紙の月

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著者 : 角田光代
  • 角川春樹事務所 (2012年3月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411905

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紙の月の感想・レビュー・書評

  • なぜこんなことになってしまったのか?
    あの時こうしていなければ、あの人に出会わなければ、今は全く違っていたかもしれない。
    梅澤梨花さんはそう自問しながらも、その考えを虚しく感じている。
    それでもやはり私はここにたどり着いたのではないかと。

    この本を読んで感じたことはうまく言葉に出来ないことばかりだ。
    怖いとも思ったし、分かる気もしたし、そのすぐ後に理解出来ないとも思った。
    何人かの顔が浮かび、その人の記憶が蘇り、その日の感情が再現された。
    心地いいものも、そうでないものもあった。
    何かに気付けそうな、言葉に出来そうな気がして読み続けた。

    そして読み終わった時にふと寂しいなと思った。
    でもそれは読んでいる時に感じていたこととは全く違う。
    掴めそうだったものはいつの間にか消えてしまった。

    ただ寂しいなと思うだけ。
    この小説に出てくる人達は私と変わらないんだろう。私の周りの人とも。
    そのことが寂しい。

  • 面白かった!一気読み。私の中で角田作品ベスト3に入る作品。
    角田さんて本当に女の心の闇を書くのが上手い。
    お金を散在する恍惚感、分かるー!って思ってしまった。大抵の人なら途中でブレーキがかかるんだろうけど、物語ではどんどん歯止めが効かなくなっていく。買い物することでストレスを発散するって女特有なのか。
    不可思議だったのは光太の態度。スイートルームに連泊したりマンションや車を買い与える女が銀行でパートしてることに疑問を持たないのか。それとも確信犯か・・・。

  • 1月にNHKでドラマ化された【紙の月】

    夫との二人暮らしの中で何となく違和感を覚えることが多くなっていた梅澤梨花(原田知世)は若葉銀行でパートとして働き始める。
    超が付くほどまじめで貞淑な妻だった梨花が横領事件に手を染める。
    彼女を横領事件へとかきたたせたものとは…

    このドラマかなり好きでした。
    主演の原田知代さんは相変わらずキュートだったし。
    相手役の満島真之介くんは可愛かったし…(笑)。

    これは是非とも原作を読んでみなくちゃ~と、軽い気持ちで読んでみたら面白かった!!

    原作を読んでみて思ったこと。
    ドラマ化や映画化されると「原作と違うやん!」とがっかりすることも多い中、ドラマ【神の月】はかなり原作に忠実でありつつ、ドラマとして秀逸だったということ。
    (あくまで個人的感想ですが…)

    ドラマでは梨花が逃亡した国を明確にしていませんが、映像から「タイだろうなぁ~」と思っていました。
    原作を読んでみるとやっぱりバンコク、チェンマイでした。
    ちょっとうれしく思ってしまう不思議(笑)。

    もう一度、ドラマを見たくなっています。

  • ひと一倍正義感の強い平凡な主婦、41歳の梅澤梨花が何故何故と考えさせられるストーリーだった。
    わかば銀行の契約社員、最終的には約1億円を横領して海外に逃亡していく中で、本人もひたすら過去を振り返る。
    夫婦間の価値観?大学生の光太との出会い?ボランテアにも力を入れていた若かりし頃、お年寄りに親切で優秀な社員がと思う時、切なくって切なくって。
    堕ちるときは、何でもない心の隙からとんでもないことになるんだなーと悲しいストーリーであったが角田さんの描写力に引き込まれる作品でもあった

  • 今まで理解できなかった”女子行員による大金の使い込み事件
    主人公は小さな満足感を積み重ねてどんどん落ち込んでいく
    あり得ないことなのにまるで自分の心の中にも同じ落とし穴があるようで怖い

    別れた娘の物欲を断ち切るという苦しい選択をして 落とし穴に落ちずにすんだ最後の友人の項で救われた

  • 最後はちょっと突き放された感じ。この状態のまま終わるとは思わなかった。最終的にどうなったのか、最後をきっちり書いて欲しかった。犯罪がエスカレートしていく中で、そこを楽しみに読んでいたのでがっかりした。

  • 今年ドラマ化したのを観たら面白くて、今度は映画化するからその前に原作を、と。
    主役の梨花を中心に、40代女性の登場人物が数人出てくるのだけど、みんなどこか鬱屈したものを抱えてて、そこから抜け出したいけど抜け出せないもどかしさや閉塞感がすごくリアルだと思った。
    若い男に走ったり、買い物に走ったり、節約しすぎることに走ったり。それで自分の“何か”が埋まるわけではないのに、そこに走らずにはいられない。
    過剰に見える行動も、犯罪も、実は自分のすぐ隣にあるのかもしれない。

