負けるはずがなかった! 大東亜戦争

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757223400

作品紹介・あらすじ

戦争が大嫌いな人のための大東亜戦争入門。
外交と戦争の歴史を知らずして、集団的自衛権と真の平和は語れない...。
歴史的に正しい眞相はかうだ!
・世界最強だった帝国陸海軍。
・大東亜戦争は対米戦争以外全戦全勝だった。
・「優秀な現場と無能な上層部」という日本の伝統的病理。
・わざわざハワイを攻撃した愚将・山本五十六。
・戦争設計がなかった官僚軍人・東條英機。

感想・レビュー・書評

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  • 正直言ってこの本のタイトルには驚かされました。今まで「こうすれば勝てたかも」とか「ここで手を打っておけば」という本はあったと思いますが、「負けるはずが無かった!」というのは驚きを越えて呆れてしまうものでした。

    この本はネットで見ただけであれば多分、購入しなかったと思いますが、本屋さんでパラパラ捲ったときに、幕末の1840年から戦争が終わるまでを細かく分けて解説してあり、各章ごとに「ロシアから見た日本の姿」が書かれているのが特徴的に思えて、この本に惹かれてしまいました。

    この20年間追いかけている日下氏の著作の中で、何度か「日本は米国以外には戦闘で負けたことが無い」と言い切っていたのが印象に残っていました。この本では私にその解答らしきものを与えてくれたように思います。

    また歴史を見るときに、各々の国力は現在の観点から見るのではなく、当時の視点で見るべきですが、この本ではそれらを踏まえて書かれていたと感じました。

    今年も終戦記念日がやってきます、毎年8月を迎える頃に太平洋戦争に関する本を読もうと思いつつ、それが実現できずにいましたが、今年はそれがやっと叶いました。

    ただこの本の内容を全て鵜呑みにして良いかは判断がつかず、これとは反対の立場の本や、同じテーマを扱った本などを読んで自分の考えを固めていきたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日露戦争後の三国干渉(露独仏)時に、日本はイギリスとアメリカに助けを求めたが門前払いされた。イタリアが艦隊派遣を申し出てくれたが丁重に断った(P30)

    ・1900年に義和団が北清事変を起こすが、このとき、日英米露独仏墺伊の8カ国が連合軍を作って戦った。英露独仏墺の旧5大国と、のちの五大国になる、米日伊が含まれている(P32)

    ・日露戦争時の日露の国力比較は、最大動員兵力で半分、戦艦は半分以下、海軍力は3分の1、銑鉄生産量は44分の1、対米戦争とすら比較にならない圧倒的な差があった、これが対米戦争時に精神論を言い出すことになった(P40)

    ・日本は朝鮮半島の39度線より南を守るためにロシアと戦い、ポーツマス条約で39度線どころか、朝鮮半島全域と南満州、南樺太を獲得した大勝利であった(P42)

    ・今のイメージを当時のアメリカに投影して、アメリカがこの頃から強い大国だったと思い込むのは間違い、当時アメリカは大した軍事力を持っておらず、中米の小国をいじめる程度(P50)

    ・第一次大戦の日本の陸海軍は無敵の強さであった、陸軍は青島をあっという間に攻略、海軍はカナダから地中海までの地域を守っていた。そのおかげで第一次大戦は欧州大戦にとどまり世界大戦にならなかった。しかし日本海軍の貢献の意義をベルサイユ会議で全く主張しなかった(P63)

    ・日本は第一次大戦で世界帝国になったのでロンドン協定(1915)に参加した、これがあったのでベルサイユ会議に大国として呼ばれた(P64)

    ・ケインズが喝破したとおり、ベルサイユ体制とは、ドイツが賠償金支払いの約束を守ること、アメリカ経済が絶好調であることを前提にしている、第二次世界大戦は第一次大戦とは異なり必然であった(P71)

    ・1921年、ワシントン会議により4カ国条約(英米仏日)調印し、日英同盟破棄、1922年にはワシントン軍縮条約、9カ国条約締結(P78)

    ・フーバー大統領が海軍総司令官のプラット提督に「日本と戦争になったらどうなる?」と聞かれて、「イギリスがついてくれれば2年、単独なら4年でフィリピンを取り返せる」と答えた。日本が勝てっこない巨大なアメリカに立ち向かったというのは、少なくとも満州事変のころまでは成立しない(P97)

    ・中国でスターリンが注目していたのは蒋介石、毛沢東はスターリンから見れば軽い存在、毛沢東は1932年に対日宣戦布告をしているがソ連は認めていない。日本も瑞金政府の宣戦布告は届いていないとしている(P106)

    ・ヒトラーだけが独裁者として強調されるが、ソ連のスターリン、トルコのケマル、ポルトガルのサラザール、更には、ユーゴやブルガリアでも国王独裁を始めていた(P108)

