捏造された聖書

  • 柏書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760129423

感想・レビュー・書評

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  • トンデモ本のようなタイトルだが中身は理性的。
    印刷機以前の手による写本は、作為不作為を問わず前世代とは異なるものができる。従って、現存する聖書はオリジナルのものとは違う。
    きわめて当たり前の話だが、このあたりが大論争になってしまう宗教学の恐ろしさ。

  • 一般に古文書は、オリジナルが残っていない場合、写本という形で後世に伝えられるが、写本制作時には文字を読み違えたり、意図せずに行を飛ばしたりといったことがまず避けられない。特に聖書の様な主義主張に関わるものは、往々にして写本の中に自己の主張を織り込ませることが少なからずある。聖書については、オリジナルは全く残っておらず、写本のみのよって編纂されているが、その基となった写本もオリジナルと同じものとは言い難い。この写本の違いを分析し、オリジナルを推測しようという学問があり、その手法等がこの本の主題である。推理小説を読む様な面白さがあり、キリスト教徒以外でも十分楽しめる。

  • 壮大なる伝言ゲームの話。そりゃよく考えれば数千年前の印刷技術も無い時代は手書きの書き写ししかないのでどんどん内容変わっていきますよね。
    この本は日経に載ってた河野外務大臣のお気に入りの本として紹介されてたんですが、直後からなのかアマゾンなんかでも価格が数万円単位に高騰(本は絶版)しており探しに探した挙句図書館で借りました。是非、電子化してほしいです!

  • 面白かった!長年自分の中で謎だった、なぜキリスト教には一つの聖書なのに(旧と新はあるが)たくさんの会派があるのか、少し手掛かりを得た。

    意図したりしなかったりで、元々の教義が改変されてきた。
    時には、女性の地位、離婚について、奴隷について…いろんなことを、自分たちの都合がよくなるように、写本する際にテキストを変えてきた。
    その結果だということらしい。

    …と考えると、いわゆるありがたい「教え」の中で決めつけられていることも、その人の考え方でしかなかったりするの…かも。
    そうした「思想」的なものは、所与のものではなく、やはり元を疑ってみる必要がある。そういう考え方をすることで、誰に利益があるのか、そしてどういう経緯でそうした思想が生まれてきたのか。
    和訳も比較的読みやすかった。特に、「エスキモーに氷を売る」と比べると。
    読みやすくするには、ある程度原文から離れるのもしょうがないのかもしれない。

  • 必ず言われることですが、この日本語のタイトルはひどすぎます。新約聖書の本文批評学の歴史や現在の課題などが、読みやすくまとめられています。ある程度基礎知識は必要かもしれませんが、入門には良いです。アーマンの考えが良いかどうかはまた別の問題ですが。

  • 『捏造された聖書』とは、またキャッチーなタイトルだが、訳者もあとがきで言うように内容は実に健全で誠実に聖書学、とりわけ本文批評学の分野から新約聖書の読み方を解かりやすく解き明かした一冊であります。

    原題は・・・Misquoting Jesus-The story behind who changed the Bible and why
    (イエスの誤引用−聖書を改変した人々とその理由の背後にある物語)

    そもそも聖書など、古代の文書というのは「本文批評」を通さねば読むことの出来ないものです。
    なぜならその原本は既に失われていて、何代にもおよぶ写本によって現代にまで受け継がれてきているからです。
    「本文批評」もしくは「正文批判」というのは、この写本から写本というふうに受け継がれる中で生じる伝言ゲーム的な誤り、すなわち誤訳、改竄、書き足し、削除の可能性をあらゆる角度から根気良く追求し、その本来の姿を浮かび上がらせようとするものであります。
    本書はその入門編として最適の出来栄えであると思います。

    簡単に「伝言ゲーム的誤り」と言っても、その数は驚くほど多く、ある部分など、そっくりそのまま後世の創作であったりするのであります。
    決して悪意のある改竄というわけでもなく、その時々の信仰や価値観から書き足されたり削除されたり、解釈の仕方から補足目的で語句を変えたりされてきたものであるワケです。

    現代においてさえ、翻訳段階で改竄される場合もある。
    しかし、この場合は<ある教派の信仰>に沿わせるのが目的であったりするワケで、故意に意味を変えようとするのであるから正文批評の立場からはまさに捏造であり、悪意というほか無いのだが・・・。

    昨今は書物も価格設定が高く、文庫でも千円を越えるものが相当出ているが、この本はハードカバーにしては割り合い安価に押さえられていてその点でもお勧めである。

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