桜桃 (280円文庫)

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著者 : 太宰治
  • 角川春樹事務所 (2011年4月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435475

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桜桃 (280円文庫)の感想・レビュー・書評

  •  夫婦げんかの末に家から逃げ出してしまう小説家の主人公。家族から逃げる父親の姿は情けなくも映りますが、人間の弱い心をこんなにも赤裸々に描き出せることに感動して、愛おしくなってくるから不思議なものです。

     最後、酒場で独りさくらんぼを食べる主人公。ダメな父親ですが、人間としてはとても愛おしく思えました。まずいまずいと種を吐くのですが、それは精一杯の虚勢で、本当はおいしくてたまらなかったのではなかろうか、などと思いました。ダメな人間を書かせたら右に出る人はいないです。

  • 『桜桃』の、「子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親の方が弱いのだ。」

    ここの一言に全てがつまってるような気がしました。

    「と思いたい。」と、自分を納得させるような、正当化するような…本当はわかっている。「子供の方が親より大事」であるべきだということを。

    彼の、「親」としての責任と、「自己」としての主張が見事に集約されてるなと思いました。

  • 文章の美しいクズ、太宰治。好きです。

  • 皮膚と心が個人的には好きだな。陰鬱とした雰囲気のなかにも、最後にはパッと一筋の光が射すような物語

  • 一人称の文章が癖を持っていて、読みづらいと感じたが、読んでいくうちに引き込まれる感じだった。

    エッセイと詩と小説が交じり合った感じがして、面白いと感じた。

  • とても面白かった。
    どうして太宰さんはこんなに
    人が心の奥底に大事にしまって隠していることを
    こうもさらりと書いてしまうのか。
    個人的に皮膚と心がわりときました。
    この人男性なのにね、すごいよほんと。
    太宰が今尚これだけの支持を得てるのも解る。
    みんな自分が嫌いで、それでも優しくありたい。

    又吉のエッセイもすごく良かった。
    「底抜けに優しい」にじんときた。
    「誰かを無意識に傷付けてきた人」とかね。
    大事な一冊になりました。

  • 四作ともたいへん面白かった。素晴らしい!

  • 2017.8.1
    すごくよくわかる。最初は冗談で、互いが笑いあえる話ができるのだ。というかそれをするための探りあいがある。そして、あ、これで笑うな、と思ったら、その笑わせ方をする自分に自分を固定させる。そうして仲良しになる。しかしそれは上辺だけ、そういう上っ面な話に次第に、探りあいに、笑いによって忘れることができていた相手の仮面の向こう側が、気になってくる。そうして、少し真面目な話をしだす。もしくはその他人行儀さ、仮面の奥に怯えながら、そのまま関係を続ける、居心地悪く続ける場合もあるかもしれない。仮に、仮面を剥がし合うことに成功したとしよう。しかしそうすると今度は、対立がやってくる。私は後悔する。こんな批判を受けるなら、こんな怯えた心地になるのなら、聞かなければよかったと。しかしそれでももう、仮面の向こうへの不安は消えない。相手の心の不可知さへの不安と、聞いたら相手に否定されるんじゃないかという恐怖の間で板挟みになる。ここから出てくるのはルサンチマンで、相手の心の不可知を、不安と恐怖から脚色して、こき下ろし、クソ野郎だと断定して恨みつらみを持ってしまうか、その怒りを自分に向けて、俺は弱虫、臆病者、卑怯者と罵り、死にたくなる。やけ酒、まさにその通りである。
    孤独が、不安を呼ぶ。知りたいと思う。しかしその不安からの好奇心が、対立と恐怖を生む。その恐怖によって私は相手かもしくは自分を、恨む。これが私のこれまでの人生であった。なんとか、のり超えたいと考えている。太宰のいうように、圧倒的な自己肯定からものを言える人間を私はすごいと思いながらも、お前らは知らんだろう、と軽蔑しているところがあるので、そういう話し方はしたくない。しかしならば黙っているほかはないのだろうか。いや、違う。問うことである。相手への敏感な恐怖と不安はそのままに、訪ねること。判断しないこと。故に否定にもならない。故に対立にもならない。そして聞かれたら、答える。お互いの自己主張から始まる対話ではなく、お互いの問いから始まる対話。これが今の私の、当面の解決策。

  • すごく短い小説。

    赤ん坊を含め3人の子供を抱えて忙しい夫婦の話。うちも赤ん坊含め3人の子供がいるので、共感できる部分もあった。

  • 人間失格の内容とかなり似ているなと思ったら,人間失格の直前に発表されたものだそう。太宰治の子供の話をこの本で初めて知った。子供より親が大事,といいながらも常に子供のことを考えていて苦悩している姿が心に残った。

  • 暇つぶしに読める短編集。
    太宰の文章、すっきりして読みやすいが、何が言いたいのかさっぱり。とにかく駄目男(自画像というべき)とそれをささえる前向きな女房というパターンが多いよね。

  • とても久しぶりに太宰治を読みました。人間の弱さに寄り添う太宰が、やけっぱちのような明るさを見せてくれるとき。わたしは太宰の、そういうところが大好き。人間は矛盾した生き物で、笑って泣いて、どちらかに振り切れるということはあまりなく、明るさこそが悲哀を最も痛切に感じさせる場合がある。喜劇と悲劇。文明の果ての大笑い。その感性はわたしにとって、とてもしっくりくるものだった。人間の劇性を冷やかすような、それでいてあたたかくてやさしい、そんな視点がすきです。

  • 久しぶりの太宰作品、面白かったです!280円で買えるのが凄い★短編4本でしたが、一番好きなのは桜桃かな。ヴィヨンの妻も捨てがたい・笑 長編の「斜陽」を読み返したくなりました。中学以来なので、新しい発見があるはず!

