反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

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  • / ISBN・EAN: 9784757143203

作品紹介・あらすじ

反体制パンク・ロッカーはなぜ自殺したか?/左翼活動家のロフトはブルジョワに大人気?/反文明批評、反消費主義は新しい市場を生むだけ?/マルクスの誤謬、ヴェブレンの慧眼/環境問題をユートピア思想ではなく制度設計で解決――。 異色の哲学者ヒースとポッターのコンビが、反体制派の論理的な破綻を徹底的に暴く!

感想・レビュー・書評

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  • 『反逆の神話ーカウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか』
    ジョセフ・ヒース、アンドルー・ポター著、栗原百代訳

    タイトルの通り、いかにカウンターカルチャーがクールなものとして消費文化に取り込まれていったか書かれている。
    といっても反逆精神でワイワイ騒ぐことが意味がないと言いたいわけでもない。彼は議論の進め方を示していきたいのだと思う。

    それはその後の著書『啓蒙思想2.0』を読むとよくわかる。建設的な議論、本当の意味での保守主義を広めていきたいと考えている。

    カウンターカルチャー、アナキズムとか革命的な考え方がまるまるよくないと言っているわけではない。新しい考え方や文化がないと進歩は望めない。創造は模倣から生まれるというように、大きな流れは小さな変化の積み重ねだから。

    彼が一番危険視しているのは、カウンターの考え方について、期待を寄せすぎたり、ユートピアを求めること。
    リベラルな人たちが求める理想的な社会も、ドナルド・トランプを選択するような人たちも今をガラリと変えればどうにかなるという幻想に取り憑かれているともいえる。

    冷静な議論で達観した視点だから、タイトルよりは刺激はないかもしれない。カウンターでありたい人にとってはがガッカリさせられるかもしれない。けれど、こういう議論の仕方こそ実践的(プラグマティック)なんだと思う。

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  • SDGsやエシカル消費などについて、早い段階から触れていた。長いので、興味をもった項目だけ読んでもいいと思う。
    マーケティングの本かと思ったので、思想的な内容で個人的にはあまりマッチしなかった。
    読むにはある程度の知識が必要と感じた。

  • 《意味のない、もしくは旧弊な慣習に異を唱える反抗と、正当な社会規範を破る反逆行為とを区別することは重要だ。つまり、異議申し立てと逸脱は区別しなければならい。異議申し立ては市民的不服従のようなものだ。それは人々が基本的にルールに従う意思を持ちながら、現行ルールの具体的な内容に心から、善意で反対しているときに生じる。彼らはそうした行為が招く結果にかかわらず反抗するのだ。これに対し逸脱は、人々が利己的な理由からルールに従わないときに生じる。この二つがきわめて区別しがたいのは、人はしばしば逸脱行為を一種の異議申し立てとして正当化しようとするからだが、自己欺瞞の強さのせいでもある。逸脱行為に陥る人の多くは、自分が行っていることは異議申し立ての一形態だと、本気で信じているのだ。
    (……)
     この種の混乱は、カウンターカルチャーの論者からは肯定的に迎えられた。カウンターカルチャーの中核にある考えの表明として、逸脱と異議申し立ての区別を壊した(もっと正確には、すべての逸脱を異議申し立てとして扱いだした)と言えば事足りる。でないと、あまりにも多くの人が、かたやマーティン・ルーサー・キング、公民権運動、フリーダム・ライダーと、こなたハーレーダビッドソンの改造車、コカイン密輸、イージー・ライダーのあいだに類似を見いだしたことの説明がつかない。圧政に抵抗する自由、不当な支配と闘う自由は、好き勝手をする自由や私利を優先する自由とは同義ではない。しかし、カウンターカルチャーはこの区別をせっせと崩していった。
    (……)
     この二つを区別するために適用できる、とても簡単なテストがある。(…)「みんながそれをしたらどうなるか——世界はもっと住みよい場所になるのか?」 もし答えがノーなら、疑うべき理由がある。これから見るとおり、カウンターカルチャーの反逆の多くは、この簡単なテストに合格できない。》(p.93-95)

    《美的判断はつねに差異の問題だとブルデューは主張する。下等なものと上等なものを区別することだ。したがって、趣味のよさの多くは否定系で、「……ではない」という言葉で規定されている。「趣味とは」とブルデューは言う。「おそらく何よりもまず嫌悪なのだ。つまり他人の趣味に対する厭わしさや本能的な堪えがたさなのである」。音楽の趣味なら、自分が聞くものは多くの点で、聞かないものほどに重要ではないわけだ。コレクションにレディオヘッドのCDが数枚ある、というだけでは充分ではない。セリーヌ・ディオンやマライア・キャリーやボン・ジョヴィを持っていないことも、きわめて重要だ。》(p.144)

