勇者たちへの伝言 いつの日か来た道

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著者 : 増山実
  • 角川春樹事務所 (2013年12月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412315

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勇者たちへの伝言 いつの日か来た道の感想・レビュー・書評

  • 関西で活躍する放送作家、そして琴線に触れるエッセイの書き手、増山実さんが初めて小説に挑んだ。デビュー作「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」は、第19回松本清張賞最終候補作品を改題したもの。
    舞台は関西、西宮北口周辺の過去と現在。キーワードは阪急ブレーブスと野球。家族の秘められた歴史が紐とかれながら、物語は進む。史実とファンタジーが融合した、実におもしろい作品。
    最初の15ページを読んでいる時に、この小説がその後、どんな展開をするのか、予想できる人はほぼいないだろう。ページをめくるたびに、次はどうなる、次はどうなるとドラマのスピードはどんどん上がり、舞台は西宮北口から海の向こうへも広がり、一気に319ページを読み終える。
    40数年前の西宮球場、阪急ブレーブスの試合を見ていた観客の数人が、どんな勇気(ブレーブ)をそれぞれの人生で発揮したのか。これを読んだ後は阪急電車「西宮北口」駅の通り方が変わるかも。是非一読を。

  • 寡黙で普段は8歳の息子と交流も薄かった父親が素っ頓狂な事を言い出す息子の言葉を数分で信じ半生を語り出す。

    人を信じたばかりに収容所に入り大変な目にあった二人が半日で相手を信じ洗いざらい自分の生い立ちを語る。

    二十代で日本を離れた老婆が日本のラジオ放送を聞いていたと言うだけで現代的な言葉でまるで小説のような長文の手紙を書き綴る。

    魔法の様な偶然が一杯。

    無理でした。

  • 一気読み。阪急ブレーブス、北朝鮮、戦後史、見事に絡み合ってます。傑作だと思います。

  •  小説の職人さん。そんな言葉を贈りたくなる。
     ファンタジー。壮絶な戦後史。阪急ブレーブス。溶け合って、読み終わった後、心明るくじんわりとする。
     

  • 50歳になる放送作家の工藤正秋は、阪急神戸線に乗車中、車内アナウンスの声が「いつの日か来た道」と聞こえて電車を飛び降ります。それは「西宮北口」を聞き間違えただけ。けれど、小学生の頃、西宮球場でプロ野球を初観戦した日を思い出し、球場跡地に建つショッピングモールへと足を踏み入れます。シネコン入り口横にひっそりとたたずむ阪急西宮ギャラリー。そこで回想にふけるうち、正秋は当時にタイムスリップし……。

    ショッピングモールの名前は出てきませんが、もちろん阪急西宮ガーデンズのこと。5階のTOHOシネマズ西宮で映画鑑賞前に何度か立ち寄ったギャラリーも懐かしくて、一気読み。

    当然野球の話も出てきますが、普通の野球小説とは趣が異なります。正秋の父親・忠秋は能登の貧しい農村の生まれで、北海道の開拓地を経て西宮へ。そこで出会った在日朝鮮人の女性・安子は、幸せな暮らしが待っていると信じて北朝鮮へ。タイムスリップしたことによって、今は亡き父親と彼をめぐる人びと、そして彼らを勇気づけたプロ野球、阪急ブレーブスの面々と出会います。

    実在の選手の名前がたくさん出てくるばかりではなく、物語の一員となって登場します。正秋がまず会いに行くのは、数々の代打記録を持つ高井保弘選手。ロベルト・バルボン選手が出てきたときには、本の中の安子に声をかけたくなりました。「チコさん、今も日本にいるよ。福本がしょっちゅうチコさんの話をしてるよ」と。

  • 心を鷲づかみにされるような本とはこの本のことだろう。死ぬまでに読むべき本の一つになるだろう。何度泣いたかわからない。読み進むたびに阪急ブレーブスの本拠地の地名が出て来る。その地名を読んだだけで条件反射のように泣いてしまうのだ。
    私は大阪に住んでいるので少しは阪急ブレーブスについて馴染みがある。リーグ優勝した瞬間、梅田の阪急百貨店前に巨大なブレービー君が飾られセールを告げてくれるのだ。野球には興味なかったがブレーブスの優勝は客にとってありがたかった。日本シリーズで優勝したときはマーチングバンドが梅田の駅前を行進したらしい。そのブレーブス球団を軸にさまざまな人生が交差する。その人生は客観的に見れば悲惨なものだが、この本の中では宝石のようにキラキラと輝く人生に見えるのだ。心に「勇気・希望」と言う宝石を持っていれば、どんな人生でも素晴らしい人生になることをこの本は教えてくれた。

