金曜日の本屋さん夏とサイダー (ハルキ文庫 な 17-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758440714

感想・レビュー・書評

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  • 第1話 何番目かの読書会
        『六番目の小夜子』恩田陸
    第2話 パン屋のクニット
        『さびしがりやのクニット』トーベ・ヤンソン
    第3話 夏は短し励めよ読書
        『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
    第4話 君への扉
        『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

    各話ごとに単独の話ですが、全体を通して『読みたい本が見つかる本屋』の駅ナカ書店<金曜堂>のアルバイトの僕、倉井史弥が見た<金曜堂>に勤めている野原高校のOB、OGであり、<金曜日の読書会>の仲間たちであった、書店員たちの、仲間の一人だった、五十貝迅を巡るストーリーとなっています。
    僕は、密かに憧れている、槇乃さんの想い人だった五十貝のことを槇乃さんが「五十貝くんは殺されました。それも二度」。と言った言葉がずっとひっかかっていますが、3話、4話で<金曜堂>を訪れた客らによってその謎が明らかになります。
    4話では、いつもとは逆に僕が槇乃さんにハイラインの『夏への扉』をお薦めして、槇乃さんも少し元気になったようです。

    紹介された本は『六番目の小夜子』以外未読で、『六番目の小夜子』も内容を全部忘れてしまったので、全作品を読んでみたいと思わされました。

    以下第2話のストーリーを途中まで。

    野原町はフィンランドの「姉妹都市があり、年に一度、野原町白夜祭りが開かれています。
    その準備のさなか、僕はベーカリー<クニット>にお使いと雑誌の配達で出かけていきます。
    <クニット>は若い夫婦の早生邦登さん、知晶さんのお店でした。
    次の日、奥さんの知晶さんが、僕に届けてもらった雑誌に、夫の邦登さんの元彼女が、トーベ・ヤンソンの『さびしがりやのクニット』を紹介していると言って、その本を買いにきます。知晶さんは、元彼女と夫が心の中でお互いをまだ忘れていないのでは、と言って泣くのですが、槇乃さんは思い切って知晶さんに元彼女に会ってみることを薦めますが…。

    <クニット>で売っているフィンランドのパンがおいしそうで、食べてみたくなりました。

  • シリーズ二作目ですね。
    主人公も「金曜堂」のアルバイトにもなれ、三人の店員さんとの交わりも深くなり、物語は「金曜堂」の誕生に関わる謎への展開を迎える。
    今回は四話。キーワードの四作は何れも有名な本です。
    それ以外にも沢山の本が出てきます。
    あとがきに名取さんの読書感想文があり、さらに楽しめます。
    成長物語でもあり、恋愛ドラマでもあるので今後の展開が楽しみですね。

  • 今回はがっつり元金曜堂メンバーの過去話。一冊で過去と向き合い、進んでいく姿がみれた。
    何となく前作で匂わせていた部分が明らかになりスッキリ。
    しかし結構バードな内容で読んでて辛かった。

  • 久しぶりのシリーズの続きです。
    お話はそんなに派手さもなく淡々と進んでいく感じなのですが、主人公のものの捉え方、考え方がとても深くてその言葉が残るんですよね。それを知りたくて読んでしまいます。
    一見地味で頼りにならなそうな主人公が実は1番大人かも?なんて思いながらまた次のシリーズを楽しみにしてます。
    人との繋がりに本との出会いがある金曜日の本屋さん。羨ましいです。

  • 名取佐和子さんの金曜日の本屋さん2巻。
    思っていたよりも内容が深く濃くて
    読み終わったあともグルグル考えさせられた。
    ☆4個。

    旦那さんや恋人のことが大好きな人、
    人生で途方に暮れてしまうような裏切りに
    あった方の感想を聞いてみたい
    そして、一緒に感想をじっくり話し合いたくなる
    作品だなと思った。

    名取佐和子さんは心の中にある、
    『こんな風に思ったことある!思ってた!』という
    気持ちを優しく言語化してくれる。

    2巻では『そんな風に進んで行きたい!』が
    沢山あった(^^)

  • 前作から随分と時間をおいてしまったけれど、読んでいる内に思い出した。

    「読みたい本が見つかる本屋」と評判の駅ナカ書店〈金曜堂〉は地元に密着した本好きのための本屋。
    今回も本好きにはたまらない言葉のオンパレード。
    「読書って不思議だ。どんな本でもその中に必ず、今の自分が必要としている言葉がある」
    「読書は自由だ。物語は読む人が自由に受け取ればいい」
    「人は他人の心は動かせないけれど、自分の心の穴を自分で埋めることはできる」

    今回は前作での謎が解き明かされ、そのことにより〈金曜堂〉のメンバーも心乱されることになる。
    けれど本や仲間達のお陰で立ち直り、新たな絆も生まれた。

    この作品の中で「偽電気ブラン」や、黒髪ならぬ「パープル髪の乙女」に出逢えて嬉しかった。
    他の作家さんが描くモリミーの世界もまた楽しい。

    そして〈金曜日の読書会〉に私も出席してみたい。
    私のための「本への扉」、私にも見つかるかな?

