紙の月

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411905

感想・レビュー・書評

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  • ただ好きで、ただ会いたいだけだった―――
    わかば銀行の支店から一億円が横領された。
    容疑者は、梅澤梨花四十一歳。
    二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。
    真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。
    そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった・・・・・・。
    あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、傑作長篇小説。
    第二十五回柴田錬三郎賞受賞作。

  • よかった。どんどんはまっていく姿にドキドキした。

  • 2013.10/19 角田さんの紡ぐ物語は、一見すると自分とはかけ離れた女性象を描いているのに、女性心理の暗部の普遍性をついているようにも感じられて、つまり自分も同じ罠にはまってしまいそうな不安をどうしようもなく掻き立てられてしまって、続きを読まずにいられなくなる。「どうしてこんなところにいるんだろう」感のデジャブ。

  • 犯罪が起こったとき、周囲の人々は決まって
    「そんなことをする人には見えなかった」
    という。
    この本も、主人公はごく普通の主婦。
    家を整え、夫にお弁当を持たせて送り出し、買い物に行って夕食を作る。
    そんな暮らしをしていたはずなのに、ほんのわずかの歯車の軋みによって、少しずつ、少しずつ事態は変化していく。
    最初は本人も気がつかないほどのものだったのに、終盤には雪崩のように彼女の生活をのみこんでいく。
    その描写が圧巻。
    誰にでも起こり得ることなのだ、もしかしたら私にも、と思わせる筆力がすごい。

    ただし、救いはない。主人公の周囲に描き出される、お金に振り回される人々すべてに、救済は提示されない。
    なので後味は悪い。自分自身がお金というものにからめとられてしまったような、息苦しさだけが残った。

  • 4.0 宮澤りえ主演で今秋上映される映画の原作です。『八日目の蝉』に勝るとも劣らない秀作だと思います。主人公は一見華があるけどどこか陰がある美人。正に宮澤りえ。映画も楽しみです。

  • 若い彼の笑顔が見たくて、そばにいたくて、つなぎとめておきたくて、不正を重ねる。最初はちょっと借りるだけ、きちんと返すつもりだった顧客の金。お金こわいとかそんなんじゃない。さみしさをお金で埋める異常さに気がつかず恍惚とする登場人物だち。とてもこわくてせつない。

  • 箇条書きなその文章が、梅澤梨花の取り扱い説明書を読んでいる気分にさせる。
    一節一節を読むごとに彼女の情報が増えていった。

  • 八日目の蝉は赤ちゃんを誘拐するけど、これは男をお金で囲う話。少し似ている。夫婦交渉がないとかボランティア精神だとか動機についての説明が詳細で犯罪者の心理状態が淡々と書き込まれている。八日目の蝉にも共通するけど、犯罪者を一方的に責めるような視点ではなく、こうした罠は誰もが陥る可能性があるのだと警鐘を鳴らしている。
    主人公の女はホストへ貢ぐようにボーイフレンドへお金を注ぎ込み、石が転がり落ちるように道から転落していくわけだが、一夜だけの関係にしておけばまだ救われたということか。否、一度関係を持てばそんな事で済むわけがないということなのか。男女の関係は微妙で複雑で計算不可能なのが怖い。欲を言えば、主人公がそれほどまでにボーイフレンドにのめり込んでしまった理由がもう少し欲しかったかな。

  • 年下の男のために1億のお金を横領した女。
    タイへ逃亡した彼女は・・・

    主人公が堕ちていくさまは、あまりにも自然で
    読んでいてゾっとしてくる。
    誰の目の前にも暗い罠はあるのだろう

    他にも、買い物依存症やお金への渇望、節約
    あやうい女性たちも。

    どの女性も、あまりにもごく普通な存在

  • 横領したお金の感覚がだんだんと薄れて行き、大学生との愛に溺れて行く。横領がばれるのではないかという、ジリジリとした怖さ。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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