    一般女性が抱えるストレスや鬱屈を描かせたら角田さんの右に出る者はいない、というイメージ。
    この小説はやや極端ではあったけれど、前に読んだ対岸の彼女の「わかる!」感はものすごかった。

  • 泣きながら本を読むことはよくあるけれど、
    怖くて泣きながら読んだ本はこれが初めてだった。

    怖かった。

    梨花の、「私を早くみつけて」と絶望にも近い気持ちでの言葉。
    梨花を軸に、他の登場者も全て早く見つけてほしい、欲しかったが共通しているのだと思う。

    女性はもしかしたらいつでも、「早く私をみつけて」欲しいと思っているのかもしれない。
    その願いの多くはかなえられず、いろんな形となって消化されていく。
    何かを代替にし落ち着かせたり、なかったことにし自分の奥底にしまいこんでみたり、
    表面的な部分だけでも暴力的に表現してみたり。

    でも、かなえられなかった、消化しきれなかった片鱗は時間がたっては溜っていき、別の形になっていくんだと思う。

    見つけてもらっていたら梨花は違っていたのか?見つけてもらっていたとしてもそれは、見つけられることが続いていかないと行かない。どうして、見つけてもらう事なんてありえないという考えにならなかったのだろう。

    見つけてもらえることなんて、奇跡のようなことだと私は思っている。
    ほんの一瞬見つけてもらっても、次は見つけてもらう事なんてないんだと。

    のめりこんで読めた。
    角田光代さんって、本当にうまいと思う。 横領のシーンなんて怖くて本を遠ざけて、ページを手早にめくってしまっていた。速読してしまった。怖くて怖くて。
    怖くて怖くて、震えながら泣きながら読んだ。
    読み終わった後も、しばらく怖くて泣いていた。

    見つけてもらえないことにフォーカスしたら、私もこうなるんだろうか?
    見つけてもらえるという願いを持たなくなって既に長い時間が経っている。あの時、このあきらめの気持ちは自分に何かをもたらすのか、相手に何かをもたらすのかとずっと考えてきたけれど、それは、
    見つけてもらえた瞬間に素直に感謝できることなのかもしれない。
    それは恋愛の愛情を超えたものだと思う。

    恋愛になったらまた別なのか…・。

  • パート先の銀行から1億円もの大金を着服し、逃亡。
    読む前に知り得ていたざっくりしたあらすじから、てっきり「八日目の蝉」的な犯罪・逃亡ものかと思っていたが、予想とはちょっと違った。
    罪を犯してからの逃亡場面から始まるけれど、どうしてヒロイン梅澤梨花がそのようなことをするに至ったかが物語のメインで、梨花、彼女の同級生の木綿子、かつての彼の和貴、友人の亜紀と、それぞれの視点から語られていく。1986年に結婚し、ささやかでも幸せな暮らしをしていきたかったであろう梨花が、夫との結婚生活に小さなすれ違いを感じ始め、銀行のパートに就いてから、彼女の人生の歯車はゆっくり狂っていく。年下の学生・光太と出会い、些細なきっかけから「横領」を罪とも思わなくなってきた梨花の壊れていく金銭感覚。
    転落していく梨花の時代設定も上手いと思った。結婚したのはバブルの頃。働く妻を何となく見下す夫も、この時代の男性だからかと思えなくもない。ヒロインの抱える「空虚」さや、ヒロインが恋する若い男に漂うルーズさ、逃亡先のアジアの描写が90年代の角田作品を彷彿とさせ、事件性を絡めながらハラハラさせられるサスペンス的な展開は、近年の作風を感じさせ。
    そして、梨花のみならず木綿子も和貴も亜紀も、人生を「お金」に振り回されていることが徐々にわかっていく。買い物依存症の亜紀が感じていた「何かを手に入れ損ねているのではないか」という得体のしれない不安は何となく理解できる。自分自身、心の隙間を埋めるようについつい散財しては自己嫌悪に陥り、主婦の木綿子のように、スーパーの底値を調べてちまちまと節約をしてみたり、その繰り返し。誰もが大なり小なり「お金」に振り回された経験を持つのではないか。
    だからこそ、梨花の行いも責めきれないものがある。転落するかしないかなんて紙一重なのではないかと。逃亡した梨花の年齢が丁度今の自分と同じということもあり、自分と重ねては色々とやるせなかった。どの登場人物に対しても、100%共感はできないけど、嫌いになり切れないのである。良心の呵責に苛まれ、それぞれの心の弱さから悲哀が滲み、それが痛々しく、切ない。
    苦々しい思いには捉われたけど、自分の足元を見つめ直すきっかけにはなった。角田さんがドラマ化記者会見で「たくさんお金を使うことに慣れていないので、“ザル”ですけど破たんはしない」と述べていたが、私も同感だ。結局のところ小心者なので、大胆な散財はできないだろうけど、お金にまつわる懊悩は続くだろう。生きていれば。

