- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757219663
感想・レビュー・書評
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福島医大蔵書検索/震災関連コーナーにあります
http://www-lib.fmu.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&annex=all&isbn=9784757219663詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カバーのトリアージ・タグがとても印象的だ。「救命」を読了後、災害時医療の実態を別視点からも知りたくて、本書を急きょ購入した。書名に出てくる3病院は拠点病院である。そこにいる医療関係者が医療を必要とする「命」にどう向き合ったかを知ることは、意義深い。3病院それぞれの日時を追った記述は緊迫感がある。しかし、Ⅳ、Ⅴ章の文章が何ともチグハグな感じだ。Ⅰ~Ⅲ章の焼き直しのような文章もあった。想定外という言葉に対し「想定するから、外れた時に何もできなくなる」という石巻赤十字病院の石井医師の言葉がとても印象的だった。
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震災体験記は難しい。震災3~4ヶ月の気持ちと今はやっぱり違うもの。
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この本は、石巻赤十字病院の記録を借りる時に、気になって一緒に借りた。
すでに、石巻赤十字病院の状態を知っていて読んでいたので、落ち着いて読めた。
一通り読んで思うのは、「現場が命」ということ。
行政側は、「情報が入ってこないからわからなかった」といったりするが、石巻赤十字病院の方々は、自分の目で街を見て、現状を把握した上で色々な対策をたてている。行政こそ、いち早く現場を見て、対策を立てるべきだった。
ヘルプで来た県外医療者の中には、「○病院の院長です」と名刺を出す方もいたという。現状を知らないからそうなんだと思う。
また、DMATも、地域によって対応が違っていた。現場を考え、マニュアルの滞在3日を延長して対応したところもあれば、マニュアル通りに混乱する現場を残し、3日で解散したところもある。
今回、マニュアルが初動対応でとても役立った反面、ある方面ではマニュアルがあることで現場の状況を考えずに適切だとは言えない行動もあったということ。
文中、「災害は『想定外』が『想定内』」というものがあったが、今まで地震関連の本を読んで、その言葉に納得した。全てが同じ災害などありえず、全てが新しい災害。今後、必ず起こるであろう地震にむけて、今回のような生きた記録を活かし、「想定外でした。」という言葉が出ないような対策をたてなければならないと思う。 -
資料番号:011427457
請求記号:498.8/イ -
(2012.02.10読了)(2012.02.02借入)
【東日本大震災関連・その55】
結構早く予約したのですが、やっと順番が回ってきて借りることができました。
ぼくの後にもまだ順番を待っている方がいます。読んでみると、そんなに人気の出そうな内容ではないのですが。「石巻赤十字病院の100日間」の方がお勧めです。
「救命-東日本大震災、医師たちの奮闘-」海堂尊監修は、まだ読んでいないのですが、評判は、良いようですので、どれを読もうかと考えている方は、「救命」の方がよりお勧めなのかもしれません。
この本は、「東北大学病院として、宮城県として、未曽有の災害を体験した現場の医療体制全体の記録を残すことによって、今後も起こるであろう震災医療に役立てなければいけない、そう考えたのです。」と監修者が言っています。取材と執筆を行ったのは、フリーライターの石丸かずみさんです。
「医療体制全体の記録」ということですので、読者としては、一般の方を対象としているわけではなさそうですし、実際僕が読んでもあまり興味をひかれる内容ではありませんでした。阪神淡路大震災を教訓として作られた非常時の災害医療の体制を見直すための記録になれば、ということのようです。
東日本大震災では、津波による被災者が大部分で、11日・12日はあまり患者が無く、津波警報が解除になり、主要道路の瓦礫が撤去されて、救助活動ができるようになった13日からが本番でした。
この本の目次は以下の通りです。
0、宮城県では2日前に地震が起きていた
Ⅰ、石巻赤十字病院 混乱する医療チームをひとつにまとめあげる
Ⅱ、気仙沼市立病院 透析患者を大規模・長距離搬送する
Ⅲ、東北大学病院 後方支援として、すべての患者を受け入れる
Ⅳ、崩壊した医療システムを、どうやって機能させたのか?
