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- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758435567
感想・レビュー・書評
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和辻哲郎以来、さまざまな作家たちがものしてきた「古寺巡礼」の系譜につらなる一冊です。
著者が、近畿から東北にかけて、さまざまな寺にじっさいに足を運び、そこで感じたことや考えたことが自由なスタイルでつづられています。著者とおなじく小説家による同様の試みとして、五木寛之の「百寺巡礼」シリーズがありますが、五木がおおむね読者に寺の魅力を伝えることに力点を置いているように見えるのに対して、本書ではときおり著者の思いのままに文章が書かれているようで、一般的な意味でのガイドブックとして利用することはむずかしいように思います。
最初に著者がおとずれたのは室生寺では、「しかし、僕が室生寺を訪れたのは研究のためではなかった。批判を承知で言えば逃れてきたのである。」「何から逃れたかったのだという質問に正確な答えなどあるはずがない。それでも強いて言えば、原因のはっきりしない不安からと言うしかない」と語られています。思えば和辻の『古寺巡礼』も、彼自身の若き日の急迫にもとづく私的なエッセイであり、本書のようなスタイルこそが現代という時代において古寺を巡礼することの意味を示しているといえるのかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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