあと思えるところもある。自分は皆とは違う、という気持ちを忘れない、結局は自分も皆と同じだ、という判断を忘れない。その通りだと思う。

  • 新しい文庫版を2年前に読み、今回この旧版を読んだ。先日村上先生の科学史に関する講義を聴講した感動がよみがえった。本書における教養主義、自由七科、聖書の説明はまるで教室で講釈を聴いているように、私の心に染みいってきた。日本語から適宜、ドイツ語、ラテン語、フランス語、アラビア語の語幹を検討する方法は、講義でも本書でも変わらない。前回読んだ時は、私の理解が未熟で参考文献にあげられないのではと考えていたが、今ではそのようなことは全くない。自らの論文と諸論の位置を説明するとことから論が始まると今は理解している。

    http://booklog.jp/users/ikutahr/archives/1/4101375518

  • 教養とは自分をかたちづくるもの(福沢諭吉「学問のすすめ」もいうように)
    過剰な平等倫理が作り上げる全体主義的な結末。
    絶対的な部分に対する疑いを持つ事の重要性。
    現実に差別はある。そしてそれをなくならせることがよいことなのかどうかもよくわからない。誰かに対して感じる優越感も劣等感も、薄める事はできても完全に排除する事はできない。なぜならば、人間は一人一人違うから。
    「がんばったこと」をみとめることが個人および全体の「向上」に繋がる。

    ただ、個人的には排除や虐殺など「最悪の結末」くらいは避けようとする平等倫理も必要。非常に難しいバランス。
    出る杭はうたれるというような経験をしても、その悔しさをバネにもっとがんばって環境を変更することが可能な社会はそこにはある。だからこそ、「認められる」ことを絶対的なモチベーションとして生きていく事は100%平等倫理よりよいとは言えない。みんなちがってみんないい、のオンリーワン社会でもがんばる人はがんばる。他の誰かからがんばらないように見える人もどこかの点では(自分の基準で)がんばっているかもしれない。
    村上さんは多元主義を宣言しておきながらも教養主義、スノッブ肯定論には少し偏っている。それが「しっかり勉強しなさい」という若者に対する助言的な役割であるとしても。
    オンリーワン的で、平等倫理が道徳観に根付いた社会常識は当分かわりそうにない。特に日本では。なぜならばそれは最近出てきた話ではなく、農耕時代から続く村社会的な要素も多分に含まれていると思うから。
    それでも今の若い世代の一部は「優秀さ」を隠しながらも知的好奇心や自己肯定をモチベーションにそれなりにがんばっている気がする。
    村上さんが上の世代の「絶対主義」的な教育に疑問を持っていたように、今の世代も上の世代である村上さんの考え方におおかた賛成しつつも、そこに改良の種を見つける事は自然な流れとも言える。
    思ったより教育はよくなっていっている、と思う!そして私たちの世代も、その子供世代に「もっとよくできるよ」と批判され、一応の反論はしながらも未来に明るさを感じたりするんだろう。

  • 「自分の中にきちんとした規矩を持っていて、そこからはみ出したことはしないぞという生き方のできる人」こそ教養のある人間。

    「教養」は知識ではなく、ひとつの「節度」だと著者はいう。教養主義の歴史を辿りながら「知育」の陥穽を突く好著。

    教養を後生大事な知識と見なすのでもなく、ゆとりにみられる放逸でもない。今を生きる一人の人間としてオルテガ的まなざしで教養の歴史と現状を考察し、「生きるしるべ」としての教養についての議論です。

    学生さんだけでなく、教員の方々にもお勧めです。

  •  大学の図書館に教授陣の推薦本として置いてあり、村上陽一郎の著作ということもあって借りてみました。

     著者は、個人が「規矩」を築くために教養が不可欠だと言います。その上で、科学史的な視点からの教養観や大正時代の知的エリートの生活など、歴史的、国際的な観点から現代の教育のあり方、個人のあり方を検討します。この部分は、さすがというか、著者の実に幅広い知識を垣間見ることが出来ます。主張にも大いに賛同せざるを得ません。


     が、最後の2、3章はいわゆる「今時の若いもんは〜』というような話になってしまい、読むのが少々苦痛でした。特に「背広を着てネクタイを締めた男性が電車の中で漫画雑誌を読むなんて恥ずかしいと思わないのか。」「その点女性は読んでいるのを見たことがない。恐らく彼女らはまだ恥ずかしいと感じている部分を残しているんだろう。」といったような、時代錯誤的な発言や誤った認識がしばしば表れるのにはうんざりしてしまいます。漫画雑誌を触ったこともない人に、車内で読むことを「恥ずかしい」と決めつけられても・・・。(著者が「あの紙質のが敗戦直後の教科書を思い起こさせる」と言っている部分で多少救われますが。)

     このように色々と奇妙に感じる記述は各所にありますが、著者がこんな話をするのは、単に著者が読者に求めている「規矩(きく)」の一例を示すためであろうと思いますから、軽く読み飛ばしても良かったのかもしれないと思います。

    総じて、後半の人生訓めいた部分以外は楽しめる本でした。しかしながら、最後の印象がちょっと悪すぎたので☆3つ

  • じじいの回顧録

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。科学史家、科学哲学者。東京大学教養学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学教養学部教授、同先端科学技術研究センター長、国際基督教大学教養学部教授、東洋英和女学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授。『ペスト大流行』『コロナ後の世界を生きる』(ともに岩波新書)、『科学の現代を問う』(講談社現代新書)、『あらためて教養とは』(新潮文庫)、『人間にとって科学とは何か』(新潮選書)、『死ねない時代の哲学』(文春新書)など著書多数。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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