  • 「桜桃」を読みたくて借りたが、「皮膚と心」が意外にも面白く心持ち明るめの話だったので、ほうと思いながらいつの間にかのめり込んで読んでいた。勿論「秋風記」も太宰らしい部分が多かったけれども、どこかに死が漂っているのに生がひどくこびり付いている感じもした。巻末の又吉のエッセイがまた意外にも共感する部分もあり、読書家の芸人として好感を持っていたのがまた少し変わった気もした。

  • 「桜桃」は、もう何度も読んだことがあるし、収録されている「ヴィヨンの妻」も読んだことがある。

    それでも、この本を買ってしまった。
    又吉さんのエッセイが載っていたから。

    よしもとのお笑い芸人・ピースのボケ担当である又吉さんは、大の文学好きで大の太宰好きなのです。

    そして、彼、私と同じことを考えていました。

  • 自分はだめだとか否定的な太宰があまり好きじゃなかったが、今はなんだかそれが、いい。

  • 初・太宰。古臭い感じはしなくて、心に寄り添うような、優しく女性らしい文体。「皮膚と心」はすごく共感できる。自分には小さな悩み事が人生を左右するんじゃないかと思うくらい大きくなることあるよね。どんどん縮こまって固まる考えをふっと緩めてくれる旦那さんが好きだった。「ヴィヨンの妻」は放蕩を繰り返す夫を持つ強い妻。最後の一言がふっきれるような潔さがあってかっこいい。その他2編も良かった。しかし、本当に死に魅せられてるよね、太宰さん。

  • どう生きても罪悪感があって、そんな駄目な自分を客観視することもできて、だからこそ大切な人を大切にできない、かなしくてやさしい人なんだろう。
    共感を呼び起こす力が、こんなに色あせないのか。

  • 放蕩夫とそれを支える妻の生活を描いた『ヴィヨンの妻』。悩める小説家と「K」の対話が展開される『秋風記』。ある婦人が、突如として己の体に出現した出来物について思い悩む『皮膚と心』。そして表題作『桜桃』の四編からなる短編集。

    どれも特に大きな事件が起こるわけではありません。むしろ、淡々と人々の生活を描いた作品集と言えるでしょう。それでも読まされてしまうのは、作者の人間観察の確かさと、その記述の巧みさにあるのではないでしょうか。

    これらの作品に出てくるメインの登場人物は、皆、なにかに悩んでいます。それは生活を脅かすようなものから、いかにも小さな問題であったりするのですが、そのいずれもが非常なリアリティをもって描かれており、思わずわが身を振り返ってしまうのです。

    特に感心したのが、ある日自分の体に現れた出来物について思い悩む婦人の心情を描いた『皮膚と心』。皮膚のできものから始まり、自分自身の女としての人生へと至る、その記述には圧倒されるものがあります。

    巻末のエッセイはピースの又吉さんが書いていらっしゃるのですが、そちらもセンスの良い文章で大変良かったです。

  • 280円文庫。薄いのであっという間に読み終わりました。どれも他の本に収められているので再読でしたが、やはり面白い。特に皮膚と心が好きです。
    現代においてもサラサラと入り込める文章と共感。好きだなぁこの人。

  • ヴィヨンの妻
    秋風記
    皮膚と心
    桜桃

    の4作を収録。


    どれも女心をよく描いている。

    これらの作品に出て来る女性達が、太宰の思う女性像と一致するとしたら、
    太宰はとても女性を愛していて、
    自身は女性に救われて、
    そして女性に悲しい、切ない思いをたくさんさせて、
    自己嫌悪していたのだろう。


    全くそんなこと思っていなかったのかもしれないが。


    そして、主人公が全て太宰自身なのではないかと思うほど、
    心情が丁寧に描かれ、
    リアル。


    そう思わせる描写は太宰治の作品の特徴だと思う。


    うっかりすると主人公と共に落ちてしまいそうな、
    リアルな4作だった。

  • 安い、薄い、読みやすい、面白いにもかかわらず280円とは、贅沢な一冊であります。でも、280円じゃ無かったら、きっと買っていなかった一冊でもあります。
    太宰治の作品というと男目線ばかりという勝手なイメージがあったので、女性視点の作品も入っていて意外な印象を受けました。
    ……いささか、なんとなく、自分が太宰氏と同年代に生きていたら、自分もその頃の若者の流行に乗ってしまったんじゃないだろうか、と思ってちょっとぞっとした。太宰の作品には、なんか引き込まれちゃうというか、入り込んでくるというか、ちょっと独特の読みごたえがある……

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