  • うっかり2作目から読み始めてしまったけど面白かった。続きが気になって気になって、、みたいな本では無いけれど、人々の心が丁寧に描かれていて、なんというか良い小説だった。
    出てくる本達が自分がああ読みたいと思っていたやつだったりしたのも良かった。

  • 前作では朧気だったジンさんの輪郭がはっきりしてきました。五十貝迅、それが彼の名前。彼が金曜日の読書会でどんなにみんなに影響を与えたのか、どんなにみんなに愛されていたのか、どんなに笑顔が素敵だったのか、そして八年前どんな風にこの世を去ったのか。その死は槇乃店長や栖川さんヤスさん、そして恩師のオットー先生の心をどれだけ凍らせ傷つけたのか。彼の死の真実が時を経てわかったとはいえ、槇乃店長の心の傷はすぐに癒されるはずもなく、逆に今まで気を張っていた部分がぷつりと切れてしまったかのようでした。
    時には、亡くなった人への想いが強ければ強いほど、それは生きている人への足枷となることがあるのでしょう。あんなに本が好きで沢山の素敵な言葉を持っていて、未来に夢を持っていた人が、もう新しい本を読めない、広い世界を見ることが出来ない、そしてその死の真実は封印され、未来永劫彼の名は非道い仕打ちを受け続けなければならない。そんな人を置いて、自分だけ前へ進めない、進んではいけないと思ってしまうのでしょう。
    けれど今彼女たちの周りには、八年前とは違うお客様という仲間も増えています。倉井くんという新メンバーもいます。そして、金曜堂には沢山の本に託された、希望や夢、未来が溢れているんじゃないでしょうか。決して前へ進むことは、いなくなった人を置き去りにすることではない、そう槇乃店長は自身の心に決着をつけたようです。
    これから金曜堂は新しい扉を開いていくのでしょう。楽しみですね。

    《クニットをなぐさめるのは、だあれ?》

  • シリーズ2作目。今回も、章ごとに1冊ずつ実在する本を軸にして話が進んでいく。

    ・恩田陸「六番目の小夜子」
    ・トーベ・ヤンソン「さびしがりやのクニット」
    ・森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
    ・ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
    以上の4冊が出てきて、読んだことのない本は思わず読みたくなる。その他にもちらっと出てくるだけの本も合わせると、本当に沢山の本が出てきて、巻末にその一覧も記載されているので、本好きの方に是非おすすめしたいシリーズ。

    今回は「金曜堂」をつくった3人の抱えている過去が明らかになる。倉井くんも以前より頼もしくなっているような。
    「読書って不思議だ。どんな本にもその中に必ず、今の自分が必要としている言葉がある。あるいは逆で、人はどんな本からでもら自分に今必要な言葉を見つけられるのかもしれない。」

    本作で気付いたのだけど、装画にも上記の本たちの表紙が描かれていて可愛い。

  • シリーズ2作目。
    1作目がとても明るい感じで、「金曜堂」の面々の活躍を今作でも期待していたが、意外に早く「金曜堂」の面々が抱える悲しい出来事の真実が語られる。
    きっかけは、現役の野原高の生徒が卒業アルバムの「読書愛好会」の写真を見て、「これぞ、青春!」と感じて、もう一度「読書愛好会」を復活させたいと考えたこと。
    しかし、当時の顧問だった音羽先生は許可しない。困った世羅は「金曜堂」に相談に訪れるが、南店長も、和久も、栖川もいい顔をしない。
    理由はもう一人のメンバーだった五十貝仁にあるようだが、彼に何が起こったのか?
    主人公の史弥は、少しずつ、その真実に迫っていく。
    その話が根底にありながら、今作に登場するのは「六番目の小夜子」だったり、「夜は短し歩けよ乙女」だったり、トーベ・ヤンソンだったり、身近な作品が多く、内容は重めだけど、本の話として、純粋に楽しめる。
    ラストに出て来る「夏への扉」は私も読んだことないが、その作品が過去にがんじがらめにされていた南の気持ちを解放するのを読んでいて、読んでみたくなった。
    今作で悲しい過去が全て明らかになったので、3作目は明るい作品に戻ることに期待!

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著者プロフィール

名取 佐和子(なとり・さわこ):兵庫県生まれ、明治大学卒業。ゲーム会社勤務の後に独立し、2010年『交番の夜』で小説家デビュー。著書に『ペンギン鉄道 なくしもの係』(第5回エキナカ書店大賞受賞)シリーズ、『金曜日の本屋さん』シリーズ、『シェアハウスかざみどり』『江の島ねこもり食堂』『逃がし屋トナカイ』『寄席わらしの晩ごはん』『七里ヶ浜の姉妹』『ひねもすなむなむ』『図書室のはこぶね』(京都府私立学校図書館協議会司書部会「中高生におすすめする司書のイチオシ本2022年度版」第6位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2022」第8位、うつのみや大賞2023第4位)ほか多数。

「2023年 『文庫旅館で待つ本は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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