開発主義の暴走と保身 金融システムと平成経済 (日本の〈現代〉07)
- NTT出版 (2006年5月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757140981
作品紹介・あらすじ
不倒神話の金融システムに何が起こったのか。いま、解明される「失われた10年」の真実。
感想・レビュー・書評
-
211217池尾和人 開発主義の暴走と保身2006
1.「日本経済の中期的課題二つ」
①社会保障制度を含む財政システムの再構築
バブル崩壊による民間の過剰債務を政府部門に付け替え、負担は更に加重
②次世代の人的資本の質を維持・向上させる
2.政策レジームの再検討「開発主義」(村上泰亮)
産業化の促進を目的として、政府が市場に介入する政策レジーム
①費用低減傾向のみられる産業について、その成長可能性を維持し
高めることを意図した産業政策
②産業化の過程で生じかねない社会的緊張を緩和するための分配政策
3.80年代後半「信用膨張→バブル→バブル崩壊」開発主義金融システムの暴走
①超金融緩和政策+人為的低金利政策→貸出の超過利潤、貸出増強インセンティブ
②銀行のコーポーレート・ガバナンスの弱さ 護送船団行政
4.失われた平成30年 過剰設備調整の遅れ 間接金融の特徴詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
国民新党の反対で、日本銀行審議委員になれなかった経済学者の書いた本を読みました。非常に興味深い本でした。若いころの本は、理論的なものでした。理解しているかどうかは疑わしいですが、学部生のころ全部読みました。ただし、この本は、そんな本ではありません。しかし、著者の情熱が伝わってくる本です。興味を持ったのは、バブルの発生要因です。バブルの発生要因は、二つの要因に由来します。第1の要因は、マネーサプライの異常な上昇です。これは、仕方がない側面があります。この時期、日本は、急激な円高に直面していました。円高を避けるためには、日米間の金利差を維持する必要がありました。そのため、マネーサプライを大幅に上昇させる必要がありました。第2の要因は、日本企業の高揚感です。そのころ、欧米は、スタグフレーションに苦しんでいました。それに対して、日本経済は好調でした。これが、日本の企業の経営者に高揚感をもたらしました。これからは、アメリカではなく、日本が、世界経済をリードしていくという高揚感です。この気分は、よく分かります。僕も、そう思っていました。どんなに非合理的な地価、株価も、この高揚感により無視されました。金融の専門家らしく銀行の行動も分析しています。高度経済成長期において、資金需要は、常に、超過需要でした。それに対して、石油危機以降、資金の超過供給に転じました。この時点で、銀行の拡大路線は終わるべきでした。パイの縮小を前提とした再編に向かうべきでした。しかし、日本の銀行は、土地、株等への融資を進めて、拡大路線を採用しました。その結果、バブルが生まれました。再読の価値があります。
-
5-1-6 金融論
-
5年以上前に書かれた本ですが、決して時代遅れにはなっておりません。
むしろ、統計データを冷静に分析し単行本の分量
までにするのはある程度の時間が必要なんですね。
興味深かったのが、2003年のりそなへの公的資金注入により
株価が反転した、という広く信じられている説は
実証的にはやや異なるのではないかと述べられていた点です。
中の人として銀行の企業統治の弱さの問題など、
苦笑いしてしまう場面もあり。
なお、池尾先生も「繰り延べ税金資産」(笑)に関しては
しっかりとは理解されてはいないようです。
まあ、この辺はご愛嬌ということで。
銀行業界の方にはぜひお勧めですね。 -
[ 内容 ]
不倒神話の金融システムに何が起こったのか。
いま、解明される「失われた10年」の真実。
[ 目次 ]
序章 問題意識と本書の構成
第1章 開発主義金融システムの形成
第2章 開発主義金融システムの暴走
第3章 開発主義金融システムの保身
第4章 開発主義金融システムの瓦解
第5章 政府と金融システム
第6章 金融システムの再生をめざして
終章 ポスト・ビッグバンの課題
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
日本経済新聞「エコノミストが選ぶ経済・経営書」2006年ベスト19位 6点