紙の月 (ハルキ文庫 か 8-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758438452

感想・レビュー・書評

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  • 凄い好き・・・この、気だるい感じ。

    堕ちていく女達。

    上手く言葉に出来ないけど
    奈落の底に堕ちていくのは分かってるんだけど
    堕ちて行きたい。

    ずっとずっと底まで堕ちて行きたい。

    そんな女が好き。

    蒸し暑く気だるい感じが好き。

    映像で知ってたから、そんなに興味なく読んだけど
    小説の方が良かった♪

  • 面白かった。
    主人公の年齢が自分に近い所為なのか?表紙が宮沢りえの本だったからか?頭の中がこの本の続きでいっぱいになっていた。

    女がみんなこんな生き物だとは思わないけど、ひょっとしたら自分の中にもそんな一部が潜んでいるのかもしれないと思った。

    スリリングな展開で、チキンな私は読み進めるのに勇気が必要だった。
    ハッピーエンドではないけれど、これでもかという落胆もない。
    こんな話の展開で、痛みがないわけないのに、優しい終わり方だった。

    久々、面白い本だった。映画も気になるな。

  • 角田さん、犯罪心理と女性特有の心理が生々しい。八日目の蝉でも、犯罪へ向かい、戻ることができない女の心理が描写されていたが、この作品でも、金への執着、物への執着、人への執着が辛いほど伝わってくる。心の隙間を金で解決しているが、その代償は計り知れない。男や娘に愛情と称して金を貢ぐ、高いブランド物で満足できる、自分の虚構を塗り固めざるを得ない、誰しも共感してしまうような心理かもしれない。

  • 読みやすいです。昔、滋賀銀行での女子行員の横領事件は大変衝撃でした。この本を読んでみて感じたのは事実は小説より奇なりと言うことです。小説のストーリーの方がありがちなのかなあと思います。主人公の性別年齢に関係なく、人には「ふと魔が刺す」という事があるのかなあと思いました。お金を使うことって、恍惚感がありますね。それと自分のことを異性と認めてくれる事って、いくつになってもトキメキがありますねえ。支離滅裂な感想、ご勘弁。

    • joanjさん
      一日で読みきり。目が離せなかった、読後の疲労感がすごい。
      現実離れした1億円の横領だけど、読めば梨香がそれだけ遣うに至った気持ちもよく分かっ...
      一日で読みきり。目が離せなかった、読後の疲労感がすごい。
      現実離れした1億円の横領だけど、読めば梨香がそれだけ遣うに至った気持ちもよく分かった。

      梨香が自分の思いを夫に飲み込むことなく伝えられていたら、空虚感は少し癒されていたんじゃないのかな

      梨香自身も幾つかのたらればを話していたけれど、結局本人が言うように経過がどうであろうと最終的に同じことになっていたような気がする

      違和感や憤りを飲み込んで、辛い現実から逃げようと考えることを辞めて、お金とか目に見えるものに頼って
      言葉にすると簡単だけど、実際その場に立ったら中々抗うことって難しい

      梨香以外の登場人物の話も通じて、お金の在り方付き合い方を考えさせられた。
      2021/01/17
  • お金によって狂わされていく人間の描写が生々しく、
    小説ってこんなにすごいのか、と物語が進むにつれて圧倒されました。

    面白いと思ったのは、使うお金が高額になればなるほど、
    使う人間の思考も短絡的で幼児退行化する傾向がある様に感じられることでした。(買い物し過ぎて紙袋が多い→「車があったらいいね」→車買っちゃう、みたいな)

    有り余るお金を手に入れ湯水の様に使うほど、知性や常識的判断、あるいは人との関係まで、自覚がなくても代償として失う羽目になり、必ずツケは回ってくる怖さを感じました。

  • どこで、どこで間違ってしまったんだろう。
    ひとつ曲がり角を間違えるとそこからまた違う道が続くし、見たことのない景色が広がる。
    それは誰にもわからない。
     
    人生は落とし穴だらけ、そしてあみだくじのようなもので、一本道を違えると思ってもみないところへ着いてしまう。
    今、自分が立っているこの場所は正しかったのか間違いだったのか分からない。
    もしかしたら自分もあの彼女のような処へ行っていたのかもしれない。

  • 毎日を穏やかに暮らしている人が、億単位のお金を持って逃げられるなんてそんな話ある訳ない。と思うけど、この小説を読んでいると日々、平穏に暮らしている誰にでも、こういった感情は起きてくるのかもしれない。と思う。突然そうなるのではなく、徐々に。
    初めはほんの些細なことから始まって、だんだんそこに快感を覚えて同じことを繰り返す。そのうちそれが当たり前になって気付くとそこから抜けられなくなっている。お金に限ったことではなく、誰しもその内容や大きさはどうであれ、そういった感覚に陥ったことがあるんじゃないかと思う。

    最後、主人公がどうなったかは読者の想像。
    一気に読みたくなる本でした。
    映画観たいなぁ。

  • 自分とは何なのか。主人公の梨花を通して考えました。結局、自分の事なんていくら考えても分からない気がしました。仕事や恋愛で自己実現したように思えても、どこか深い穴があって満たされない。自分は何でもできるという万能感に包まれても、簡単に崩れてしまう。それをひた隠しにしようとして、あるいは気付いているけれど気付かないふりをして、今の幸せを維持する為に不正に手を染める。しかし、もう自分では戻れないから誰かに連れ出して欲しい。終わらせて欲しい。誰かに自分を見つけて欲しい。その願望は分かる気がしました。恋人に考えられない額を注ぎ込んで、主人公は一体何を得たのだろう。自分を見つけられたのだろうか。一瞬でも幸せだと思えたのなら、それで良かったのだろうか。いろいろな事を考えましたが、やはり自分とは何なのかは分かる気がしないな、と思いました。

  • 人がどんどん堕ちていく様子がなぜか怖いくらい感情移入して共感できるように描かれている。
    不正がエスカレートしていくうちに読み進めるのが嫌になった。
    時に一瞬の些細な行動がきっかけとなり瞬く間に人生が終わっていくことがあるが、主人公は最後「あの小さな行動のせいでこんな結末になった」ではなく、「どんなルートを辿ってもこの結末になっただろう」と考える。「どの瞬間を切り取っても全て『私自身』なのだ」と。
    主人公が、行動と気持ちのずれを曖昧に認識していて、違和感を持ちながらもその2つを張り合わせているような描写がリアルで生々しい。

  • 真面目な人ほど男にハマりゾッコンするのかなぁ~

    銀行の営業している梨花が取引先である金持ちの孫にして貢いでしまうお話

    横領したお金1億円!
    まだ携帯が珍しかった時代今の価値だといくらするのでしょうか??

    普通に家族に恵まれ、普通に学生を送り、普通に社会人になり、普通に結婚し
    普通に旦那さんに尽くし主婦になる

    子供に恵まれなかったから銀行員の営業として働き始めた梨花、そして出会って会いまった光太との禁断の恋
    振り向かすためにお客のお金でスイートルームに泊まり、振り向かすために高級レストランに食事、監視するために高級マンションを借りる

    こんな生活いつまでも続くわけがない!勿論会社にバレて逮捕

    自分だけ逮捕され光太は逮捕なし!
    何故って?お金頂戴とは言っていないし梨花が勝手にやったこと

    切ないですね

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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