れんげ荘 (ハルキ文庫 む 2-3)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 273
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435574

感想・レビュー・書評

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  • ある日40代の独身事務住まいOLが、職場も毒母も嫌になり、会社を辞め貯金だけで暮らすためにオンボロアパートに引っ越す。それからのミニマルな生活を描いた小説。

    最近、清貧生活だとか、実際にこういう暮らしに挑戦している人の本も出ているが、しがらみや見栄や物欲を離れた人生に共感する人が増えているのだろうか。

    群さんはデビュー作の頃から読んでいるが、息長くヒットし続けていて、かもめ食堂で映画化もされて、大変な人気だ。
    彼女の飾らない筆致は、疲れているときにも楽に読めて、まるでお腹に優しいスープのようだ。
    彼女の作品はいつも、「若くも、美しくも、特別な取り柄もない普通の女子が、生きていて、幸せになれるんでしょうか?」というテーマを巡っているように思う。

    彼女の作品の主人公は、(作者と同じように)太いウエストや、合わない服や、困った世間の人たちと格闘し、猫とまったりし、草花や美味しいお茶にほっこりする。

    そんな普通の姿にみんなはほっとする。
    本の最後の増刷の版数のすごさにびっくりした。
    玄米パンのようにお腹とハートに優しいから、人気なんだね。

  • ミニマリストにおすすめの本。
    この本をで贅沢貧乏や森茉莉さんを知れて、
    そうやって岸本葉子さんとかに繋がってるんだなぁと。
    一種のライフスタイルとして市民権を得た先駆者とる小説ですね!

  • ちょうど仕事を辞めたいと思っていた時にこの本に出会いました。
    見栄や欲が無くなった今、本当に憧れる。
    ただ、生きる。
    マユちゃんの言葉
    「自分が何もしなくていいように器が整っているのは楽だけど、その部屋は色々と手を加えて住む楽しさっていうものがあるんじゃないの。」
    そうだ。何もしないを目指すのではなく自分でやる。
    それにはお金が必要とは限らない。
    何もしないためにあくせく働く人生と、生きる為に生活する人生。
    キョウコの選択には覚悟が必要だけど、とてつもなく羨ましい。
    私だって独り身ならば、きっと同じ選択をし同じようにこれで良いのかと迷いを持ちつつ生きるのだろう。

  • 前から思ってたけどハルキ文庫の背表紙のグラデーション感が良いなぁ。特に群作品は白と水色でなんだか空みたいな色。文庫の背表紙はダントツでハルキ文庫が好きです。
    月10万円で暮らす……それが定年退職したオジサンでもなく、アート系の20代の若者でもなく、45歳の何とも微妙な年齢の女性。現実にキョウコのような女性がいたら不審者や変人以外の何でもないですが、フィクションなのでとりあえず現実感を横に押しやればとても楽しいテーマですね。もし自分がキョウコのように月10万円でれんげ荘で暮らすならと考えたらちょっとわくわくしました。でも虫が苦手だからあっという間にリタイアしてるかもしれません。
    早期退職してれんげ荘で暮らし始めたにも関わらずいつまでもグダグダしてるキョウコ。こんだけ大それたことしてるのに中々腹がくくれないのは、やっぱり母親の存在なのかなぁ。キョウコ母はちょっと逸脱してますが、今まで家中がピカピカになっていたのは母親がそうしてくれていたからだとキョウコが気付いたのは、れんげ荘で暮らし始めた収穫の一つですね。まぁこの歳になるまで何やってたんだろうという気もしなくないですが、母のキャラクター強すぎですもんね。こんな人とごはん食べるより1人でごはん食べる方がずっと美味しいでしょうね。今後の母とキョウコの関係も気になります。分かり合える日はくるのでしょうか。

  • キョウコの母親が本当に嫌な人で…読んでてイライラ。あんな母親にはなるまいと心に誓った(笑)
    家賃3万円のボロアパートで、すきま風や蚊に奮闘。
    そんな中でも、お隣さんとの物々交換や、ちょっと奮発しておいしいコーヒーを飲むなど、派手にお金は使わないけれど楽しみはある。
    れんげ荘での暮らしには全く憧れないけれど(笑)、お金を使わずに楽しむ術は真似したいな。

