レンタル執事 -オレが執事になった理由- (ビーズログ文庫 ふ 1-3)

著者 :
  • エンターブレイン
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757747838

作品紹介・あらすじ

友人も人生もお金次第!なIT企業社長の御曹司・天上天河。ところが、ある日突然会社は倒産、父親はお茶目な書き置きひとつで行方不明に-!!そんな天河に救済の手を差し伸べたのが、天上家の執事・江古田元蔵、通称"チエホフ"。天河は江古田が設立した執事派遣会社"バトラーシステム"で、執事見習いとして働くことになったのだが、そこに所属しているのはそれぞれ特技を持ったひとくせある執事たちばかりで-!?様々なメディアでお贈りする執事ストーリー、いよいよスタート。

感想・レビュー・書評

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  • 雑。増産体制の形骸的な。

  • 金持ちのぼんぼんの、天国落下、王道ストーリー。
    キャラは魅力的ですが、これも王道の範囲内。どこかでありそうな話、という印象が強かったです。
    話はテンポよく進みます。
    あとがきの内容が少し残念だったかも。小説を書くのに、冗談でも、あまり即決思いつき!というのを主張しない方がいいような気がします。
    これは受け取り方にもよりますが、私の印象としては、内容の薄さを暴露しているように感じました。(本当に薄いかどうかはまだ別です)

  • 回送先:目黒区立緑が丘図書館
    「この電車は快速急行藤沢行きです。次は新百合ヶ丘に停まりま〜す」
    本書を小田急線の快速急行で読んでいたためだろうか、一読して設定の杜撰さに唖然としたが、それと同時にある概念の暴力性をそっくりそのまま評者の前に見せ付けてしまったことが本書の大失敗の最大の要因だろう。

    たぶん当代少女文化に触れ親しむ人ならばそうでもないといった趣でサクサク読めるのだろうが、トチ狂ったメールフェミニストの前では「トラップ」と自爆を繰り返しているダメな作家としか見えてこないのである。
    ここでは大きく分けて3点に絞って書評を書くことにしよう。

    まず、執事というのは一種の派遣業だ(雇用関係が成立しますからね)。当然派遣切りもあれば(本書でチェスホフと呼ばれる老執事もやはり主人公の家から「派遣切り」されている)、不払い労働もある。なのに、「レンタル執事」って…タイトルから自爆しているのは聞いたことがない。そして気になるのは−これはこの作品のみならず、当代少女文化全体に言えてしまうのだが―この派遣執事業において支払われる労働対価はどのような形となってフィードバックされているのかという意識が甘すぎるということに尽きるだろう。

    2点目の問題。これは主人公が派遣される先でも見られるのだが、経済的なものに安住するという選択と引き換えに自分への徹底的な「おしおき」(自己相対化)が見られないこと。皮肉にも同僚にはあるはずのこの自己へのおしおきが主人公と老執事、そして派遣先の少年(どういう立ち回りになっているのかはあえて伏せる)にはお粗末なほど薄い。
    なるほど、主人公は「努力」とかそういったものが薄いということはコテコテに脚色された地の文で理解した。だが、そういうものでさえ現実世界を直視しない立ち位置からの言い訳にも似たものと受け止めざるを得ない箇所が多数あることは指摘する必要があるのかもしれない。

    そして、3点目。これは主人公の切り替えには嫌味を通り越して、問題意識を見事に逸らしたなという乾いた笑いしかできないこと、言い換えるならば主人公の思考様式である(結局それかと思わないでいただきたい)。確かに、「あたりまえ」とされたものが突然一変すればそれまでの思考が完全に大混乱に陥るのは私でも理解できる。だが、救いの手を差し伸べるには、「なぜ、そうなったのか」「なぜ、救いたいと思うのか」といったようにそれを誰かに説明する必要性が生じるとしたら、どうなるのだろう。そういうところで、主人公の楽観主義が、読者によっては受け入れるには難しい障壁となって立ちふさがるのではないか(という懸念は実際のものとしても読み替えられてしまうリスクがあることの裏返しでもある)。
    本来こうした役割は、ソーシャルワーカー(日本では社会福祉士にこの役回りが求められる)に期待される傾向にあるのだが、それを一介の老執事が行う意味があるとしたらそれはどこにあるのだろうか? 評者は彼がそのような行為を行わないほうがいいとまでは思わないが、行うとしてもそれには何らかの意味が内包されるべきだとは思う。

    そうして生じる概念の暴力性とは、経済的な差異でも、意識的な差異でもない。ただただこの作品全体を通じて流れている他者からのまなざしを排除していることだ。
    評者はこのような少女文化には触れている機会も多いし、独特のコードの世界を漂うことぐらいはできる。だが、本書の場合、そうした「漂う」読者さえも除外してしまうような―ヨーゼフ・ゲッペルスによるナチの宣伝のような―暴力性を帯びてしまったことが結果として他者からのまなざしを拒むばかりか、オーディエンスの離散を招きかねない結果になってしまったのだ。

    「まもなく新百合ヶ丘、新百合ヶ丘です。唐木田方面はお乗換えです。新百合ヶ丘の次は町田に停まります。 Next stop is Shin-yurigaoka. Please transfer for the Karakida deletion. 柿生・鶴川・玉川学園前においでのお客様お乗換えです。新百合ヶ丘で各駅停車本厚木行きに、相模大野で急行小田原行き、大和と終点藤沢で各駅停車片瀬江ノ島行きにお乗換えができます。多摩線は3番4番ホームです」
    ざっと眺めるのに約8分、問題の洗い出しで約6分。快速急行最長区間で終わってしまう悲しい運命に本書はあるといわざるを得まい。クロスメディアの展開など当分先延ばしにして、問題点を洗い出して再構築をするのが当面の解決策だと期待して止まない。

  • 県立図書館 2009/4/18

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著者プロフィール

◎藤咲 あゆなジュニアノベル作家。駒澤大学法学部政治学科卒業。日本脚本家連盟ライターズスクール所属中に、集英社の青年漫画大賞(現 YJ青年漫画大賞)原作部門で準入選し、漫画原作者としてデビュー。1994年には女性向け小説誌「Cobalt」ノベル大賞において、1994年下期コバルト読者大賞を受賞し、小説家としても活躍。おもな代表作『戦国姫』シリーズ、『新島八重ものがたり -桜舞う風のように-』(集英社みらい文庫)、『新・歴史人物伝 土方歳三』(駒草出版)ほか多数。

「2018年 『新・歴史人物伝 織田信長』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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