Ⅴ、”そのとき”を知らない人へ、”そのとき”を知る人からの言葉
●マニュアルは役だった(33頁)
「想定外の災害では、マニュアルは役立たない」という言い方を聞いたこともあります。しかし今回、初動時にはマニュアルが力を発揮しました。誰がどこに配置されるのか、それがすぐに理解できました。
●救急患者が来ないので現場を見に(35頁)
以前合同訓練でもお世話になった自衛隊のヘリコプターに乗せてもらい、現状を自分の目で確かめることにしたのです。
ヘリコプターから眼下の光景が見えてきた。その光景は、石井医師の知る石巻ではなかった。見渡す限り海水にのみ込まれ、家々はまるで積み木のように流されている。ところどころで黒煙が上がり、重油混じりの火災が起こっている。
●津波肺(38頁)
ひどくせき込んだ高齢の男性が運び込まれていました。その男性にぜんそくなどの既存病はなかったので、肺炎を疑い、胸のレントゲンを撮ったのです。そうしたら、普通の肺炎とはちょっと違う。「津波肺」と呼ばれるものだったのです。これは津波にのみ込まれたときに、海水が途中で巻き込んだ土、ガレキ、重油、病原菌などが肺に侵入することで炎症を起こすもので、肺炎のなかでも重症に陥りやすい症状です。
●300の避難所のアセスメント(46頁)
300の避難所を、手分けしてアセスメントする。数が多いので共通のアセスメントシートを作って、そこに各救護チームが記載する形式にした。
限られた医療資源をどう効率的に分配するか。それこそが、アセスメントの目的だった。
孤立してたどり着けないところでは、自衛隊の協力も要請した。
3日間でほぼすべての避難所のアセスメントを終了した。
●情報を待つ(49頁)
県庁では「状況の連絡が来ないのでわからない」というが、自分たちの足で現地へ行き、自分たちの目で現地を見れば、すぐに理解できたはずだった。
(「前例主義」「要望主義」「上意下達主義」)
●情報伝達ツール機能停止(75頁)
地震発生当初は、携帯電話のメールは「利用可能状態」が続いていたが、発生3時間後には携帯メールも、まったく通じなくなった。停電による節電体制のため、パソコンも使えなくなっていた。通常時の情報伝達ツールはすべて機能停止状態となったのである。
●低体温(80頁)
13日には、水が引きはじめた。自衛隊のヘリコプター救助もスタートした。救助された人たちが、気仙沼市立病院に運び込まれてきた。
救助された人たちは、真冬のような気候にさらされ、一様に低体温状態に陥っていた。低体温とは、直腸温が35度以下に低下した状態をいう。
地震による災害医療という頭から、真冬の水害による災害医療に切り替えました。
●何もせずに帰った(137頁)
仙台を起点として石巻や気仙沼、南三陸、多賀城など沿岸部の被災地に行こうにも、交通インフラが壊滅状態にあり、そこに入ることはできない。震災直後に仙台に入った支援チームのなかには、医療活動を一切することなく、帰途につかざるをえなかったチームが数多くあった
☆関連図書(既読)
「ドキュメント東日本大震災救助の最前線で」Jレスキュー編集部著、イカロス出版、2011.09.15
「石巻赤十字病院の100日間」由井りょう子著、小学館、2011.10.05
「南相馬10日間の救命医療」太田圭祐著、時事通信出版局、2011.12.01
(2012年2月11日・記) -
分かりにくい。ライターさんの中で書くべき内容がしっかり整理しきれているのか不安になるくらい分かりにくかった。この本でなきゃ分からなかったことも特にない。あっちにもこっちにもいい顔して結局だめになっている感じ。DMATへの評価も最終的に「問題点があったのは事実だけどやっぱりすごく役に立ったんだよ!」的なまとめ方だったのでそれはちょっとどうなんだろうなーと思った。
震災関連本は数多く出版されているしこの先も出版されてゆくと思うけど、本を売るためではなく震災の記録を残すために出版してほしい。 -
震災時の、比較的大病院での災害医療コーディネートの様子を描いたもの。
石巻赤十字病院のやつはほぼ同じ内容をNHKスペシャルかなんかでやってたと思う。
面白いのはDMATに対する評価が赤十字病院と気仙沼市立病院とでけっこう変わってるところ。阪神淡路大震災の教訓で作られたこの組織が実際に役に立ったのか、邪魔だったのか。経験を生かすことは重要だが、特定の経験を過大視することも問題だ、と思わせる好例。同じ意味で、今回の大震災も今後起きるすべての大災害の絶対的教訓としては君臨すべきではない。むしろ、その教訓的パラダイムのシフトこそ、つまり想定外の否定こそ、今回の最大の特徴だったのだろうから。
あとは、マニュアルが意外と役に立ったというのは割りと共通していておもしろかった。普段マニュアルというと、官僚的で大事なときに機能しないイメージがあるけど、実際非常時にはマニュアル的な支えがないとなにもできないこともまた事実なのである。あとで書く『救命』と比較するとおもしろい。『救命』のほうはもっとミクロで厳しい現実である。