  • 人には必ずと言っていい程、“属性”がある。学生であったり、誰かの父や母であったり、、。
    その“属性”を全て取り除いたところに丸裸の本当の自分がいる。
    そこに辿り着くためには何かを得たり何かを手放したりしなければならない。

    この本を横領して逃亡する女の話と表現するにはあまりに短絡的だと思う。

    2013.9.27読了

  • この人の文章力というか、リアルに描く力は本当にすごいと思う。
    人が道を踏み外していく過程が、全く違和感なく、誰にでも起こりうることなんだということを思い知らされて、心底怖くなった。

  • 加速する焦燥感や止まらない衝動が悲しい。
    彼女の、梨花の一番幸せだったときはいつだったのかな、と思う。
    中途半端に優しい人は、きっと苦しむ。
    その優しさのせいで、誰にも疑われず、見つけてもらえなかったのかもしれない。

  • 夫との生活にズレを感じ満たされない気持ちの拠り所として年下の男に溺れてしまう梨花。
    遂には勤務先の銀行の金を横領してしまい、その額は自分の力ではどうしようもないくらい膨らみ雪だるま式に梨花はどんどん堕ちてゆく。
    梨花の事件を中心に描く傍ら、同じく金に翻弄される男女を描いてゆく。
    新年初っぱなから読むにしてはかなりダークな世界。
    一見 あり得ないと思える梨花の事件も
    実はちょっとした運命のイタズラで誰もが経験しうる紙一重なことだと感じさせられる。
    角田さん、久々だったけど相変わらず読ませるなぁ。

  • 読みながら、ドキドキしてしょうがなかった。
    まるで、自分が犯罪を犯しているかのようだった。
    ページをめくる指が震えているのじゃないか、と思うほどだった。

    こうやって、世の中のオンナは若いオトコにカネを貢ぐのか。
    ・・・怖い。

    こうやって、買い物依存症になっていくのか。
    ・・・・怖い。

    自分には絶対関係ない、と思ってた。
    でも、自分にもありうることかもしれない、
    今、そう思い始めてる。

  • お金って怖い。欲って怖い。
    どちらも身近にあるので時たま信じられないような事件が起きる。
    全く別世界ではなく、すぐそこで起きるかもしれない。
    自分も、逆らえずおかしくなってやってしまうかもしれないと思うと本当に怖い。
    状況がわからなくなる怖さ。
    行動の善悪が麻痺する怖さ。
    ぞわっと恐ろしい小説だ。

    以下、ネタバレあります。
    銀行の契約社員である梨花が1億円もの横領をして海外逃亡しているところから話が始まる。
    初めはつましい主婦だった。
    丹念に日常描写が書かれる。角田さんの文章にはまり込んでしまう。
    梨花の生真面目な生活ぶりに、共感したり同情したり…。
    自分とは違うけれど場面場面で気持ちがわかるのだ。
    働き出し、仕事の成績もよく、美しく若々しかった梨花。
    ある日、ささいな違法行為をおかしてしまう。
    そこからじわりと何かが変わり始め、ちょっとした環境の変化が重なり、犯罪の自覚が無いままに、いつでも戻せると思いながらどんどん深みにはまっていく。
    このあたりから梨花についてゆけなくなる。
    高価な買い物をやめられない梨花は常軌を逸していく。
    自分でお金を遣っていながらも、抗えないまま支配されているよう。
    クレジットカード、エステ、マンション、自動車と支払いに追われ、資金繰りに奔走していった梨花は情けないほど哀れだ。
    さまよう亡者を思わせる、悲惨な心象。
    ここまで書いてくれるとは、さすが角田光代さんです。
    読み終わってプロローグを読み返してみると、海外逃亡した梨花の開放感、万能感がとてもちっぽけな薄っぺらいものに感じた。
    梨花は自分の人生を自分自身で生きているといえるだろうか?
    お金に支配されることでいえば、物語に出てくる木綿子も牧子も亜紀もそれぞれ示唆的で面白かった。
    彼女たちのその後を読んでみたい。
    梨花の裕福な子供時代、子供自身が望んでいないのに多くの贅沢が与えられていたことなど人格形成を阻害したと思わずにはいられない。
    まだ余韻があり、感想はまとまらないけれど面白かったです。力作。