    《(マイケル・ムーア)は自分が直面している問題の完全に実行可能な解決策を——同胞の生活を改善することが明らかな解決策を——それがラディカルでないとか「抜本的」ではないという理由で見送ってしまうのだ。文化の革命的な変化を強く求めるばかり、それ以下のものは拒絶する。これこそ極端な反逆である。》(p.165)

    《制服は個性を排除しないが、個性を表現できる方法をある程度は制限するということだ。すると、競争的消費は緩和される。差異を踏み消すことはできないし、生徒たちの競争を止めることもできない。競争はまだそこにある。ただ、もはや無制限ではない。この点で、制服は核拡散防止条約のものだ。》(p.211)

    《ジョン・シーブルックは著書『ノーブラウ』で、古来の「ハイブラウ(知識人)」と「ローブラウ(無教養人)」の対立は市場に絶滅され、いまや僕らの住む世界は、画一的な「ノーブラウ(愚か者)」商業主義の世界だと主張する。しかし、古来のプロテスタント支配層に特有の価値観や文化がかなり影響力を減じたことは間違いないが、地位階層が消え去ったということではない。シーブルック自身は、下位文化(サブカルチャー)がさまざまな意味で、まさに新しい上位文化(ハイカルチャー)になったのだ、と指摘している。》(p.232)

    《広告に関しては、人を無防備にする欲望とはすなわち競争的消費を引き起こす欲望である。広告主はさながら武器商人だ。対抗する二つの勢力に戦争をするよう説得はできないが、喜んで両勢力に武器を売る。そして武器商人が戦争を激化させ犠牲者を不安製品を提供することで状況を悪化させるように、広告主は消費者間の競争的消費の影響をさらに増幅する。しかし広告と大量破壊兵器とをひとくくりにする前に、広告が効果を発揮する条件と、その効果を軽減するためにできることを明らかにする必要がある。》(p.241)

    《社会があなたに順応を強いていたり、人物ならぬ頭数のように扱っていると感じるときはいつでも、次のように自問することだ。「自分の個性は他人の仕事を増やしているか?」 もし答えがイエスならば、より多く支払う用意をするべきだ。》(p.272)

    《過去の半世紀にわたってカウンターカルチャーが政治意識に及ぼしてきた影響力は、つまるところ、ナチスドイツが西洋文明に甚大なトラウマを加えていたことのあかしである。》(p.365)

    《では、大衆社会と和解するとは具体的にどういうことか? 最も重要な結果は、政治哲学者ジョン・ロールズが「多元主義の事実」と呼ぶものを受け入れるすべを学ばねばならないことだ。現代社会はとても大きく、人口が多く、複雑になったから、もう全国民が単一の共通の価値観のもとに集結することなど期待することはできない。このような社会はライフスタイルの実験を奨励する。個人は自分なりの生き方を、充足の源泉を見つけ出すように促される。ただし、これには重大な結果が伴う。「人生の意義」のような大きな問いに答える段になると、この個人の自由という制度からはより多くの——その逆ではない——不和が生じる。
     一般的には、これはいいことだ。何を考えるか、誰と結婚するか、どんな職業に就くか、自由な時間に何をするかまで命令されるような社会に生きたいと思う人はあまりいない。しかし、これらを自分で選択する自由があるということは、家族中心の価値観、神の存在、道徳の基準といった人生の重要な問題について、しばしば互いに意見が一致しないことを認めねばならない。不和とともに生きることを学ぶ必要があるのだ。しかも単に皮相的な不同意ではなく、僕らにとって一番大事なことに関する意見の衝突と。さらには、多少のコンセンサスは得られるとの想定のもとに社会制度を築くことはできない。とりわけ国は全国民を平等に扱わねばならず、それはつまり、こうした価値観の分かれる問題すべてに関して、おおむねどっちつかずのままになるということだ。》(p.369-370)

  • ふむ

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    社会

  • 「カウンターカルチャーの反逆こそが消費真主義を新たに活気づけたことは、不思議でも何でもないだろう。」

  • 「カウンターカルチャーは世界をマシにしない」事を説いた名著。「カウンターカルチャーの反逆は、おそらくほかのどの運動よりも多くの変人たちを引き寄せるのに、そのくせ、いざやって来たときに対処する準備がろくにできてない」など、嫌になるほど頭を縦に振りたくなるパンチラインが山ほど出てくる。

