勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 (ハルキ文庫 ま 14-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 582
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758439626

作品紹介・あらすじ

ベテラン放送作家の工藤正秋は、阪急神戸線の車内アナウンスに耳を奪われる。「次は…いつの日か来た道」。謎めいた言葉に導かれるように、彼は反射的に電車を降りた。小学生の頃、今は亡き父とともに西宮球場で初めてプロ野球観戦した日を思い出しつつ、街を歩く正秋。いつしか、かつての西宮球場跡地に建つショッピング・モールに足を踏み入れた彼の意識は、「いつの日か来た」過去へと飛んだ-。単行本刊行時に数々のメディアで紹介された感動の人間ドラマ、満を持して文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 序盤の流れでは想像できない展開が待っていた。
    全てを繋げるのは無茶かな、とも感じた。

    多くは苦難だった。誰もがひと時の幸せを大切にして生きた。

    以下、ネタバレ有り。(備忘録)

    主人公は正秋。
    阪急ブレーブスの球場跡地にできたショッピングモールの一角。
    大切な思い出に浸り、閉店時間を迎え階段を下りた時、不思議なことが起きた。
    40年前のあの頃にタイムスリップ。
    近所に住む江藤のおじさんの勧めで、阪急ブレーブスの試合を父と見に来ていた。
    帰りに父の秘密を知った。

    日本と北朝鮮を舞台に描かれる物語。
    戦後、夢を描き北朝鮮へ渡った人たちを待っていたものは。
    登場人物は現在と過去、手紙の中で奇跡のように繋がっていた。

    誰もが一生懸命だった。絶望と希望があり、後悔や感動もある。

    読了。

    • yhyby940さん
      こんばんは。フォロー、ありがとうございます。私は西宮北口駅の一つ東の武庫之荘に20年暮らしていたブレーブスファンです。面白い小説ですよね。
      こんばんは。フォロー、ありがとうございます。私は西宮北口駅の一つ東の武庫之荘に20年暮らしていたブレーブスファンです。面白い小説ですよね。
      2020/08/24
  • 書店で見付けて手に取り、ノスタルジーな物語?と、購入。
    読み始めは、感動もののファンタジーかと思ったが、全然違う方向へ。
    「手紙」の章では壮絶な北朝鮮の状況から目が離せない。まさかこんな展開とは思わず、早く結末が知りたくて、最後まで一気読み。
    キーワードの「勇気」という言葉。
    自分は勇気を持って生きているのか?
    生きる、を改めて考えさせられる。

  • 最初は中高生の頃の頃まで慣れ親しんでいた西宮北口界隈の様子が蘇ってきてとても楽しかった。でも、小説の中盤から、北朝鮮に戻った人たちの厳しい話になる。
    僕の記憶に残る阪急ブレーブスはマルカーノ、山田久志や福本豊が全盛の頃から。いろいろな感情を味わったこの本、そのブレーブスの側面を背景を初めて知ることができ、勉強になった。

    サンキューとツッチー、ありがとうございました。

  • ブクログ登録1000冊目!は、大好きな野球と、地元西宮の物語。タイムラインで見かけて、興味を持って手に取りました。
    西宮にはかつて阪神と阪急、2つの球団があったんだなぁ。西宮球場には昔ゆずのライブを観に行ったことがあるくらいで、数年後には取り壊されて阪急ガーデンズが建った。そんな今はなき西宮球場と阪急ブレーブスの思い出から始まる物語です。
    ノスタルジックな父と子の物語かな?と思って読んでいたら、思わぬ方向に話が進んで行って、一気読みしてしまった。
    北朝鮮の実態については、別の本でも読んだことがあるのですが、フィクションであれと思うくらい悲惨で、読んでいて辛かった。日本のすぐ近くに、そんな国が存在するのかと驚かされると同時に、今当たり前のように平和に暮らせていることに感謝したくなる。
    登場人物があまりにも綺麗にまとめられすぎている感じはありましたが、国も時空も越えて繋がる物語に涙。私も生きる勇気をもらえた気がします。

