殴り合う貴族たち: 平安朝裏源氏物語

著者 :
  • 柏書房
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760127894

感想・レビュー・書評

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  • 前提としている現代の私達が思い描く平安貴族のイメージの「雅」「優雅」というのが間違っているのかもしれない。もっと粗野で乱雑な時代だったんだろう。
    「紅楼夢」でもやたら打ち据えるシーンがあり、痛かったのを思い出す。
    そして藤原実資の人柄と資料にとても信頼を寄せているけれど、案外ゴシップジジイで「何言われるかわからないから近寄らないでおこう」的人物だったのかも、なーんていろんな妄想広がる本。
    歴史的ゴシップってけっこう楽しい。

    ただ常に現代人の判断基準で描かれているのが違和感。
    その頃の18歳、40代が現代人の同年と同じ精神年齢とは思われないし。
    殿上人がそれ以外の人を「人」として扱っていたのかな。
    (高田崇史の読みすぎ?)
    やたらと「光源氏」を引き合いにだすので、「源氏物語」がハーレクインロマンスにさえ思えて来たし。
    「詳しいことはわからないが」「だったのかもしれない」も多すぎて、こりゃやっぱり週刊ナンタラくらいに読むのがよさそう。
    それにしても暴力事件の文献をよく拾ったなあ。

  • 平安時代の貴族たちのイメージは、高校までの授業で習った源氏物語や枕草子などの古典文学から持った和歌を読んだり蹴鞠に興じたりする人たちというものだったが、現実は必ずしもそうではなくむしろ頻繁に暴力沙汰を起こしていたという本。

    主に小右記を根拠としており、この文献の存在を知らなかったので藤原道長が官人採用試験の試験官を拉致し圧力をかけたり、藤原経輔が後一条天皇の御前で殴り合いの喧嘩をしたなどといったエピソードが満載で面食らった。情操教育がなされないままなんでもできる権力を人が手に入れるとこうなるということだろうか...
    著者の文学作品の中の貴公子たちはかなり理想化された存在であるという主張は納得できるが、事実関係以外の文中に推測が多いのが気になった。小右記が比較的信頼に足る文献なのであろうことは否定しないし、他の文献も参考にしている箇所はあるが。また暴力に次ぐ暴力なので胸やけしてしまった。

    読んでよかったといえるのは、枕草子に登場する藤原伊周が左遷されるエピソードの顛末を知ることができたことだった。花山法王に弓を射かけた事件を発端として伊周、隆家兄弟が地位を追われ中宮定子が出家するくだりから後がどうにもそれより前と比べて雰囲気が違うと思ったが、背景知識を知った上で思い返すと中宮定子の出家と中関白家の凋落が作者に大きく影響していたのかと納得した。期待していた内容とは違う気づきだったが、これはこれでよかったということにしよう。

  • こんな本があるとは!
    藤原実資の「小右記」解説本。「左経記」とか「御堂関白記」とか「権記」とかでも欲しい〜!
    しかしまあ、なんてワイルドなの、平安時代…。貴公子達の野蛮なこと。身分の低い人を拉致監禁暴行が日常茶飯事。女性だって、天皇に殴りかかる女房とか身内の不祥事をもみ消すのに検非違使を威嚇したりとか。寺社造成の石運びに都を往来する民を捕まえて強制労働とか。年がら年中、誰かが拉致されたとか、誰かん家が襲撃されたとか、でもって自分の親族が関係者だったりとか…王朝の権力者って、結構情けなく大変そうです。
    そして何故か、「切り壊つ」「召し籠める」「打ち凌ず」「打ち調ず」「凌礫」…と狼藉を表現する語彙が無駄に雅び(笑)

    ※敦明親王(小一条院)と禎子内親王は「きょうだい」みたいな記述はよく見る。確かに2人とも父は三条帝だけど、敦明親王の母は藤原済時の娘・娍子だし、禎子内親王の母は道長の娘・妍子だしで、同母じゃない。「当子内親王」と混乱か?