  • 知った地名に、思いがけず、出て来た勤め先。
    偶然だけど、それだけで愛着がわく。

    とってもよかった。
    まさかのタイムスリップで面白かったし、深いなぁ、と思う場面も。。
    阪急ブレーブスファンの方は是非。

  • 主人公が子供の時に亡くした父親と、大人になってから子供の時の自分にタイムスリップした話。読みやすく、深い話になるにつれてハマっていきます。ちょっと胸が痛い場面が多い。朝鮮人に対しての偏見をやめよと思いました。

  • 何の情報もなく読み出したため、とても衝撃的な展開でした。歴史の事実を勉強する機会になった上に、最後はしっかり感動させられました。この小説は「西宮北口」を「いつの日か来た道」と聞き間違えたところから生まれたそうです。

  • 人から進められて読んでみたが、すごく良かった。西宮球場の競輪は、組立てが大変そうな記憶がある。小説は、北朝鮮での話が切ない。ファンタジー的で好きだなぁ。

  •  勇者とは、昔の球団である阪急ブレーブスに絡むものだった。自分が生まれる前の古き野球界の話を軸に、不思議な時間経緯で話が進む。北朝鮮へ行ってからの話など、なかなかつらい記述もあったが、ぐっとくる話で没頭した。小説の形態をとってはいるが、登場する野球選手は実在だし(バルボンという選手は聞いたことがある。昔の学研ひみつシリーズの中で出てきたのを記憶)、歴史も多くの文献を参考に記されている。
     自分はどこの地に対して、この話の主人公のような気持ちを持つんだろうか?とふと考えた。

  • 私にとっての西宮球場は
    マイケルジャクソンがコンサートしたところ、
    なんだけど確かにブレーブスはあった。

    そう思うと西宮には二つも
    プロ野球の本拠地となる球場があったんだなぁと今更ながら思う。

    昭和30年代はきっと豊かではない物資、
    まだまだ戦後と言われる時代だったけれど、
    右肩上がりの景気に乗り、
    みんながとても希望に満ちていた、という風に理解している。

    そしてまた、
    時代に翻弄された人がたくさんいたのだ。

    時空を越え、距離を越えて人のいつか来た道が交わる、
    後半はとても、引き込まれた。

  • 昭和初期~戦後、野球をこよなく愛し、広めようとした人々、北朝鮮での輝かしい未来を夢見て祖国へ帰還するが、待ち受けていたのは過酷な運命でした。
    最終的には、登場人物の相関図があまりにもうまく行き過ぎていて、現実味が今一つ感じられませんでした。

  • 野球は全く詳しくない。ひと通りのルールは分かるしセパ両リーグの名称くらいなら認識している。某友人よりは遥かにマシなレベル。野球好きな人たちが多い環境だったからたま〜〜に球場まで試合を見に行ったこともある。でも1つのチームや1人の選手に夢中になったことは、多分ない。ましてや、何人もの人生が重なり合うような出来事は経験はない。


    50歳を過ぎ、公私共に宙ぶらりんな立場にある自分。やり切れなさを抱えた正秋の耳にふと聞こえてきた声。声に引きずられるように正秋はこの場所へたどり着く。当時の面影は微塵もない大型ショッピングモール、遠い昔、ここは野球場だったのだ。