  • 同級生に薦められて読みました。小説の舞台になった西宮に住んでいたのでかなり感情移入してしまった感はありますが、人と人のつながり、優しさにあふれた作品です。ラストは涙がとまりませんでした。

  • 筆者の増山実氏の文章の書き方・着眼点・表現の仕方(演出)などが読者に伝わりやすく、登場人物たちが今まさにそこでどのようにして過ごしているのかが目の前に映るようでした。また、朝鮮人の方々の苦しく過酷で悲惨な環境も学びました。
    それを重たく終わるのではなく、本編終盤で、我々読者にさえも希望として歩んでいってほしいという示唆を含めたセリフに温かみがあり、中盤からは悲しいシーンが多かったですが、前向きに本を閉じることができた、読んで良い本だったと感じております。

  • 2017年1月8日読了。
    最初は、父親に対する想いを描いた渋い小説なのかなと読み進めていましたが、壮大な規模の物語でした。あらためて現代の日本が、過去の時代に生きた人々の想いが礎となって平和と自由を保っているのだと考えさせられました。
    物語のテーマである「勇気」、自分の人生をあきらめずに自分で選択していくという力は必要不可欠だなと改めて実感したし、またがんばっていこうと励まされる小説です。
    ただ、文章が少し軽かったのと、やや説明的な部分は、小説という表現形式を使うにあたっては少し物足りないかな、と思いました。
    主人公の父の若き日の恋愛はせつなくて、読んでいて涙ぐみました。
    ラストはすべてがつながって、良い余韻がありました。

  • はじめのうちは、面白く読めていたけど、こんなに北朝鮮の暗い話しになるとは思っていなかった。

  • 目で読んでスッと入ってくる関西弁の文章が良い。

    放送作家の業務や、報道番組のリアルな裏側を皮肉ってるのがおもしろくて、どんな物語になるんかなぁって思ってたら、急にタイムスリップした笑!

    開拓民の話、競輪の話、能登半島と朝鮮半島の話など、職業野球という言葉があった時代の出来事がとても興味深かった。

    ま~!「父の秘密」で父ちゃんが語る回想シーンの長いこと!笑
    長~~~いこと語ってたな!京都銀行!

    あの、安子から届いた手紙の封を切る瞬間の正秋の気持ちたるや…。手紙の内容は、もはやラブレター。

    異国で貧乏と戦い、差別を受けながらも平穏に暮らせる人生を捨てて、故郷に還ることを選んだ者を裏切るような国家はアカン。人として最低限の暮らしすら保障できない国家はクソ。
    しかし、端から見れば腐ったしょ―もない国やと思われていても、祖国を想う人からすれば、故郷であることに変わりはないということを改めて思い知らされた。どんなにポンコツのクソッタレでも、親は親、故郷は故郷なんかな。だって、そこで生まれ育ったんやもんな。
    2000年代になっても、貧しい暮らしをしている人々の食べ物より、中国の犬のエサの方がはるかに豪華なんだとか。何発もミサイルを発射できる資金源があるはずやのに。

    数奇な運命。巡り合わせ。人の想いは時空を越える、という使い古されたワードが嵌まるタイムスリップファンタジーやけど、そんな事よりも北朝鮮の現実の方がファンタジーであってほしいと、フィクションであってほしいと願う。

    2017年12月02日 

  • 同級生からのお勧めで読みました。生まれてから25年間住んでいた西宮北口が出てくるということで、気軽に読みはじめたら、西宮どころか日本を出て異国が舞台になり、びっくりしました。タイムリープなどファンタジー要素があるのですが、現実感もあって不思議な世界観です。バラバラに出てきたいくつかの家族、登場人物が終盤にどんどんつながっていくところは上手いなあと思いました。図書館で借りて読みましたが、自分で買って手元に置きたくなる本です。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した。他の著書に『空の走者たち』(2014年)、『風よ僕らに海の歌を』(2017年)がある。

「2022年 『甘夏とオリオン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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