31文字のなかの科学 (NTT出版ライブラリーレゾナント053) (NTT出版ライブラリーレゾナント 53)
- NTT出版 (2009年6月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757150690
作品紹介・あらすじ
身体から宇宙まで歌を通して見はるかす。小さな詩型に科学のテーマが盛り込まれている不思議。新聞記者だった歌人が魅力的な歌の数々を紹介する。
感想・レビュー・書評
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パン屋のパンセと同時期に読む。松村さんは元新聞記者で葛原妙子賞を受賞。8年前に東京から石垣島に移住し歌を詠み続けている。科学と短歌の組み合わせに驚きながら、短歌の意外性と深淵さに引入られた。
その頃に読んだ本も書き留めておくことにします。
https://blog.goo.ne.jp/33bamboo/e/775ef5e3b3a94c4cfb689cd225470d43 -
新聞記者として科学の前線を追ってきた著者が編む、人と科学の短歌エッセイ。
著者が記者ということもあってか、文章がやや説明的にすぎるように感じたり、事実や現状が型にはまった言い回しに聞こえたりしたところもあったが、視点としてはかなり面白い試みだったと思う。
文章で書いてしまえば「今さらそんなこと」と思うような科学的発見や犠牲(困難?)も、歌にすると非常に感覚的に受け取ることができて、科学の柔らかくデリケートな側面を今までとは違う視点で見ることができた。
たとえばクローンのことを詠んだこんな歌。
ぼたん雪 夭折の子のクローンが生まれたらなほ悲しからむよ
――米川千嘉子
これをただ単に「クローンが短命で死んだら、どっかで『やっぱり』と思うよね」と言ったら、それは科学をできすぎた人間の知恵として嘲笑っているようにしか聞こえない。
しかし、このように「歌」で読むと全く違った意味合いに聞こえるのだから、不思議なものだ。厚ぼったい、けれども白くはかない「ぼたん雪」が冒頭にぽんと置かれているのが効いている。
好きな歌はいくつかあったのだけれど、やっぱり加藤治朗さんの歌が抜きん出て素晴らしい! と思った私であった。
脳死を扱った二首が載っているので、それを抜粋。
あるヒトの脳死は待たれほしいまま刻まれてゆくつめたいトマト
いまきみの脳は機能を失ってぬれたガーゼに包むみつばち
――加藤治朗
ちなみに、装丁はクラフト・エヴィング商會です。 -
ココロの切り替えをしたい時に一目惚れして出会った本。
知らないことに憧れる私としては、理系分野と短歌の交点に引き込まれました。
著者は元新聞記者さんだそうで、スッキリとして、たまにハッとさせられ、時には彼女の主張が垣間見られる文章で 私は割と好きでした。
特に印象深かった2首
今日君と目が会いました指先にアセチルコリンが溜まる気がした(永井紅)
記憶せよ 八十三日目の被曝死、ずたずたになった染色体を(飯沼鮎子) -
[ 内容 ]
身体から宇宙まで歌を通して見はるかす。
小さな詩型に科学のテーマが盛り込まれている不思議。
新聞記者だった歌人が魅力的な歌の数々を紹介する。
[ 目次 ]
第1章 生命の不思議
第2章 身体と向き合う
第3章 脳とこころ
第4章 果てしない宇宙
第5章 私たちの地球
第6章 科学と人間
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