紙の月 (ハルキ文庫)

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著者 : 角田光代
  • 角川春樹事務所 (2014年9月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

紙の月 (ハルキ文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 何不自由ない、けれど時に違和感がよぎる夫との生活。
    もし、あの日、あの人に付いて行かなければ、
    もし、あの時、あんな風に手をつけなければ、
    もし、、、
    たくさんの「もし」を越えて、ついに果てしなく遠いところへ流された梨花は…――。

    一度転がり始めたものを止めるのが難しいように、物語はぐんぐん進む。あっという間に読みきったけれど、とても、怖かったです。
    読みながら梨花の万能感を共有してみたり、手に入れたい服や化粧品を次から次に買う光悦感を味わったりもしましたが、最後は体の芯から冷たくなるくらいに怖くなりました。
    もしかすると、大きな事件を起こした梨花と自分を隔てているのはほんの些細な何かで、自分も容易くそちら側にいってしまうかもしれない、なんて思う程、梨花の誤ちは日常と地続きで、たわいもなく染まっていってしまったから。
    梨花だって、きっとこんな事件を起こすと思っていなかった。むしろ、事件の渦中においてすら、そんな風に思っていなかったのだから。

    私たちが社会で生きるにおいて「お金」の力は大きい。お金が湧水のようにあれば、なんだって買える。一方で、お金があったところで何も手に入らない、あるいは残らないということがある。
    それなのに、私たちは簡単にお金に支配されてしまう。
    そのことが、なんだか悔しいような、苦い気持ちになるのです。

    そんな呪縛から逃れるためには、月並みかもしれないけれど、地に足をつけて生きること、が必要なのかもしれないですね。
    装丁も本書の雰囲気にぴったり。さすが角田さんだなと何度か泣きたくなるような気持ちになりながら読み終えました。

  • 「頭の中でいつも蠅が飛び回っているような音がしている」
    このような文章表現がうまいなーと感じさせてくれる。
    女性の横領事件の影に男あり。しかしこの作品に登場する男の子は一度もお金をねだってはいない。ばれそうでばれないようなスリリングな描写は映画にはでてこないので、
    小説を読む価値はあると思う。

  • 自分を知ってもらうために、または自分自身を知るために必要以上なお金をつぎ込んでいった結果、逆に自分を見失ってしまった…

    男性のために横領事件を起こした女性が海外へ逃亡…というストーリー的には聞いたことがある内容だったけど

    その時々の登場人物の心理描写に読み応えがあった

    偶然手に取った本なのに今住んでいる地名がいくつか出てきたのには驚かされた!

  • 誰かに何かをしてあげたいだけで、見返りは求めていない(と言い切ってしまうと、ほんのちょっとは嘘になるけれど)。それがエスカレートするたびに少しずつネジが外れていって、どんどん見栄を張りたくなる。
    いつしか、自分の与える特別が相手にとっての日常に変わっていたことを思い知らされて、夢が覚めてしまう。

    必要とされたいだけ。本気だっただけ。それをどうして馬鹿にできるだろう。今普通に生きている人だって、いつこういった道に転げ落ちるかわからないのに。

  • 銀行でパートをする主婦が横領に手を染める過程が生々しい。

  • 一億円を横領した女性の物語。些細なきっかけ、焦り、衝動、薄れゆく罪悪感…全てが生々しく、読者まで道連れにしていくようなサスペンスでした。でも、これは転落ストーリー、逃避行ではないのかもしれません。決して満たされなかった彼女の「覚醒」。そう考えてもう一度恐ろしい

  • 理性が働いて一線を越えないようにしているだけで、誰にでも起こりうる事なのかなと思いました。それが現実的すぎて怖い作品でもありました。誰かを繋ぎ止めたいお金だと尚更切るのは難しかったのかなと思いました。最後は主人公と同じく私も誰か早く不正に気づいてあげて!と思いました。映画化もされたこの作品を読むのは初めてですが、スリル満点で楽しめました!!

  • 角田光代『紙の月』角川春樹事務所, 2012年 読了。
    *
    ひょんなきっかけで、会社の口座から5万円を前借りした、わかば銀行の契約社員・梅澤梨花41歳。
    「あとで戻せばいいよね」初めは安易な気持ちだったが、次第にエスカレートし、横領総額は1億円に達してしまう。
    もはや戻れない。事件が発覚する前に、逃げるしかないーーー
    ただの普通の契約社員が引き起こした、サスペンスストーリーです。
    *
    1度の気の緩みが引き金となり、どんどん堕ちていく女の生き様が、ありありと描かれた小説。
    いとも容易くお金が手に入る快感を覚えた梨花。
    その快感からは、抜け出せない。
    だんだん金銭感覚が麻痺して、使い込む額が増えていく。
    同時に手にしたものも増えたけど、心は満たされないまま。
    空虚感ばかりが広がっていき、その虚しさに耐えられず、さらにお金をつぎ込んでゆく……
    満たされない心を、その理由もわからないまま、お金や愛人etc.あらゆる手段で埋めようとする、切実な女の心情が描かれています。
    *
    同じ女ゆえか、梨花の心情や行動の中に、どこか自分と似た部分が見えて、ゾッとする。
    感情に流されて生きるのは、女の特権かもしれないけど、怖い。
    自分で自分の手綱を握る、誰にも渡してはならない。
    身の引き締まる思いがした、そんな1冊でした。

  • 巨額の横領など自分には無縁のものだと誰もが思うだろう。本書の主人公・梅澤梨花も恐らくそうだったのだと思う。
    少しだけ、今足りないから借りるだけだ、いつかは返すのだと信じながらも気づけば返せないほどに膨らんでしまったお金。しかもそれが若い愛人のためのお金だったとなれば、このような結末になるのは致し方なかったのかもしれない。
    周辺が語る彼女は聡明で美しく、正義感が強いどこにでもいる女性で、だからこそ読んでいるうちにだんだん自分もタイミングさえ悪ければこのようなことをしでかしてしまうのかもしれないと思わされる。

    お金の力や価値というのはわかりやすくて強いから、特に自己評価が低い人ほどお金で魅力を付けようとする人が多いように感じる。
    しかしそれはやはり本人の魅力ではなく仮初のものなのだ。無理をしている、歪んだ力はだんだん周りとのひずみを生んでいく。
    光太が「ここから出して」と懇願するシーンがとても印象的だった。

  • 心臓に悪すぎるストーリーだった。思わず自分が銀行で手続きした商品の資料を確認してしまった。事件を遠くで知ることになる昔の友人や恋人の語りは出て来ても、一番近くにいた夫と若い恋人のモノローグが一切無いので、二人の本音が全く分からず、敢えて読み手に想像を委ねる作りが面白かった。

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紙の月 (ハルキ文庫)の作品紹介

ただ好きで、ただ会いたいだけだった―――わかば銀行の支店から一億円が横領された。容疑者は、梅澤梨花四十一歳。二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった・・・・・・。あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、傑作長篇小説。各紙誌でも大絶賛された、第二十五回柴田錬三郎賞受賞作、待望の文庫化。

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