  • 少なからずショックを受けることになると同時に、何かが確実にオーバーライトされる。文章はとても読みやすいが、スラスラとは読めない。一々、ひっかかってくる。聞き捨てならない内容だからだ。反逆者のジレンマをズバリといったところ。これは体制の手先ということではない。本当に大切なことはなんなのかを冷静に考える材料を提供してくれる。

  • 原題:THE REBEL SELL: Why the Culture Can’t be Jammed Capstone
    著者:Joseph Heath
    著者:Andrew Potter
    訳者:栗原百代

    【感想】
     かつては反抗の幟にもなっていたサブカルチャーの現在への鋭い指摘。事例はほぼアメリカですが、特殊合衆国的ではありません。
     知り合い〔&知り合いではない〕のサブカル男子/女子が「こんな本認めない!」的な沸騰をするのは幾度か〔※各一度〕見ました。

    【目次】
    目次 [/]
    謝辞 [003-004]

    序章 005
    反逆者が履くナイキ/『マトリックス」を読み解く/カウンターカルチャーの快楽主義

    第1章 カウンターカルチャーの誕生 019
    誰がカート・コバーンを殺したのか/反逆思想の系譜/カール・マルクスの診断/ファシズムと大衆社会/ミルグラムの「アイヒマン実験」/「システムからの解放」という目的/「体制」はなぜ崩壊しないのか

    第2章 フロイト、カリフォルニアへ行く 045
    フロイトの登場/イド・自我・超自我/心の「圧力鍋」モデル/現代社会は「抑圧」する/マナーの起源/アメリカはファシズム社会か/『アメリカン・ビューティー』と『カラー・オブ・ハート』/ドラッグによる革命/パーティーのために闘え!

    第3章 ノーマルであること 077
    フェミニズムがもたらしたもの/アナーキズムの罠/集合行為問題の解決法/異議申し立てと逸脱の区別/フロイトvsホッブズ/フロイトvsホッブズ(その二)/日常の中の「ルール」/わがパンク体験

    第4章 自分が嫌いだ、だから買いたい 115
    反消費主義=大衆社会批判?/幸福のパラドックス/消費主義の本質/ボードリヤール『消費社会と神話の構造』/マルクスの恐慌論/ヴェブレンの洞察/消費主義の勝利は消費者のせい/都会の家はなぜ高い/「差異」としての消費/バーバリーがダサくなった理由/ナオミ・クラインのロフト

    第5章 過激な反逆 157
    ユナボマーのメッセージ/反体制暴動は正当化されるか/マイケル・ムーア『ボウリング・フォー・コロンバイン』/精神病と社会/「破壊」のブランド化/オルタナティブはつらいよ/消費主義を活性化するダウンシフト/お金のかかる「シンプルな生活」

    第6章 制服〔ユニフォーム〕と画一性〔ユニフォーミティ〕 187
    ブランドなしの「スタトレ」/制服は個性の放棄か/制服の機能/「全体的制服」をドレスダウン/軍隊の伊達男/反逆のファッション/イリイチ『脱学校の社会』/学校制服の復活/女子高で現地調査/なぜ消費主義が勝利したか

    第7章 地位の追求からクールの探求へ 217
    「クール」体験/クールとは何か/「ヒップとスクエア」/アメリカの階級制/ブルジョワでボヘミアン/クリエイティブ・クラスの台頭/クールこそ資本主義の活力源/広告は意外に効果なし?/どうすれば効くのか/ブランドの役割/選好とアイデンティティ/流行の構造/広告競争のなくし方

    第8章 コカ・コーラ化 255
    レヴイットタウン/現代の建売住宅事情/画一化の良し悪し/みんなが好きなものはあまり変わらない/少数者の好みが高くつく理由/「マクドナルド化」批判の落とし穴/グローバル化と多様性/反グローバル化運動の誤謬

    第9章 ありがとう、インド 289
    自己発見としてのエキゾチシズム/エキゾチシズムの系譜/ボランタリー・シンプリシティ/東洋と西洋/香港体験記/カウンターカルチャーは「禅」がお好き/先住民は「自然」か/「本物らしさ」の追求/胡同を歩く/旅行者の自己満足/ツーリズムと出張/代替医療の歴史/代替医療はなぜ効かない

    第10章 宇宙船地球号 327
    サイクリストの反乱/テクノロジー批判/「スモール・イズ・ビューティフル」/適正技術とは何か/サイバースペースの自由/スローフード運動/ディープエコロジー/環境問題の正しい解決法

    結論 365
    ファシズムのトラウマ/反逆商売/多元的な価値の問題/市場による解決と問題点/反グローバル運動の陥穽――ナオミ・クラインを批判する/そして何が必要なのか

    後記 383
    倫理的消費について/簡単な「解決策」などない/左派は文化的政治をやめよ/カウンターカルチャーの重罪/資本主義の評価/僕らはマイクロソフトの回し者?

