料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)
- 化学同人 (2014年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759813593
作品紹介・あらすじ
近年、物理学、化学、生物学、工学の知識を調理のプロセスに取り込み、これまでにない新しい料理を創造しようとする「分子調理」が注目されている。本書ではまず、分子調理の世界的な広がりの様子を眺め、料理と科学の幸運な出会いの場面を描く。そのうえで、おいしさを感じる人間の能力、おいしい料理を構成する成分、おいしい料理をつくる器具といった、料理と科学の親密な関係をひもとき、これらの知見を応用したときに生まれるであろう、「超料理」の可能性を考えていく。少しでもおいしい料理を実現するための、分子調理の世界へようこそ!
感想・レビュー・書評
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まさに料理はサイエンス!と感じさせてくれる本。
凍結含浸法で、お料理の形状を保ったまま口の中で崩れる形にするとか、介護に役立つ技術も進んでいるのねとか、熱の通り方、電子レンジの加熱手法の特徴、味覚の感じ方、などなど、知識としてあると料理の仕方も変わってくるんだろうな、と。
理系女子の割に、感覚で料理しているのを反省しつつ、もっと考えて料理しよう、と思ったのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容が薄い。新たに知りたいことなし。
例えば低温調理で肉のタンパク質が分子構造上いかに変化するかとか、そういう科学的な説明はほぼなし。
読了 15分 -
何気なくしていた料理や味わうことを、科学的に論理立てて解説してくれる本。一度目を通しただけではすべてを理解できないし、折りにふれ読み返したくなると感じたので、図書館で読んだあとに購入を決定。文庫版しか今はないようですね
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谷口さんお持ち帰り済み(2022/10/28現在)
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閲覧室 498.53||Ish
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分子調理のやさしい解説書。
「エル・ブリ」のフェラン・アドリアは分子ガストロノミーの代表格みたいに言われるが、演出は派手でもサイエンス的な要素は少ないらしい。むしろ、レシピの公開やチームによる料理、科学など他分野との連携といった21世紀的方法論の導入にインパクトがあったと。
食材の成分に注目していたのが従来の食品科学で、調理のプロセスにおける科学的・物理的変化に注目するのが分子ガストロノミー。ただ分子ガストロノミーという言葉には手垢がついてしまった感がある。著者は分子調理という言葉を採用。
科学と技術の相互作用。→むしろ技術から科学がはじまることが多いという話はあったよね。技術のwhyに言葉を与えるのが科学か。昆布だしのとり方で、科学的検証で通説を覆した事例もあるが(「菊乃井」村田吉弘)。
カルシウム味や脂肪味の受容体らしきものが見つかっている。ただ第6、7の基本味となるかはまだ分からない。
舌の味覚地図はどうも正しくなかったらしい。
味覚の受容体が5種類かそこらしかないのに対し、嗅覚の受容体は約390種類もある。また鼻から入るアロマと、喉から入るフレーバーとで感じ方が違う。味覚と嗅覚は脳でも違う経路で処理されて第二次味覚野で統合されるみたい。
うま味の相乗効果のメカニズムが分かったのは最近。核酸がグルタミン酸受容体のスイッチをオン、開きっぱなしの状態にするらしい。
味覚・嗅覚のほかにテクスチャー(食感)と温度もある。甘味、うま味の細胞膜上で味分子を受け取る受容体は体温付近でもっとも敏感。アイスクリームに砂糖をたくさん入れるわけ。味噌汁も冷めるとうま味が弱まって、相対的に塩味がきつく感じられる。ただし果糖は冷やすと甘味が強くなる。
水分子を制するもの料理を制する。→製パンでも聞いたなこれ。
水分子がほかの食品成分と結合しているのが「結合水」、微生物に利用されにくい。一方、結合していないのが「自由水」。自由水が多い肉や野菜はみずみずしいが腐りやすい。ジャムや漬物は、砂糖や食塩の添加により自由水を結合水に変える技術。→水分活性ってこれか。
水は氷になると三次元の結晶構造をとることで体積が増える。冷凍肉を解凍するとドリップが出るのも、高野豆腐を作るのもこれが原理。また水分子間の結合力は強いため、温めるには同重量の鉄の10倍のエネルギーがいる。気化熱、凝結熱が大きいわけ。
脂肪酸の中に二重構造がない飽和脂肪酸はまっすぐな構造をしており、分子が凝集しやすい。よって脂(fat)になりやすい。二重構造を持つ不飽和脂肪酸は途中で折れ曲がった構造のため凝集しにくく油(oil)になりやすい。実際の脂質の性質は両者のブレンド具合に左右される。バターは飽和70:不飽和30、オリーブオイルは飽和15:不飽和85。
水と油を混ぜ合わせる乳化剤。卵黄に含まれるレシチンはマヨネーズで活躍。
糖質・タンパク質は低分子(単糖類・アミノ酸)のときは化学的なおいしさを持っており、高分子の時は物理的なテクスチャーを発揮する。そのバランスの妙。
