牛を屠る (シリーズ向う岸からの世界史)

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著者 : 佐川光晴
  • 解放出版社 (2009年7月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759267242

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牛を屠る (シリーズ向う岸からの世界史)の感想・レビュー・書評

  • 数年ほど前に内澤旬子さんの「世界屠畜紀行」を読み、他、マタギの熊を仕留めた後の話も読んだ。去年テンプル・グランディンの番組を見て、牛や豚にストレスが少ないシステムを考案して…という内容を見て、O-157や狂牛病などの問題が出る前はどうなっていたんだろうと思い借りた一冊。


    肉はほぼ毎日我が家の食卓にのぼるし、みんな魚よりも肉が好きなので、私たちの口に入るまでどういう過程なのか気になって探した本。


    今はもう違うだろうけど、大宮と芝浦の差に驚いたし運ばれてくる牛や豚の状態などに驚いた。そして怪我をして競走馬として走れなくなった馬まで運ばれてくる時もあるという…。


    漢方薬の「牛黄」は牛の胆石。「熊の胃」は豚の胆嚢。


    佐川さんが職場から離れてから3か月ほどで社名も変わり、システムも変わりトラックから牛や豚が降りる姿さえ見えないようになり、匂いも啼き声さえも外にもれないようになる。


    “ことさら隠すから余計につけあがるのだ。「いのち」などという目に見えないものについてあれこれ語るよりも、牛豚の匂いや啼き声といった、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させたままにしておくことのほうがよほど大切ではないかと、私は思っている”=135ページ=

    の一文に激しく動揺&同意してしまった。なんでもかんでも便利になればいいのか。便利になればなるほど捨てられていく誇りのようなものがあるんじゃないかと…ふと感じた。


    毎日、口にするものを余すことなく大切に食べようと思いました。感動とも衝撃とも違う、だけど心に響くものを受け取った。


    薄い本だけど読むのにとても時間がかかってしまった。それだけ内容が濃い。巻末のイラストがあって分かりやすかった。

  • オートマ化して、デジタル化して、
    どんどん便利でクリーンな世界になっていく。

    でも、生きるって、もっと生々しいものだとおもう。
    飢えを満たすために、今日も私は他の生物の命をもらって、
    汗かいて、排泄して、死に向かって歩くんだ。

  • 屠刹場で働いている人の話
    潔いくらいにそれ以下でもそれ以上でもなく牛を屠る話に尽きる
    迫力があって熱気が伝わってくる

    作者の屠刹の仕事をする経緯については偶然であるが
    屠刹という仕事のバックにある黒いものについては
    あえてはっきりとは語っていない

    あえて語っていないところにいろいろな含蓄を感じるし
    簡単に語れないアンタッチャブルな部分であることを推察する

    ただ、やはり食肉関係の仕事に従事するということは
    社会的には色眼鏡で見られることが多く
    実際結婚などに支障がでているらしい

  • ナイフを片手に10年以上も牛の相手をした作者自身の経験が淡々と丁寧に書かれています。苛酷な職場において「働く喜びを得た。」と佐川さんは語ります。自分の知らない世界を少し覗いてみませんか。(浦河町)

  • ドキュメンタリーとして面白い。仕事というものへの眼差しというか姿勢というかそんなものへの愛情が感じられる

  • Kさんに勧められた本

    読む価値あり

    牛、豚を、大事に食べる!再確認

    こわごわ読みだしたが、
    あっさり、読めた

    仕事に悩んでいる人に
    転職を考えている人に読んでもらいたい

  • 魚は〆て捌く映像がメディアや書籍などで公開され、当たり前の行為として扱われている。
    一方で、現代社会においては魚以上に消費量が増えている「肉」に関しては、上記の過程は一切表に出ることはない。水中で生きる哺乳類についても同様である。
    命を奪う行為であることは同じであるにも拘らず、どこかで線が引かれる。表に出ないことで、線の引かれ方はその世界の中と外との関係のようにも機能し始める。屠る世界の内側にいる人々と外側にいる人々との間に線が引かれることになる。
    この境界部分に向き合い、共通認識として線を引く試みを行っていないことが、海外との捕鯨や海豚漁でのやり取りにおいて、自らの文化として語れない日本の現状にも繋がっているのだろう。

  • おすすめ。
    作者の奥さんは元「どくんご」の人だった。世間は狭い。

  • ワナ猟のペーパー免許を持つ夫(あまり本は読まない)が、面白かったというので読んでみた。一つだけ読んだことのある著者の小説はあまり好みではなかったので、さほど期待してなかったが、これは確かに読みごたえがあった。心身ともにがっぷりと仕事に取り組んだ人にしか書けない重みがある。

