眩暈 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 157
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758436328

感想・レビュー・書評

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  • 爽やかさとは程遠い物語なのですが、このシリーズは一度味わうと、やめられなくなる不思議な魅力があります。



  • 私立探偵畝原シリーズ。
    現代の犯罪を題材に取り上げるハードボイルド。
    インターネットの匿名掲示板への誹謗中傷。
    個人名、住所などの個人情報の晒し、匿名による無責任な狂気の放題。
    かつての2ちゃんねるから、スクールカーストの裏掲示板。自演による歪んだ自己顕示。
    妬み、恨み、嫉み。
    また、そこにメディアというこれまた視聴者、読者を煽動する無責任な集団。
    明治や大正、戦前戦後直後など、凶悪犯罪はいくらでも存在したが、ネットやテレビなどの情報網が存在しなかった分、ローカルで他県などへは知られなかったことも現代では瞬時に撹拌、流布する。
    まさに、「眩暈」な一冊でした。

  • シリーズものは1作が気に入ると、あとは安心して読めるものである。

    畝原は、ある晩、タクシーで帰宅途中、なにかから逃げようとしている少女の姿を見かける。目撃した場所まで引き返し、少女を探すが、姿は消えていた。

    翌日、少女は死体となって発見される。

    畝原は自責の念にかられ、事件の真相を探り始める。

    さらに、一緒に少女を探したタクシーの運転手の死体が見つかった…。

    その頃、かつて連続殺人を犯した少年が、周辺に住んでいるという噂が流れた。

    ばらばらに起きる事件や出来事が、どう収束していくのか。

    ページを閉じることなく、読んでしまう。ああ、もったいない。

  • もう二年以上くらい積読してて、シリーズものだけど順番はまるで無視だけど、なんとなく次に読むのはコレだ!って思って読みました。

    やっぱり順番に読んでないので家族が増えてることにビックリしつつも、話についていけないことはなかった。
    でもこの家族ができるまでにいろいろと大変だったようで、、やっぱり順番に読むべきだったと後悔。。

    イッキに読んじゃったけど、、最後まで読んでやるせなさだけが残った。
    うーむ。。

  • 探偵畝原氏、今回もがんばります。

    歳を感じながらも必死に家族を守る彼は
    かなり魅力的。

    ケラー・オオハタで白麻の正体不明の悪い奴・・・
    あ、「俺」
    おなじみの登場人物のリンクも面白い。

    事件は最低、世の中の流れも最低
    でも、最低でない生き方をする。
    決めるは、自身。

    つくづく、しかるべきタイミングで
    いい大人に出会うって大切だと思う。

  • 今回は畝原の家族がピンチにならず、安心して読むことができた。
    別シリーズの「俺」がちょこっとだけ登場するところなどは、ファンサービスバッチリですね。

  • すこく面白かったんだけど、読後感がなんかスッキリしないというか残念な感じというか。
    東直己は初めてだったので、一作目から読んでみたいとは思った。

  • 途中でストーリーが読めてしまったのが残念。探偵バーシリーズの方がいいかも。

  •  札幌という地方都市だけの物語でありながら、出版一ヶ月ですぐに版を重ねる。東直己はいつの間に売れっ子作家になったのだろう。この作家の魅力は何なのだろう。

     そう考える時、やはり一つの魅力は時代性なのだろうか、と思う。かつてのススキノ便利屋シリーズでは、作家の追憶の向うにあるような昔の話、それこそ1970年代のススキノあたりでシリーズを開始している。一方で本書の続ずるシリーズである私立探偵・畝原の方は等身大でリアルタイムな札幌を描く。

     やがて便利屋シリーズのほうもあっという間に現代に追いついてしまったが、そこはそこで、作家から見れば利便性があったのだと思う。目的の一つは、きっとシリーズ・キャラクターを同じ時代、同じ場所に集めることで、競演を可能とすることだ。その発想がが榊原シリーズの傑作『残光』を生んだのだ。

     榊原シリーズは昨年とても久しぶりに『疾走』というタイトルでひさびさの復活を遂げ、それはまた三つのシリーズのキャラクターを同じ場所同じ時代に集めたオールスターキャスト・エンターテインメントとしての役割を果たし東ファンを喜ばせてくれた。

     さて、本書は畝原のソロ・シリーズであるわけだが、一瞬だけ便利屋の姿がちらつく。もちろんストーリーには関係なく、ちょっとした読者サービスの形で。

     畝原という私立探偵の境遇は決して明るいものではない。自分自身以上に、関わる人間たちの不幸を背負い込んで、強烈な責任感を胸に犯罪と闘ってゆくというような騎士道精神のメンタリティが目立つ。彼の家族の半分は犯罪の元被害者である。それゆえか、彼の行動パターンの根にあるのは原罪意識であるかに見える。被害者たちを守ることができなかったことへの激しい贖罪意識だ。

     本書では、タクシーで帰宅中の真夜中に、誰かから逃げているように見える小さな少女を見かける。一瞬の迷いの後、タクシーを止めて少女を探すが、彼女の姿はとうとう見つからなかった。その少女は、翌朝、豊平川の河川敷で遺体となって発見される。

     もちろん畝原に責任はない。しかし、畝原は自分が早くタクシーを止めさせればその少女の死を阻止することができたのかもしれないとの、贖罪の念に駆られる。さらにタクシー運転手の老人までが被害に合う。彼の電話に出られなかった畝原はまたも、彼を救うことのできた可能性に懊悩する。

     街に生きて、事件を相手にした私立探偵などをやっていれば、そんな重たい意識を抱えていたらノイローゼになりそうだ。だが、畝原は、知恵を絞り、知人たちのネットワークを使い、空手技を磨き上げ、真犯人を追う。現代のハードボイルド、汚れた街をゆく北国の騎士である。

     何作もの作品を経て作られてきた畝原ファミリーは、一方ではこのシリーズに家族愛という温もりを与えている。ススキノ便利屋は家族を取り上げられ、畝原は与えられた。その対比は一つの象徴であるように思える。家族たちの一人一人の表情が豊かに描かれ、畝原はだからこそ原罪の意識を研ぎ澄ませて行くことができるだろうと思う。

     一人の等身大の中年探偵が、十分に闘いの準備をしてモチベーションをリミットにまで持ってゆき、闇の街に漕ぎ出してゆくシリーズだ。それを淡々とした日常の視点で、気負うことなく描いてゆく大人の小説。これじゃ売れないわけがない、か。

  • 最近の畝原シリーズはちょっとedgeが効いてないかもしれない。

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著者プロフィール

一九五六年札幌生まれ。本郷幼稚園中退、本郷小学校卒、東白石中学校卒、札幌東高等学校卒、小樽商科大学中退、北海道大学文学部哲学科中退。
現場作業員、ポスター貼り、調査員、ガードマン、トラック助手、編集者、広告営業、コピーライター、受刑者など諸職を転々。
一九九二年『探偵はバーにいる』(早川書房)で小説家としてデビュー。同作は、一九九三年『怪の会』激賞新人賞受賞。
二〇〇一年『残光』(角川春樹事務所)で日本推理作家協会賞受賞。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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