  • 個人同士の喧嘩というより、ヤクザの抗争みたいな事件ばっかりで驚いた。

  •  繁田信一『殴り合う貴族たち』

     友人からの薦めで読みました。
     最初からクライマックスすぎて笑いました、それはもう。
     著者が言っているように、一般の人から見れば平安貴族というのは=光源氏であって、雅な存在でした…が、この本はそんな雅さなど宇宙のかなたまですっ飛ばしてくれます(笑)
     平安時代の貴公子たちは、それはもう拉致監禁虐待は通常運行だったようで…「おい、お前ちょっと表出ろや」という平安貴族なんて見たくない(笑)
     そして烏帽子の取り合いの激しさと言ったら…烏帽子を取られる事がいかに恥ずかしい事であったかを著者は再三再四述べていますが、だからといってこれはひどい。
     まあ、確かに平安時代は自力救済の時代でもありましたから、貴族がそんな事をしていても、確かに問題はない気もしますね…中世になるとこれが一族、国単位になるから大変ですが。

     それにしても最後の火薬庫のような宴…本当に何もなくて良かったですよ(笑)

  • 「源氏物語の時代(山本淳子)」で知った本。
    大河ドラマ「光る君へ」では、ロバート秋山が演じる源実資。出てくるだけでおかしみのある愉快なおじさん。そんな源実資が「小右記」を詳細に書き残してくれたがゆえにわかる殴り合う貴族たちの実態。

    目次の並びが強烈。「御堂関白藤原道長の子息、しばしば強姦に手を貸す」「内大臣藤原伊周、花山法皇の従者を殺して生首を持ち去る」などなど。
    大河ドラマでは道長の兄、道兼がやばい感じだが、本書を読むと道長および一族もなかなかにやばい。
    平安時代には平安時代の常識があり、暴力にも彼らなりの背景があることは読み取れた。あー、平安時代に生まれなくてよかった。

  • NHK大河ドラマの口コミを見てたら、この本を思い出した〜といういう感想が多くて、気になり読んでみた。右向いても左向いても藤原さん…の時代の暴力の記録。ページをめくってもめくっても、殴る拉致する家を壊す女性を襲う…の連続で、途中でギブ。私は平安貴族は癇癪持ちだと思ってたからそんなには驚かなかったけど、けど…。今世の岸田さんの息子のやらかしは、平安の世ではかわいいもんなんだよな。

  • #読了 タイトルのインパクトで読んでみたけど、内容も負けず劣らずのインパクトだった。平安貴族といえば例に漏れず光源氏を思い出したり、子供の頃少女漫画で見たキラキラ貴族たちを想像するくらいの知識しかないけれど、よくよく考えてみれば貴族たちの権力のデカさたるや現代とは比べるまでもないだろうし、倫理観も全く異なるのだ。権力があり、自分の指示で動く人間が大勢いるならば、暴力性は抑えが効かないだろうなぁと納得がいく。
    2022年の大河、鎌倉殿〜でも取り上げられた後妻打ちが最後に紹介。後夫打ちもあるとのことで、いつの世も嫉妬は破壊を招くのだなぁ。

  • 似たような名前の人ばかりで調べながらじゃないとよくわからないんだけど途中で諦めてしまった…
    でも定子の母が高階の出で、在原業平の子孫ていう話は面白いので高階について調べたりした。あとででてくる高階成章とか業敏とかと定子が又従兄弟ってことと高師直が高階から出てるってことがわかった。

    定子の息子の敦康親王と三条天皇の第一皇子淳明親王がごっちゃになる。(敦明親王の方が高階成章や業敏を虐待した方)

    210.3

  • 一般人のイメージする光源氏とは違い、実際の平安貴族は暴力的だったのだ、という本。

    筆者が言うほど光源氏を美化していなかったけれど(彼も拉致・強姦をしている)、それでも実際の平安貴族は、想像以上に暴力的。
    しかも、権力者のもみ消しが日常茶飯事で、あきれるほどの無法地帯っぷり。
    平安時代を取り上げた本は多いけれど、切り口がめずらしく、おもしろかった。

    ただ、似たり寄ったりの案件のくりかえし、起きたことの羅列だけなので、後半はややマンネリ感。

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著者プロフィール

1997年東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。2003年神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了、博士(歴史民俗資料学)。神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。著書に『陰陽師』(中央公論社)、『平安貴族と陰陽師』『呪いの都 平安京』(以上、吉川弘文館)、『殴り合う貴族たち』『王朝貴族の悪だくみ』(以上、柏書房)、『天皇たちの孤独』(角川書店)などがある。

「2008年 『王朝貴族のおまじない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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