    ・イタリアは1935年、18万人の戦車兵がエチオピアの現地部隊3万の弓兵に負けてしまった、そして毒ガスを使用して、翌年、国際連盟の侵略認定と経済制裁決議に反発して脱退している(P118)

    ・ソ連のフィンランドへの侵略に対して、英仏はソ連を国際連盟から除名をしたが、軍隊を送って助けることはしなかった(P137)

    ・日本の満州事変は、イタリアのエチオピア侵攻、ソ連のフィンランドへの冬戦争と違って、侵略認定されていないので、外交の余地はあった(P141)

    ・三国同盟を残しつつ、ドイツとだけ縁を切る手もあった。三国といいつつ、クロアチアやハンガリーなど、ドイツが征服した国がみな入っているので、他の国に不誠実にならない(P165)

    ・アメリカにはオレンジ計画があったが、ほかに、レッド・ブラック・パープル・レインボーといろいろある(P175)

    ・満州事変中の演習にてアメリカ海軍の7%の命中率は日本の3分の1であったが、世界二位であった(P176)

    ・日本は石油を求めていたので、オランダだけを攻めればよかった。付け加えるにしても石油を産するブルネイをもつイギリスまで。アメリカを相手にするのならフィリピンだけでやめておくべき(P188,191)

    ・史料の真贋を判断するには文書学の方法による、作成日・作成者・宛所(だれに向けて作られたか)・伝来の素因(その史料がどういう由来で今この場所にあるか)がポイントである(P196)

    ・珊瑚礁海戦とミッドウェーでの敗戦が日米戦の転機になっている、これからが消耗戦になっている(P201)

    ・特攻隊はキルレシオ(戦死者交換比率)が1対1以上を越えた唯一の作戦であった(P211)

    ・サイパン島陥落して大本営から瀬島龍三がいなくなって堀栄三が作戦を立案するようになって、ペリリュー・硫黄島・沖縄の3回で日本軍は突如善戦するようになる、島の中央の山にこもれ、と指示をだした(P214)

    ・日本は大陸で負けていないどころか、大東亜戦争は対米戦争以外は全戦全勝であった。大東亜戦争の実態は、日本対米豪連合軍で、イギリスは植民地のオーストラリアよりも格下。日本は、イギリスとオランダに対しては戦勝国(P220)

    2014年8月10日作成

  • 大東亜戦争を批判する人は多く、じゃあその時に何が他にできたのかって言う問いに答えられるのかと思っていたんだが、他に選択肢が、もっといい選択肢があったかもしれない。
    それは、戦争を回避できたと言うことではなく、少なくとも対米戦争は避けられただろうと。
    詳細を自分で調べたわけではないので一面ではあろうが、真珠湾奇襲の瞬間に日本の壊滅が決まった。
    うーん。
    戦争とか戦術とか、色々と難しいんだ、本当は。
    上層部が本当に問題あっても、現場が鬼強かったから、逆にこんなことになったか。

    いずれにしろ、日本としてきちんとあの大戦を検証していないことは大問題であろう。

  • ソ連の目線も交えながら、大東亜戦争を戦った日本の事を考え直そうという本。
    「当時、日本にもアメリカにも、ソ連の工作員が政府中枢だけでなく様々な所に入り込んでいた」
    こういう事を言えば、一昔前には「陰謀論だ」と一笑に付されていたでしょうが、ソ連崩壊からだいぶ時間が経過した現在では、様々な文書からソ連のスパイの暗躍は明らかになっているようです。

    因みに日本共産党というのは、治安維持法から宇都宮健児の都知事選まで、常にフロントなのだそうです。
    だから、共産党が壊滅した所で本体は痛まないと。
    ヤクザのフロント企業そのものだと。
    共産党の一般党員の話では、真の党員が誰かという事は、一般党員には教えてもらえないそうです。
    映画監督の山田洋次氏が党員なのかどうかも、わからないと。
    また、民進党の議員ではない幹部にも共産党寄りの人が相当入っていると。
    だから、輿石東氏は組織の裏切り者で、日教組最大の敵であると。
    日教組は日本を滅ぼしたい。
    輿石氏は日本を食い潰したい。
    日教組からすれば、
    「どうして輿石はちゃんと日本を滅ぼさないんだ」
    となり、輿石氏からすれば、
    「俺の利権を奪う気か」
    となると。

  • 勝てる
    勝てるぞ
    世界最強の軍隊で、大日本帝国の繁栄を築き
    世界平和を実現するんだ

  • 倉山節炸裂!
    氏には、太平洋戦争史観を国際政治学会とともに粉砕して欲しい。
    特に一次史料をもとに立論しているところが素晴らしい。一次史料に基づかないものは、今後の史料開示が待たれる、と明確に区分けしているところが専門家としての矜恃が強くにじみ出でいる。これは良著でしょう!

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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