誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757160118

作品紹介・あらすじ

お酒、タバコ、ギャンブル、甘いもの……。目先の欲望に支配されてしまう人間の本質を「双曲割引」によって解明し、意志の根源にせまる驚愕の一冊。生物学・心理学と経済学を実証的につなぎ、効用主義に代わる新しい考え方を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • <訳者解説だけ読めばよいかもしれない>
    なぜ人は、各種選択肢価値をパッと計算してスッパリ意志を決められないんだろう?或は決意を撤回し、再撤回し、逡巡するんだろう?なぜ自由意志はなぜ何故自由なんんだろう?

    「意志の副作用」
    強い意志を持つためには、言い逃れの余地のない「強いルール」や「カテゴリー」を定めるのが有効だ。ところが、硬直化し過ぎると環境変化に柔軟に対応できなくなる。ダイエットを続ずにはいられない拒食症の様な状況をもたらす。

    一番良いのは気に病まず中庸を保つことだが、意志はこうした曖昧なルールよりは、明確な白黒つけやすいルールを好んでしまう。意志に頼ると、こうした本当に自分のためになる選択がかえってできなくなることだってある。

    意志の働きにより合理性が高まったために、満足度が減ってしまう行動というのも沢山有る。例えば「旅行」。効率の高い輸送手段ですぐに目的地に到達できるようになったら、旅全体で得られる満足度は半減する。
    映画でも、前段での仕込みがあって初めて結末が効果を発揮する。ビデオで前段を早送りしても結末で得られる満足も減ってしまう。或は、旅行や映画やその他でも、結果が予想できないということがしばしば満足度に大きく影響する。

    殻付きの蟹が旨いのは、チマチマほじくって食う事で目的に簡単に到達できないようになっているからだ。

    結論:
    自分の中での葛藤を今一度見直して、衝動に負けず、一方で柔軟性をもった選択がでいるように客観視するのに本書は役立つ。

  •  人はなぜ「欲望に負けて」飲み過ぎたり、麻薬にはまったり、パチンコで身上つぶしたりするのか。ああ、意志の力のなんと弱いことよ。合理的に行動できるならけっしてしないことを、「あのときはあれがいいことだと思ったんだ」とやってしまう、それも繰り返し。どーしてオレってこうなのか……ってことを教えてくれるというのが本書。いやー知りたい、それ知りたいよ。
     この本は「双曲割引」というたったひとつのツールを利用して、「なぜ人は目先の誘惑に弱いのか」ということを説明する。それはかんたんに言っちゃうと、目の前の利益ほど巨大に見えるという法則が働いているから。なんだけど、その説明がおもしろすぎる。
     とくにおもしろい部分は、第3章の30ページ。そこんとこだけでもホント、目から落ちすぎる鱗で掃除機がいるくらい!

     ただ、あまりにいろんなことを説明しようとしすぎて、長い。いや、さすが訳が山形浩生だけあってわかりにくくはないけど。オレは4章くらいまではじっくり読んだけど、あとのほうは各章の「まとめ」が親切なので、そこを読んでわかった振りをした。オススメは(ふつうそうするだろうけど)さきに訳者解説を読んでだいたいのアタリをつけること。

     人間というものが、けっしてあらかじめ意志強く作られているのではなく、さまざまな欲求の寄せ集めでできているのだということに、まず安心する。目の前のえさに釣られ、先のことは適当に割り引きつつ、なんとか長期的にいちばんお得な選択肢を選ぼうとしているけなげな奮闘ぶりに、ちょっとほほえましさを感じる。この本を読んだところで意志堅固になれるわけじゃないと思うが、弱さを嘆き、阿呆を呪うだけではなく、そのしくみについてのおもしろい仮説を考えることで、すこし自分の中の「わがままな小人さんたち」に親しみを持てるようになった気がする。

