日本の愛国心―序説的考察

著者 :
  • NTT出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757141759

作品紹介・あらすじ

「日本的精神」の深く静かなる声を求めて混迷の時代だからこそ問う。第23回正論大賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 「愛国心」について、
     1.なぜ愛国心が必要か。
     2.愛国心とはそもそも何か。
    という問題が生じる。このあたりは、実際に著書にあたって欲しい。

    どこまで行っても、愛国心は歴史観と切り離せない。

    そこで、日本の愛国心は負い目を持ち、その負い目とは大東亜戦争に対する負い目だと著者は言う。更に言えば、「大東亜戦争に対する負い目」とは、「あの戦争で死んだ英霊に対する負い目」なのだと。

    そして、この本の白眉は、明治維新を体験し西欧列強を目指した日本は必然的にあの戦争へ突入せざるをえなかったという文明論的分析だろう。

    西欧思想を身に付けた明治の知識人たちは、西欧の言葉・西欧の視点で日本を語らざるを得なくなった。そのセルフアイデンティティの危機は、「日本」というアイデンティティを崩壊させる可能性をはらんでいたのだ・・・という著者の指摘は、明治期の日本人のみならず、現在のわれわれにも当てはまる。

    著者は、この書のサブタイトルに「序説的考察』と銘打った。これは本書内で著者自身が述べているように、愛国心という巨大な論点を克服する第一歩としての意味なのだろう。

    次作が待ち遠しい。

  • 愛国心という言葉の響に後ずさりする者にとって、目から鱗のすぐれた著作となっております。

    愛国心と愛郷心とナショナリズムの違いであるとか、色んな意味で、丁寧に愛国心に対しアプローチを試みた序説的考察であります。

  •  「愛国心」=「ナショナリズム」という軍国主義的なイメージが強いが、本著書においては、「そもそも日本に国家があるのか?」と根本的な立場から問いかけている。
     日本の近代国家としての発展は、西洋をモデルとした「上からの近代化」を取り入れる中、「民主主義とは何か」といった思想・意識が育たないままに「精神の空白」をもたらすことになった。
     本当には「国」というものに対面しないまま「精神の空白」という状態を疑問にしないままの「近代ごっこ」「大国ごっこ」≒「絶対矛盾的自己同一」が現在にも続いている結果が「思想なき民主主義」であり、日本という姿の核心であるという危機感を抱いた。

  • 「愛国心について書くことは難しい」 ではじまる序論、西洋発のナショナリズム論では捉えきれない 「日本の愛国心」 という問題を、「日本の精神」という磁場において考察したものです。
    高度成長に入った時期から消えていった 「国家意識の喪失」 から説き始め、近代国家の論理を検証し、日本の愛国心の 「負い目」 に触れ、日本人の歴史観、歴史意識に辿り着く。議論は端緒についたばかり、『惰性的な状況判断』 など、私には理解できない言葉もあり、もう一度ゆっくり読み直してみたいです。
    まず、今日の日本における 「愛国心」 に関する議論を検討し、それを戦後日本のナショナリズムや愛国心という、より広いコンテキストにおいて論じ、次にナショナリズムや愛国心の概念を整理しています。
    第3章では、愛国心の教育を素材に、近代国家における 「愛国心」 の意味を論じ、あわせて、西欧社会における 「愛国心」 の歴史的な意味を概観します。
    第4章以下は、「日本の愛国心は日本の歴史観と不可分である」 とする試論です。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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