ウォークン・フュアリーズ 下―目覚めた怒り

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制作 : 田口 俊樹 
  • アスペクト (2010年7月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757218055

ウォークン・フュアリーズ 下―目覚めた怒りの感想・レビュー・書評

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  • 新刊時に買ったので、読み終わるまでに6年もかかったことになる。「叛逆航路」を読みながらなんとなく本書を思いだし、どこが似てるのかと気になった結果やっと読み終えたのだが、性別はおろか人間をも超越した主人公で話を進行させた「叛逆航路」と比べてしまうと、コバッチのキャラはまるで戯画化されたマッチョな亡霊としか思えなかった。自分がフェミニストだとは思わないが、コバッチみたいなキャラは生理的にうけつけなくなってしまった気がしないでもない。たんに加齢のせいかもw

  •  『スター・トレック』なんかに出てくるやつ。物質転送機。
     「私」の体の構成原子をすべてスキャンして、その情報をビームかなんかで火星に送り、すっかり同じ状態の「私」を再構成する。すると「私」は、一瞬にして火星に転送されるわけだが、その時、地球に残った「私」を分解してしまわなかったら、「私」は二人。地球と火星と。どっちが「私」? どっちも「私」? それとも?
     という哲学的問題を永井均は『転校生とブラック・ジャック』の中で論じている。世界に開けているこの《私》が二人いるなんてあり得ないのだが、それがどうしてあり得ないのか、永井先生にもわからないのだそうだ。
     一応、タケシ・コヴァッチの世界でも、同じ人間が二人いるのは困るので、ダブル・スリーヴ(ある人物の人格データを二つの肉体にダウンロードすること)は犯罪である。犯罪であっても誰かの目論見でそういうことになってしまったのだ、コヴァッチの場合。永井先生、この小説では、地の文で「おれ」といっているのが、世界に開けているこの《おれ》なんですよ、端的に。

     本作でコヴァッチが対処しなければならない敵のエージェントは、若い頃の「おれ」、特殊部隊エンヴォイ・コーズ時代のコヴァッチであり、これは地域政府の安定のために任務として戦うという立場を象徴している。他方、この「おれ」は成り行きで革命の大義のために戦う集団と行動をともにしている。しかし、どちらもたわごとで、いい加減にしてくれとコヴァッチは言う。「罪のない傍観者が吹き飛ばされ、血を流し、悲鳴を上げる。ただ最後に待っている玉虫色の政治的妥協のために。全部ほかの人間たちの大義だろうが。そんなものにはおれはもううんざりなんだ」。そして私怨を晴らす活動に舵を切る。

     大義のために百万人の命を奪うことは、われわれにはたやすくできることである、しかるべき地位にあれば。そういう凡庸な政治家によって多くの命が奪われてきた。しかし小義のために、「落とし前をつけるために」、何人もを殺す度胸はわれわれにはない。コヴァッチの小気味よさは小義に突っ走ることだ。
     ただ、もちろん作品のプロットはコヴァッチを私怨ばらしに没頭することは許さない。裏切りに次ぐ裏切りで話は二転三転していく、もうひとりのコヴァッチという設定は、過去の「おれ」、別の人生を歩みうる可能性のある「おれ」に出会うということでもある。あたかも今の「おれ」を否定するかのようなコヴァッチ。そして革命の大義にも「うんざり」なコヴァッチ。
     物語は伏線の謎解きをしつつ、見事にSF的設定を活かして「もううんざりなんだ」というコヴァッチを新たな局面に運んでいく。一条の希望はコヴァッチにとっては十分、大団円だろう。

  • 「オルタード・カーボン」「ブロークン・エンジェル」に続く、
    元「特命外交官(エンヴォイ・コーズ)のタケシ・コヴァッチシリーズの完結編。

    精神と肉体が分離され、精神を「メモリースタック」に保存し、
    肉体を変えることで不死が実現した27世紀の物語。

    SFでありながら、
    作者自身、本作を「フューチャー・ノワール」と呼んでいるように
    基本は、ハードボイルド。
    圧倒的なその世界観が素晴らしい。

    しかし、
    「オルタード・カーボン」「ブロークン・エンジェル」(単行本)
    の装丁が素晴らしいのに、
    「ウォークン・フュアリーズ」は文庫のみの発売なのが残念。

  • コヴァッチは良い男だぜ、、、

  • SF風味なアメリカンハードボイルド。
    作者はレイモンド・チャンドラーとかのファンか?
    ケンブリッジ卒が書くアメリカンハードボイルドとか新鮮だw
    ちなみに、ラストネームが気になるのは私だけか...

  • 「人が死なない世界」という設定の派手さに隠れて目立たなかったが、本シリーズは中央集権が徹底されたディストピアの物語でもある。本作はこれまで遠景にしか描かれなかった権力への闘いに焦点を当てられている。

    主人公のタケシ・コヴァチはニヒルなようで実のところ理想主義的であり、本作ではその部分が強調されている。
    驚くべき結末ではあるものの、冒頭から繰り返されるタケシ・コヴァチの内面の描写を鑑みると当然の帰結かもしれない。
    むしろ新世代のサイバーパンクを志向していた本シリーズにおいて、まるでアシモフのように外部に神を求めるかのような世界観に帰着した点は大変に興味深い。

    一方で、シリーズの特徴であったアイデンティティに関する命題は、もう一人のタケシ・コヴァチを登場させたにもかかわらずほとんど触れられることがない。
    何故物語の主題を、個人の内面よりも社会のあり方に重点を置いたのか、作家の選択もまた興味深いところである。

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