  • 犯罪が起こったとき、周囲の人々は決まって
    「そんなことをする人には見えなかった」
    という。
    この本も、主人公はごく普通の主婦。
    家を整え、夫にお弁当を持たせて送り出し、買い物に行って夕食を作る。
    そんな暮らしをしていたはずなのに、ほんのわずかの歯車の軋みによって、少しずつ、少しずつ事態は変化していく。
    最初は本人も気がつかないほどのものだったのに、終盤には雪崩のように彼女の生活をのみこんでいく。
    その描写が圧巻。
    誰にでも起こり得ることなのだ、もしかしたら私にも、と思わせる筆力がすごい。

    ただし、救いはない。主人公の周囲に描き出される、お金に振り回される人々すべてに、救済は提示されない。
    なので後味は悪い。自分自身がお金というものにからめとられてしまったような、息苦しさだけが残った。

  • 4.0 宮澤りえ主演で今秋上映される映画の原作です。『八日目の蝉』に勝るとも劣らない秀作だと思います。主人公は一見華があるけどどこか陰がある美人。正に宮澤りえ。映画も楽しみです。

  • 箇条書きなその文章が、梅澤梨花の取り扱い説明書を読んでいる気分にさせる。
    一節一節を読むごとに彼女の情報が増えていった。

  • 八日目の蝉は赤ちゃんを誘拐するけど、これは男をお金で囲う話。少し似ている。夫婦交渉がないとかボランティア精神だとか動機についての説明が詳細で犯罪者の心理状態が淡々と書き込まれている。八日目の蝉にも共通するけど、犯罪者を一方的に責めるような視点ではなく、こうした罠は誰もが陥る可能性があるのだと警鐘を鳴らしている。
    主人公の女はホストへ貢ぐようにボーイフレンドへお金を注ぎ込み、石が転がり落ちるように道から転落していくわけだが、一夜だけの関係にしておけばまだ救われたということか。否、一度関係を持てばそんな事で済むわけがないということなのか。男女の関係は微妙で複雑で計算不可能なのが怖い。欲を言えば、主人公がそれほどまでにボーイフレンドにのめり込んでしまった理由がもう少し欲しかったかな。

  • 年下の男のために1億のお金を横領した女。
    タイへ逃亡した彼女は・・・

    主人公が堕ちていくさまは、あまりにも自然で
    読んでいてゾっとしてくる。
    誰の目の前にも暗い罠はあるのだろう

    他にも、買い物依存症やお金への渇望、節約
    あやうい女性たちも。

    どの女性も、あまりにもごく普通な存在

  • 平凡な主婦から銀行のパートタイマーになり、横領して若い男に貢ぎ、南国に逃亡するまで。

    金金金。
    なんと魅惑的で破滅的なお話。
    お金を使うことは確かに楽しいけれど、見境がなくなったら病気だね。

    主人公の梨花が堕ちてゆく様があまりに自然で鳥肌が立った。人間堕ちるときは簡単なんだなぁ。

  • 映画化される話題作ではあるが自分にとっては平凡な印象。今の自分の感性と合わないということだと思う。

  • 胸が苦しくなる本だった。

    梨花を狂わせたのは、多分、お金でも光太でもない。
    ただ、今までの「つまらない自分」とは正反対の、自由で理想的な人生を手に入れようとしただけなのだと思う。
    光太とともにお金を使うことで得られる、自分からの脱出と自由な人生。
    それらは結局は偽物なのだけど、梨花の願望はきっと誰もが感覚的に理解できることだろう。

    「本当(理想)の自分」という虚像。
    「自分」とは何者なのか。

    映画も小説も両方よかったけれど、紙の月というタイトルはやはり小説にぴったりくると思った。

  • 梨花は少し私に似てると思った。
    それは主人とあまり話し合わないところが。そしていつも何かが違うと感じるところが。

    そしてまさか自分でもこんな事になるなんて思わなかっただろうな。
    いつか返せるなんて絶対無理。坂道をどんどん転がってしまったね。
    お金って本当に恐ろしい。

  • 角田さんの描く女性の中に必ず私の一部がいるような気がする。心の奥にしまっておきたい部分を提示されているようで、一気読みができなかった。
    ひとそれぞれだから。とか普通が一番!とか言うけど、実はみな心の中にいろんなものを抱えてて、それをうまく整理して生きているのに、「ふとしたきっかけ」ですべてが狂ってしまう。
    彼女たちはこれからどう生きていくのだろうか。
    私の中にも梨花がいる。

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紙の月の作品紹介

わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。
梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。彼女は、果たして逃げ切れるのか―?
あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な、角田光代、待望の長篇小説。

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