  • 神田昌典氏・勝間和代氏による『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』で紹介されていたのを見て、とある誘惑とちょうど闘っている自分にピッタリだと思い読んでみた。が、正直言って本文は相当難解かつ長大なのでほとんど読まず。最初に序を読みはしたが、次に訳者解説を読んで「この本は読むのが非常に難しい本だ」と分かり、精読を諦めた。
    人がなぜ自滅的行動をとるのかという長年の疑問に対し、双曲割引という理論モデルを使って答えようとしている。人がある物事を評価する時、それがいつ手に入るかという時間に応じて価値が変化する。その価値評価は指数関数的だと従来は考えられてきたが、実際には双極関数に従うらしい。
    著者はあらゆる学問分野を調査したのではないかと思わせるほどの広範な資料には脱帽だが、僕は「人の意思決定をどのような理論モデルで説明できるか」にはさほど関心がなく、「どうすれば誘惑に打ち勝てるか」なので、本書は僕の求めているものではなかった。

  • 本文は、意味不明。
    最後の訳者解説でなんとか理解でき救われるという不思議な本。
    訳者のくだけた解説が面白い。
    人は、遠くの希望よりも目の前にある誘惑に弱いということ。
    合理的になり過ぎるとかえって楽しめなくなる。
    本書は役に立つ・・・・・かもしれないと締めくくっている。

  • 双曲割引理論という耳慣れない独自の理論で、人間の意志を全て説明してしまおうという野心的な内容の本。双曲割引理論とは、未来の報酬をどの程度割引いて評価するかは双曲曲線に従う=現時点での報酬を過剰に評価する、という仮説理論である。経済学でも使われる将来の割引率が現在一般に想定されている指数関数的なものではなく、地点ゼロで無限大になる双曲線のような割引率になるということからその名前が付けられている。もしかしたら流行の行動経済学にも近いのかもしれない。

    痛み、癖、中毒、欲求をひとつの軸に並べてしまって意志にとって相互に直接的な報酬比較の対象にしてしまうなど大胆だが、その大胆さによって著者の信念が透けて届き、何となく説得力を持ってくる。最近読んだ本で、J.サールの『MIND』でも自由意志を取り上げているが、筋が通った総合的な説明になっているという点ではこちらに軍配が上がる。真実性や有効性は別としても知的議論としては双曲割引/異時点間交渉/加算性といった概念は上質な部類に入るのではないか。
    しかし惜しむらくは、文章が相当読みにくい。かなり覚悟して読まないといけない (訳者もそう言っているので間違いない。いやいや)。また、熊の表紙は何なのだろう。

  • すぐにもらえる小さい報酬か、それとも遅延のある大きい報酬か、という異時間選択の問題について書かれた本。
    報酬が先延ばしになるほど、主観的な価値は目減りしていく。これを価値割引という。
    この価値割引がどういう関数で表わされるか?というのが本書の大きなテーマである。
    一般に、双曲線割引と指数型割引という二つのモデルが提唱されていて、著者のエインズリーは前者のモデルの支持者である。
    双曲線割引でなければ、目先の小さな報酬を選んでしまう、選好逆転現象を説明できないからだと主張する。
    言いたいことは大体わかるけれど、訳者の山形氏があとがきで書いているように決して読みやすくはない。
    また、個人的には価値割引をそんなに簡単な関数で表わせるのか、疑問である。

  • 鼻先のニンジン、判断時の自分に最速に利益をもたらすと感じることで、将来的本利益とは関係なく目先の利益が過大評価されてしまうという現象解明。相対的利益よりも不利益な欲望に突き動かされるという、人がしばしば行う不可解を、指数でない双曲割引に見る理論で切りまくり。そうした欲望充足の満たしやすさ=選択効率を、より高次なルールで抑制する為に「意志」が設定されたが、過度になると強迫観念を起こし自己不満足に至ると指摘。

  • amp.2022/1/6
    p.2006/9/7

  • 勝間さん推薦 不幸になる生き方より

  • 思索

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