    屠殺(著者はあえて負の歴史を背負うこの言葉を使っている)という仕事の現場を、そこで働く人の立場から書いたものって、他にもあるんだろうか。内澤旬子さんの「世界屠畜紀行」の中で東京芝浦屠場が詳しく紹介されていて、たいそう興味深く読んだのだが、これも鎌田慧氏の「ドキュメント屠場」も、外部の人によるルポだ。根強い偏見がある中、熟練を要する仕事に職人として携わる心性が、日常の描写から浮かび上がってきて、強い説得力があった。

    内澤さんが同じことを書いていたが、佐川さんも部落差別について実感としてほとんど知らず、屠殺についてそうしたことと関連づけて考えたことがなかったそうだ。この点は、関西在住者の感覚とは大きく違う。忌避感はしぶとく潜在していて、何かの拍子に表に出てくる。本書も「世界屠畜紀行」も、屠畜といえば避けて通れないこの問題を、あえて主眼に置かずに書かれたものだが、それがかえって問題の本質を考えさせることになっていて、良書だと思う。

  • 著者の飾らない冷静な語り口が良かった。他の著書も読んでみたいし、この本で紹介されていた屠殺に関する著書(「世界屠畜紀行」「ドキュメント屠殺」)も読んでみたい。

  • 読みたかった一冊…ないなぁ〜と思ってたら出版社故にきな臭い書架の片隅にありました。
    仕事としての屠殺のテクニカルな部分にフォーカスした裏キッザニア的な内容をそれを職業として体験していた小説家が書くのだがら臨場感は半端ない。メンタル面もさらりと付け加えられ読み物としては表現が不謹慎ながらも面白かった。
    興味のひとつである職選びの動機もシンプル、もっとも職安ですがる思いで求人票や捲った経験者にはわかりやすかったと注釈をつけておくが。
    肉が最初からパック詰めで存在しないこと、そしてそれを取り巻く偏見や誤解…視野が広がることは良いことだよ

  • 2014.9.20
    考えさせられる
    『「いのち」などとというめにみえないものについてあれこれ語るよりも、牛豚の匂いや啼き声といった、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させままにしておくことのほうがよほど大切ではないか」
    美味しいとか、食べたくない、食べれないとか、美味いとかマズイとか飽食の時代とか超えて、木っ端微塵にする過去からの遺産の綴りと思います。

  • 仕事が今イチ自分に合ってないなぁと思いながら仕方なく続けているが心のどこかで他にもっと自分に合う(自分がやりたい)仕事があるはず!と思いながら年月は過ぎてなお未だに最初の仕事を続けている私に。

  • みんな肉を食べる。
    その肉はどうやって自分たちのもとにやってきたか考えたことはあるだろうか?

    この著者は、屠場と呼ばれる場所で働いていた。
    昔から、肉を解体する作業は人々に忌み嫌われていた。
    いつから、その仕事は部落の人が行う仕事というイメージがつくようになった。
    著者は部落の人間ではない。
    たまたま就いた仕事がこの仕事だったのだ。
    屠場の様子がなまなましく書かれていて、特にナイフで手を怪我するところは読んでいて、こちらの手が切られているかのような気分になってしまうが、屠場の仕事の辛さ、やりがいなどがいっぱい伝わってきた。

    今、食育というものが流行っているが、自分たちが食べる肉がこういう人々の手を通じて、自分たちのもとにやってくることも学んでほしいと思う。

  • 著者は北海道大学法学部を卒業後、一旦出版社に勤めたのち、技術を身につけられる職業を希望して、と畜場に就職します。そこはナイフ一本で牛を解体する、まさに職人の世界なのでした。

    と殺解体業というと、部落問題などを想像する方が多いかもしれませんが、この本ではほとんど取り上げられていません。もちろん、結婚相手としてあまり歓迎されない職業であるというような話は出てきますが。

    むしろこの本の主題は、屠殺場が職人の世界であり、ナイフの技術というものだけがものを言うところだという話です。

    そして職業としてのと畜業は、やはり危険で肉体的にも精神的にもキツイ世界だそうです。
    汗だくになり、怪我もしながらしかし、著者はこの仕事が好きだったと言います。

    そして、そういう世界だからこその仕事仲間とのつながりも。このへんは体育会系の感じかな^ ^。

    と畜解体業に対するイメージがすこし変わるかもしれない本です。

  • 大宮にある屠殺場の仕事を紹介

    牛とか豚肉って
    こんなにも過酷な環境で造られていたのか。屠殺方法についての技術的な視点がメインだったので、命についてみたいな道徳的な話がなかったので、内容は淡白としていた。作者には是非その辺を今後語って頂きたいと思った。

