カード・ウォッチャー

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 303
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412131

作品紹介・あらすじ

ある日、遅くまでサービス残業をしていた研究員・下村が起こした小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。突然決まった立入検査に、研究総務・小野は大慌て。早急に対応準備を進めるが、その際倉庫で研究所職員の死体を発見してしまい…。現役サラリーマンが描く、新感覚ロジカルミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか結末が予想できずに面白かったです。
    悪人ぽい悪人が出てこないところも、機転の利く働きをする奴がいつも出てくるとこも好きです。

  • 退社時刻はみんな揃って17:55、入社以来そういうものだと考えていた塚原ゴムの研究室の面々。
    ある日、遅くまでサービス残業していた研究員・下村の座席の背もたれが破損してひっくり返り、手首に軽い怪我をしてしまう。
    妻が知人にそのことを話したところ「労災では?」と言われ、それがきっかけで労働基準監督官による臨検が入ることに。
    大慌てで対応をすることになる研究総務の小野だったが、そんな最中、倉庫に研究所職員の遺体を見つけてしまって……

    労働基準監督署の切れ者監督官・北川がホームズ役のミステリ。
    労災隠しから、臨検に入りサービス残業の実態解明に入るのがメインですが、その最中で起こった不審死が元で、対応する総務担当の下村とその上司米田が奮闘します。
    臨検中に死体が見つかってしまうと過労死が疑われるかもしれないと思い、必死に隠すのですが……

    石持さんの作品にしては毒が少ないかなという感じですが、基本的に「悪人らしい悪人はおらず、善人らしい善人もいない」というらしさの出た作品。
    労基署の監督官が探偵役ということもあって、続編が見てみたい気もしますが、なかなか難しいかなぁ。

    カバーに穴が空いていて、カバーの裏側に書かれたタイムカードがちらちらと見える装丁がなかなか素敵です。

  • 初・石持 浅海
    「特殊な状況下や斬新な設定での論理的推理に定評がある。」らしい。

    (株)塚原ゴムの研究所で、残業中の社員が伸びをしたら椅子の背もたれが突然ぶっこわれて、怪我をする。
    といっても割合に軽症で済んだのだが、労災だと労基署に訴えがあったことから、職場に臨検が入り、まさにそのタイミングで、一人の社員が社内の倉庫で死体で見つかる。

    過度のサービス残業がベースにあるのは、昨今のブラック企業問題を反映しているのでしょう。そこのところは共感を得やすいし、真相究明への過程はしっかりした構造物を思わせる明解さを感じます。
    が、キャラが弱いかなぁ......
    洞察力にすぐれた労基署署員を際立たせたかったようにも思うのですが、台詞が優等生なのでしょうか。
    ダンダリンと重なったのもアンラッキーかな。

  • 労働基準監督署の役人・北川が探偵役という風変りな設定の倒叙ミステリーです。
    北川が来るということで慌てて準備をする総務が、偶然職員の死体を発見します。サービス残業の発覚を恐れ死体を隠蔽する総務と、労働基準監督官との行き詰る攻防が繰り広げられます。「労災」という発想がないのはどうかと思いましたが十分楽しめました。
    ややあっさりしていますが、サービス残業や労災など身近に感じるテーマをミステリーの題材に使うアイデアは評価に値すると思います。

  • タイトルのカードはタイムカードのことで、労働基準法?を破ってしまったとある企業が監督官?の査察を受けることになるんですが、来る直前に社員の死体が発見され……
    なるほど、そういうことか、そういえば伏線はられてたなあ。という結末でした。おもしろかったです。

  • 労災を確認しに来るはずの労働基準監督署の職員にサービス残業の実態を知ってほしいと考えた一所員のささやかな仕掛けが・・・
    次々と思考を巡らせ畳みかけるように整理されてゆく事実、仮定、推測。
    公務員としての義務も果たし、尚且つ人間味あふれる署員もいい人ですし、研究所所員として上を立て、部下の女性をを守りながら論理を構築してゆく彼も素敵です。解決してゆく過程が爽快です。

    この本は石持さんの持ち味が余すところなく表現されてます。

    誰も悪くないのに、死体が一つ。当て馬とされた死体には申し訳ないのですが、面白い小説です。

  • とても珍しい労働基準監督官が探偵役となった労災ミステリー。
    北川と介良のコンビがいい感じ。シリーズ化するのかな?

  • 労基ミステリーとでもいうのだろうか。
    サービス残業が当たり前になっている研究所で起こった小さな労災。総務が労基の臨検に備えて準備をしていたところ、不自然な状況で死んでいる社員が発見される。過労死が会社に与える影響を考慮し、労基をやり過ごそうとするが…。
    後半のどんでん返し展開はこの作者ならではだと思った。

  • ある日、遅くまでサービス残業をしていた研究員・下村が起こした小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。
    突然決まった立入検査に、研究総務・小野は大慌て。
    早急に対応準備を進めるが、その際倉庫で研究所職員の死体を発見してしまい…。
    (アマゾンより引用)

    こんだけブラックな会社なのに、社員が不平も言わず働いてることにビックリする。

  • あれ、結構前の本なんだな。図書館で偶然見つけて借りたもの。表紙にパンチ穴が開いてて、下に何か書かれてるけど、図書館の本でカバーがされてるから中が見えないのが残念。石持浅海らしい、論理攻めの暴き。でも過労死じゃなくて事故か殺人か、ってのはびっくりした。しかし、切ない話だった。相手を思って良かれと思ってやったことでその人が死んでしまうなんて。ほんと生きていかれないほどのショックだ。今はこんな会社がないことを願う。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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