    父が8歳の正秋を野球場に連れ出したのはたった1度。父は試合ではない何かをジッと見つめていた。正秋はこれを契機に野球に、阪急ブレーブスへとハマるのだが。

    父の年齢をとっくに追い越した正秋は改めて『阪急ブレーブス』の歴史と、当時35歳であった寡黙な父に隠されていた過去とたくさんの勇者たちを知ることになる。

    勇気を出せ、とひとに告げるには発する自らの勇気を試されているように感じた。覚悟が試されているような。

    人生のターニングポイントにはいろんな状況下があるのだろう。あるいはひとから、あるいは場所から。野球を愛した彼等を後押ししたのが野球の神様でありますように。

  • 1969年夏の西宮球場での阪急・西鉄戦から物語は始まる。単純な「昔、阪急ブレーブスというチームがあった!」ではなく、主人公正秋の父忠秋と安子の遠い昔の球場・日野神社での出会いと別れ、梶本・バルボン・高井たち懐かしの選手。「阪急」を繋ぎとして、北朝鮮への帰国家族の想像を絶する苦労と野球、キューバから日本に帰化したバルボン。中国で日本語ラジオ放送に耳を傾ける人たちなど、感動秘話がいくつも。終盤での安子からの手紙、主人公の応答は素晴らしい感動。私にとっても69年の阪急・近鉄優勝争いは忘れられない思い出であり、今も西宮北口周辺を徘徊することが多いだけに、身近な小説だった。「副題が西宮北口を連想させる掛詞であるとは、なるほど!オシャレ!」

  • 「いつの日かきた道」「勇気を忘れるな」

  • 過去と現在がリンクし、様々なことが明らかになっていく。ほっこりした気持ちになれる。

  • 日本のプロ野球にもいろいろな歴史があったことがわかった。北朝鮮のこともあまり知らなかったけど、今がどれだけ平和な時代なのかを感じた。久々に野球を球場で見たいなと思った。

  • 『空の走者たち』を書いた増山実さんのデビュー作
    主人公の正秋が好きだった阪急ブレーブスの
    ブレーブスって、勇者という意味なんだったのか
    時をさかのぼるという話は、『空の走者たち』と同じ
    ただ、正秋の年が自分に近い設定で
    歴史や人物が本当のことだということもあり
    事実に胸が苦しくなりながらも、
    夢中になって読みました
    前も思ったけど、読後にやさしい気もちになる
    好きな小説でした

  • 筒井康隆が褒めてた理由がなんとなくわかる。
    おもろいわ、ようできてる。

  • 「赤ヘル1975」のカープ、その日本一を阻止したのは、全盛期の阪急ブレーブスだった。さて、小説勝負はどうなるか?

    と、そんな野次馬根性丸出しで読んでみたけど、これ「赤ヘル1975」に負けない素晴らしい小説。

    ノスタルジーだけでなくファンタジーだけでなく、差別や社会での人間のツラさも、ベタかつ力技のクライマックスも、そして勇気もたくさん備えた大衆小説の傑作だと思う。

    どなたが読んでもオモロいとは思うが、特に関西、中でも阪急沿線在住の方にはぜひともお勧めしたい傑作小説である。有川浩もビックりなもう一つの阪急沿線物語が味わえる。そして、ヘイトスピーチや2ちゃんねるヤフーニュース、最近はミクシニュースのつぶやきまでに広がっている差別発言に辟易している人にも是非読んでもらいたい。

    能登出身のじいちゃんがいて、西宮今津に実家があったおかんがいて、バルボンさんと一緒のビルで仕事をしていて彼の関西弁をエレベータ内で良くきいたし、西宮球場解体前後の時期を西宮北口で働いていた俺にとっては相当に身近な小説であり、のめり込み度も尋常じゃなかった。この本、おとんとおかんにプレゼントしようかと思っている。

    星影の小径をYouTubeで聴きながら

  • 今はなくなってしまった「阪急ブレーブス」の思い出の中に主人公の子ども時代、家族、父親の歩んできた道等を織り交ぜた家族の歴史を語る小説。またその中で今なお遠い国、北朝鮮への帰国事業で北へ帰国した在日の人々がどのような暮らしを強いられたかなど、複雑なストーリーへと広がる。戦後の日本ではまだ豊かになる直前の時代から始まり、現在の繁栄へと続いていく物語でありながら、北は今なお当時と変わらぬ貧困と自由なき生活を送っているという事実もあることも語っている。きらびやかな現在の西宮北口と主人公が子どもだった頃のまだ「戦後」を感じさせた阪急ブレーブスが存在した西宮北口を対比させながらストーリーが進んでいく。著者自身が主人公と同じ放送作家で、実際に阪急に在籍した高井保弘氏、ロベルト・バルボン氏のインタビューも物語として描かれており、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションか不思議な気持ちにさせる小説である。また著者が私と同世代だということもあり、時代表現に郷愁を感じる部分も多々あった。

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勇者たちへの伝言 いつの日か来た道の作品紹介

仕事に疲れたベテラン放送作家が、ある日、封印されていた父の「秘密」に触れ…。リリカルな筆致が、過去の悔いや無念さえも温かな光で包みこむ、感動の人間ドラマ。

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道はこんな本です

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道の文庫

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