放送禁止歌

著者 :
  • 解放出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759254105

感想・レビュー・書評

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  • なかなか衝撃的で、年末の浮かれ気分では文章がまとめられなかった。
    切っ先が自分に向いた時も、刃の切れ味を落とさないジャーナリストの姿は尊敬に値する。

    昭和の歌がちょっとした卑猥な言葉で放送禁止になっていた、と何となく耳にして興味本位で覗いてみたら、そこは天皇批判や部落差別も絡み合う鬱蒼としたイバラの茂みだった。

    放送禁止歌の一覧は存在していた。
    だが実のところ、それは「放送禁止」ではなく「誤解を招かないように当事者の理解を得ながら慎重に取り扱うべき」歌のリストとして作られたものであり、さらに期限付きでもあった。

    その事実をジャーナリストである筆者も、今回の調査で知る。
    放送側が「理解を得る」努力を怠りタブー視し、下の世代は何も知らずに「放送禁止」リストを盾に蓋をし続けていたわけだ。

    自分達の業界の体たらくを露見し、取材を続けることが首を絞めることだとわかっていながらも後半、部落差別に踏み込むところは息を飲む。
    実際彼らは、放送局に抗議をしたことなんてなかったのだ。
    今もライブでは放送禁止歌を披露するアーティスト。
    当時も今もそれに対する抗議はない。

    誰でも発信できる現代、表現の自由という言葉が大手を振っている。
    私たちは一体何と闘っているんだろう。
    傷つく人がいるとかいないとか。嫌なら見なければいいとか。
    性別、国籍、思想、身体などあらゆる違いが、争いを巻き起こす。
    痛みなしに生きることは難しい。
    図太い方が勝ち?
    権利を主張し合い何も面白くない!

    月並みすぎるが、自ら触れ考えることが大切なのだ。
    そして真実を知るために身を切る果敢さを持つこと。
    その難しさや。
    ジャーナリストの切り込みにあまり好感はもっておらず、本書でも時々出てくるしつこさに辟易した場面もあったが、筆者は見事に上記を達成していたのである。脱帽。

  • テレビ・ラジオ等のメディアで放送禁止とされている歌の数々について2人が語る。関係者へのインタビューなども織り混ぜている。

    具体的に「放送禁止歌」のリストが存在しているわけではないらしく、あくまでも自主規制の範囲だ。その理由は公序良俗に反するとか、差別的である、といったところ。実際に差別的だと抗議を受けたものもあれば、「そういう見方もある」というレベルで自主規制に追い込まれていった歌もあるとか。

    いつの世でも言われる「表現の自由」との兼ね合いが頭によぎる。そしてネットが発達した現在。かつての放送禁止歌&用語の時代に比べて、格段に「本当に当人を傷つける」言葉が世の中に溢れてきているように思える。というより、人間が本来持っている排他性や自己防衛の心が、表現の手段を万人が手にすることによって顕在化しただけか。

  • 「放送禁止の歌」など無かった!それは。思考放棄したメディア関係者の共同幻想でしかたなった。
    前半は「放送禁止歌」というドキュメンタリーを企画し、撮影し、放送に至るまでの話。
    後半は放送禁止に纏わる「差別」の本質に迫る内容。
    デーブ・スペクターが珍しくもふざけないで彼の国での「放送されない曲」について語る。
    「放送されない曲」はあるけれど、「それは言論の自由を守るために自ら放送しない」ということと、「思考停止して面倒だから放送しない」日本とは全く状況が違うという。
    「竹田の子守歌」に迫る話も面白かった。

  • 放送するリスクばかりでなく、禁止するリスクもとらなくなっているんだそうです。文句言われるからやめとこう、と。自粛と萎縮。

  • 規制は本当に実在しないのか、疑問が残る。

  • 放送禁止の歌ってあってないようなものなんですね。こんなとこにも問題追及を避けて自ら自粛する日本人の国民性が表れてて面白い話でした。

  • 古本屋でゲット!

    この時代の音楽が大好きな自分にとってはよだれものの内容です。

著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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