味の対比(甘味+塩味)、相殺(苦味+甘味)、相乗(うま味)、変調(ミラクルフルーツ)現象。メカニズムは分かっていないものが多い。
香りや色も重要。鮎の香りはキュウリアルコール。
タンパク質のアミノ基と糖のカルボニル基が熱で反応するメイラード反応。料理に色と香りを与えるほか、抗酸化作用がある色素分子メラノイジンを生成するが、リジンが減少したり(粉ミルクの製造過程で生じる)、肉や魚の焦げでは発がん性物質が生じたりも。
酵素反応。「熟成」はだいたいこれ。もともと生体内にいる酵素が作用する。調理過程で利用する方法(パイナップルやキウイのすりおろしに肉をつけると柔らかくなる)もあるし、食品加工技術で利用することも研究されている(凍結含浸法。スプーンですくえる筍!)。
他にも、おいしい料理を作る方法(調理道具、調理過程→和洋包丁の違い、IHの威力、アンチ鉄板、ゲル化など)や、究極のステーキ、おにぎり、オムレツに関する考察など。 -
料理の世界がこんなに化学と近接しているものだとは知らなかった。今後どんな料理が出てくるのか楽しみ。
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旨味の相乗効果の話がとても面白かった
料理と科学のバランスが良く、最後まで楽しめて読めた -
【資料ID: 1117019946】 498.53-I 76
http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB15859059 -
藤原さんの言ってることが本当だった衝撃。芋けんぴも冷凍したら甘くなる。
「プルースト効果」。
マウスの遺伝子を破壊して無効化する実験を例にして、調理が社会からノックアウトされた時、人が料理を作る意義が現れるかもしれないという発想に共感。 -
「おいしさ」とは何なのか、人が「おいしい」と感じる理由について、科学的に解説した本。味って感じ方が人それぞれでとても主観的なもののように見えて、実はものすごく科学的に理路整然と説明できるものなんだなと驚く。
料理って実験みたいだなと思ったことのある人は多いと思うけど、この本を読むと改めて料理とは化学、物理、生物(さらに土壌などについて考えるなら地学も!)などなど科学なんだなあと思わされる。
個人的には、高校の化学IIを勉強してるときにこの本と出会えたらもっと勉強が楽しくなっただろうなと思う。高分子は私にとっては面白い内容ではあったけど、料理とリンクさせて考えることができたら、もっと身近で楽しく感じながら勉強ができたかもしれない。 -
レストランの最新調理から身近な家ごはん、最新の調理方法や科学的分析方法など料理に関する様々な話題に触れてくれてて面白かった。科学と考えれば料理も興味が持てる。
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貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784759813593 -
化学が好きなので、全般に面白い内容だった。
料理を式によってモデル化出来るっていうのは驚いた。勿論、完全に表現できる訳ではなく、新たな料理法や食材の組合せの発見の為の1つのアプローチとして、という前提付きだったけど。
「分子調理」が著者の専門テーマだけど、どうやら自分的には受入れ難いらしくって、「面白い内容なのに、読んでいて眠くなる」という困った状態だったので、星3つ。 -
分子美食学について。Cooking for Geeks よりも読みやすくはあるが実用的ではない。
やたらと学問的すぎて、むしろ、著者のブログの方が面白い。
http://yashoku.hatenablog.com/ -
題名の通り、料理の科学的分析だが、あくまで目的が「美味しくすること」であることから、無味乾燥ではなく、芳香漂う書籍となっている良書。エル・ブジ、分子ガストロノミーから始まり、脳科学的分析、分子化学的分析、料理・調理の科学、未来の美味しすぎる料理、と、話題は尽きない。
たまに専門用語が続いて分かりにくいところもあるが、飛ばして十分楽しめると思う。 -
料理の側面を科学的なアプローチから再構築している本著。
飽食の時代において、食の分野を見直す意義は大きいと思います。
歴史・文化・技術革新の中で食が新たな道を模索し、開拓していく姿を垣間見ることが出来ました。
日本の食文化で、海外へ伝えている菊の井ー村田吉弘氏など 和食を始めとした食に通じるもので従来とは異なるものとの出会いや衝突をすることが新たな道に繋がると感じました。
科学的な側面では、人口爆発から食料不足が考えられ、3Dプリンター・フラスコによる簡易食料を作る案など紹介されていました。
遠くない未来で、食と科学の距離感がどのようになっていくのか気になります。 -
8月新着
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molecular gastronomyについてまともに紹介した日本語の本というのは、まあ伏木亨先生の本がそうだと言えばそうなんだが、一般向けの本としては初めて?くらいじゃないかしら。特に学問体系としての歴史、方向性までしっかりわかって面白い。
ただ、思ったよりも化学系だったなあ。生化学と分子生物学がわかんないと、どうやら中身には近づけないのか。もうちょっと文化ネタ寄りの研究動向があればうれしかったが。