    原注 [400-414]
    訳者あとがき(二〇一四年八月 訳者) [415-418]
    読書案内 [419-420]
    索引 [422-433]

  • ~感想文~
    クソっ、また、カツマ級にくだらない本に3,000円近くつかってしまった。
    相変わらずのパッパラパーなあたし。
    こんなことなら、キャラメルフラペチーノでチーズケーキ流し込みながら、ぶくぶく太ってトランプに一票投じるほうがマシだ!
    (植民地の消費者には参政権はない。)

    前向きに考えよう。一回り前の時代なら楽しめたのだ、きっと。
    学校の授業のようで、古典の引用や、サブカル与太話は細かいトコまで面白そうに書いてあり、ソファでぺらぺらと読むにはよい。
    原著は2004年の古い本、かつ、10年~と年数に耐えられる内容ではない。20世紀の消費文化とサブカル解説のまとめ、としてもかなり恣意的なので、どうかな..。原タイトル"THE REBEL SELL"。邦題の「神話」は、ボードリヤール汲んでるのだろうけど、いいすぎ。この本を読んでると2010年代のいまは、お金でcoolな階級を買う(the old good daysよかった)時代は、もう過ぎてしまったんだろうね、と思う。

    単純な話を「反抗っても、ただの消費で力奪われてる」という切り口にこだわるあまり、捻じ曲げ、ムリクリ感が漂う。抑圧的寛容に取り込まれぬよう(?)、注意深くなりすぎた体裁をとりつつ、これしかできなかったのだろう。陳腐になること、「反逆」のクリシェを恐れ、フレッシュ(ラディカルやらクールというよりも)であろうとするあまり、つまらないところにしか着地できなかった感。(ここでの「反逆」世代50~60代あたりに対する、単なる老人いじりな様相も。)極端な結論に持ち込むために、都合のよい部分をピックし、捻じ曲げ、関連付けさせる。サブカルに親でも殺されたか、恋人を奪われたのか、というほどに。

    よって、ダサくて暗い…。
    (カバー袖の斜に構えたphotoに、衝撃を受けている場合ではない。)
    こんな中年にならないでおこう、と、若者やOiパンク老人へ「本を捨て、町に出よー」を呼びかける本ともいえる。
    本書にて、いい恋できなかった青春…のようなことがフェミニズムのせいにされているところがあるのだが、こういう性質だからよい相手にめぐりあえなかったのか、正直モテなかったからリア充だらけぽいカウンターカルチャーに対して恨みを抱いてしまったのだろうか。(マリアさま、どうか世界中に散らばるこじらせ青年をお救いください…。)

    2000年代以降のネットカルチャーのベースになっているのは、体制により消費文化にすぐコンバージョンされるばかりでハシにも棒にもかからなかったとここでされている、ヒッピーカルチャーやアナーキズムに因るところが大きい。当たり前になって空気のように感じる自由は、あのだめでぐうたらなカウンターカルチャーによるものが多々あるだろう。ここにある閉塞は、前世紀のものとは種がまた異なる。裏の裏を掻くようなテクニックは耳掻き一杯ぐらい必要かもしれないけれど、ストレートでバカな衝動が失速し、自滅しない程度でいいだろう。

    『資本主義が嫌いな人のための…』で堂々と破たんしてるアイデアを開陳していたが、こちらでも気の毒になるほどの半可通節が、あちらこちらでとどろいていた。

    そして、ちゃんとお金を払い、2冊も目を通し、私は、また人生を消耗し、消費人生をまっとうしている。

    ..彼の言い分が好みの人同士で、うなづきあうための本なのだろう。

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著者プロフィール

1967年カナダ生まれ。トロント大学教授(哲学・公共政策・ガバナンス)。著書に『ルールに従う』、『資本主義が嫌いな人のための経済学』などが、共著書に『反逆の神話』(すべてNTT出版)などがある。

「2014年 『啓蒙思想2.0 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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