  • 自伝的小説「生活の設計」で第32回新潮新人賞を受賞して、いまは文筆家だ。
    奥さんは教師で、そのさまを新聞で紹介しており、私も何回か目にして、いつかは読もうと思っていた作品だ。
    大学を卒業して1年間、出版社にいたが、辞めたあと、職安から紹介されたのが、「食肉処理」の会社で、いわゆる屠殺場、屠畜場の現場だった。
    そこに10年間いたときのことをベースにして書いている。「生活の設計」は今は改題して「虹を追いかける」(双葉文庫)にあるので読んでみよう。
    私が経験したことのないことを読むことで「追体験」できる。

  • 小説でもなく、ルポでもない。

    良い作家の良い文章と巡り合えて良かったと思える一冊。

  • この小説は、大変読み易い

  • 筆者は何気なく始めた屠場の仕事。

    「プライドなどという安っぽい言葉を木っ端微塵に吹き飛ばす」

    そう形容するような先輩たちがいる職場で

    自らをかけて働き、誇りを見出していく姿が鮮やかにみえました。

  • 屠殺が今のように機械ではなく、人間の手によってされていた最後の時代の話で、淡々とした文章の中にムンムンと熱気がたちこめている。意外と知らないというか無意識にか知る事を避けている人が多いと思うので、もっと知ってもらいたいと個人的には思う世界。

  • 北海道新聞でコラムを読んでこの作家に興味を持ちました。肉体労働を通じて創造力を鍛え上げる様子に感動しました。過酷な労働だということが伝わってきますが、読後感がさわやかでした。

  • 北大卒編集社勤務後、10年間大宮と殺場に勤めた人の本。
    職安でこの屠殺の仕事を選らんでから、常に戸惑いながら、しかし辞めるという周りの予想に反して食いついてきた。
    だが、小説を書く内に中途半端はやめようと、その仕事を辞する。
    技術的に進歩することがなくなってしまったら、何を目標にすればいいか、という問いは結構大きいなあと思いました。
    合う合わないというのもあるらしく、皮を剥ぐ作業は左手は素手なのだそうだが、それにより爪が減ってほぼなくなってしまったり、邪魔な程肥大したりするらしい。それでも作業する人もいる。すごい。作者は向いている爪らしく、ちょっと厚くなったのみで変化しなかったそうだ。
    刃物を扱う職業なので縫う怪我はしょっちゅうする、というのもすごい。刃を研ぐのも難しく、3年やっても覚えられないそうだ。やすりがけなど目が邪魔だから見ないで、手の感覚でやるのだそうだ。
    芝浦の屠殺場はよい和牛しか扱わないらしく、そのため悪い牛は全部大宮に来るという。ぞんざいに扱われた牛は、その牛と一緒に屠りながら憤る彼らは一番食肉を考える優しい人々だ。普通の人は死んだ牛について何も感じられない。
    この仕事やってると結婚できない、と辞めていく人も多いそうだ。こんなに尊敬すべき職業なのに難しいな。きつい仕事だが給料は8年目で256098円。朝は早いが遅くても午後三時には終わる。どう受け止めるかは人次第。
    色々考えさせられる。作家さんが書いただけあって筆力があり読みものとしても楽しめた。

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牛を屠る (シリーズ向う岸からの世界史)の作品紹介

大学卒業後に務めた出版社を退社後、埼玉の食肉会社に入社した著者は、翌日から牛豚の解体を生業に働きはじめる。入社初日から「ここはお前なんかの来るところじゃねえっ!」と怒鳴られたものの、しだいにナイフ捌きをおぼえ、牛の皮剥きに熟達していく。牛を屠る喜びと、屠りの技術を後輩に伝えるまでの屠場での十年の日々。
「職業を選ぶ」「働き続ける」とは、自分の人生にとってどういうことなのか――。
屠畜解体従事者への世間の恥知らずな差別と偏見はあろうと「牛を屠る」仕事は続けるに値する仕事だー―。これから世の中に出て行こうとする若い人たちに向けて、著者最初の小説作品である『生活の設計』以来、一度も書かれなかった屠場仲間の生きざま、差別をめぐる闘い、両親・家族をめぐる葛藤をまじえて描く。芥川賞候補作家による渾身の書き下ろし。

牛を屠る (シリーズ向う岸からの世界史)はこんな本です

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