  • れんげ荘シリーズの先ず第1巻。
    中々真似は出来ないなぁ〜の感想。
    家賃は安くとも、もう少し雨風(雪、蚊、湿気)を気にしないところがいいなあ〜。
    物を持たない生活には憧れるけど。
    女性1人どう生きていくのか先が楽しみな様な心配な様な…。

  • 今までやっていたキャリアを全て捨て、庭付き一軒家の実家暮しから、家賃月3万円のれんげ荘に住み始めたキョウコさん。主人公のような暮らしは、なかなか出来るものではないと思いました。
    でもキョウコさんやクマガイさんのように、美味しい珈琲を飲んだり、花を愛でたり、たくさんはないけれど好きな服を着たり…日常の中で、ささやかな幸せを見つけながら、生活するのは素敵だと思ったし、真似したいと思いました。
    でも家の中まで雪が降ったり、蚊が大量発生したりするれんげ荘に住むのは、なかなかハードだなー。
    これからの自分が住む家についても、考えるきっかけとなりました。
    シリーズ化されているみたいなので、続編も読んでみたいと思います。

    「辛くて嫌なことも多いけど、楽しいこともあるわよ。それは自分で自分を楽しませることを見つければいいんじゃないのかな。悲しいのは悲しいけど、それでもやっぱり悲観しないで生きていくのが、大事なんだと思うけど」

  • 有名な広告代理店を辞めてしまい、家賃三万円、月十万円で死ぬまで暮らしていく。
    キョウコさんの決意から、れんげ荘というボロボロのアパートでの生活が幕をあける。

    この小説で、描きたかったものとは何なんだろう。

    目を引くのは、キョウコさんと母との確執。
    母にとって、みすぼらしい生活を選んだキョウコさんは、まるで敵のように扱われてしまうのが切ない。

    すみれ荘の住人たちとの触れ合いも、もちろん描かれてはいるのだけど、思ったより濃くはない。
    それぞれに特徴的なキャラクターであるけれど、キョウコさんの視界に、そっと入ってくるくらいの密やかさも持ち合わせているように感じた。

    それなら、すみれ荘での生活か?
    特に、梅雨時のカビ事件や蚊の襲撃、冬の身に沁みる寒さはかなり念入りに描かれている。

    キョウコさんは、いろんなことに翻弄されながら、「楽な生活」について、ずっと悩んでいる。
    仕事を辞めて、口うるさい母から逃げても、生活をするという、そのこと自体は避けようがない。

    人との関わりや、お金への思い、生活の不自由さは、簡単に「まあそんなこともあるよね」とは思わせてくれない。この辺りを誤魔化さない所が、好きだなぁと思う。

    「住んでいるという感じ」
    が何を指すのか、私にはうまく掴めない。
    だけど、れんげ荘という場所は、どこか、生きている時間を支えてくれるというか。
    人が居住することの安寧に触れているというか。

    んー、言葉にするのは難しいのだけど。
    そうした、居と孤高の関係を、どこか漂わせているように感じたのだった。

  • あちこちに共感できることが溢れていました。

    マユちゃんのアドバイスは、とても良いアドバイスでこういう友達は貴重だろうなぁ。

    つい声を出して笑ってしまうところが所々にあり、楽しく読めました。特に、梅雨時はミミズ、ナメクジ、夏は蚊の大群、冬は雪が降れば室内にも降ってくる。

    「贅沢貧乏」も読んでみたくなった。

  • キョウコが「パンとスープとネコ日和」の主人公とどうも重なってしまう。

    とにかく母親がキョーレツでイラつく。今後和解していくのだろうか。お兄さんやお嫁さん、隣人のクマガイさんもいい人なのが救い。クマガイさんが素敵だな。
    れんげ荘の生活は、梅雨の湿気、夏の蚊、冬の寒さなど過酷過ぎる。続編があるので、キョウコはここで生活していくのだろうけど、クマガイさんも心配。サイトウくんはもう出てこないのか、コナツさんの素性も分からないまま終わったので、続きを読まなくては。

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著者プロフィール

1954年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。数回の転職を経て、78年、本の雑誌社に入社。デビュー作『午前零時の玄米パン』が評判となって、作家専業に。「無印物語」で人気を博す。『かもめ食堂』『れんげ荘』『三人暮らし』など著書多数。

「2023年 『老いとお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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