日中危機はなぜ起こるのか―アメリカが恐れるシナリオ

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制作 : Richard C. Bush  森山 尚美  西 恭之 
  • 柏書房 (2012年1月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760140381

日中危機はなぜ起こるのか―アメリカが恐れるシナリオの感想・レビュー・書評

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  • 尖閣諸島をめぐる日中の角逐が凄まじい今、現実が先に立ち、内容はやや風化している印象。ただ、中国の対日政策に関する分析はいまでも読む価値あり。
    アメリカ民主党=反日、共和党=親日、というステレオタイプはもう通用しない。

  • 近年見た現代の日中関係の分析では飛び抜けて良作だった
    極めて冷静に感情論などを排し、日本と中国の政策を論じていて、読後的に想像しうる未来はやや陰惨なものですが、交流が進めばあるいはという思いもまた強くもちました

  • 本書の著者、ブッシュ氏は(訳者による後書きによれば)20年間、アメリカの東アジア政策の現場で実務にたずさわってきたキャリアの持ち主。
    本書はそんな経験豊富なベテランによって日中関係に関する詳細な分析が行われている本です。

    冒頭、以下の日中関係の経緯について解説し、

    1970年代には関係構築の基礎固めを行った両国だったが、80年代になると様々な問題が表面化し始める。
    しかし、その時には関係修復が半ば「儀式的に」行われており、深刻な問題とはならなかった。
    所が90年代に入ると両国関係は徐々に変わり、日中互いに相手に対するカード(日本の場合は経済援助、中国の場合は歴史認識)の効き目がなくなりつつある事に苛立ちを深める。
    以降、互いに相手の思惑を読み違え、両国間に不信感が増幅されて行き、現在に至る。


    以降、両国の軍事力、勢力圏がぶつかり合う東シナ海をめぐる両国関係の経緯、両国の軍事機構及び統治機構、両国の国内世論とそれが両国間系に与える影響、両国の緊張状態への対処能力、両国とアメリカとの関係、危機がエスカレートするのを防ぐ為の提言が解説されています。

    著者は、これらの解説を通して読者に提示してきた現状を基に以下シナリオを想定し、

    東シナ海の現場で衝突が起きる。
    両国首脳部に衝突に関する正確な情報が伝わらず、互いに相手の意図を読み違え、日中間で軍事衝突発生。
    日本は緒戦で勝利するものの、中国の大規模報復攻撃を招く。
    その結果、中国政府にとっても人民解放軍を制御する事が難しくなり、日本は外交的な解決を模索するが「和解が屈辱的な降伏と受け取られる」事を警戒する。
    そして日本はアメリカカードを切り、この問題に介入する様にアメリカに圧力をかける。


    次の事を指摘しています。

    日本はアメリカに見捨てられるのではないかと心配しているが、アメリカは日本が(法律上の手続きにこだわり、現状に適した行動をとらない傾向がある為)自国とともに戦う準備が出来ていないと考え、日本によって不要な紛争に巻き込まれることを恐れている。
    また中国はアメリカは必ず日本を助けると考えており、その支援は(アメリカの度重なる保証にも関わらず)アメリカが中国に対する封じ込め戦略をとっている証拠と見なす。


    本書によれば、両国の対立激化の(比較的)直接的な原因として、両国が互いに相手の意図を誤読し、それが積み重なっている事を述べています。
    またその誤読の原因として

    日中ともにインテリジェンス機構に問題を抱え、正確な情報収集に障害がある。
    また収集した情報が首脳部に伝達される経路にも問題があり、情報が無視される危険がある。
    日中ともに集団指導体制であり、想定外の事態に対する対処能力が低い。

    を指摘。
    加えて、両国首脳部の選択肢を狭めることにもつながる両国国内世論の激化を引き起こすプロセスとして、以下の事を指摘しています。

    日本の機密保護は無きに等しく、両国関係が激化しない為に秘密にしなければいけない情報もマスコミに漏れる。
    そして扇動的な日本のマスコミ報道と、その報道を通じて中国国民に対しても秘密が暴露されることによって両国国内世論が先鋭化する。

    これらの解説を行った後、最終章で著者は、両国の本格的な衝突を未然に防ぐ方法として、東シナ海において(1960年代及び70年代に米ソ両空海軍が戦略上全く意味の無いチキンゲームを繰り返した結果、生まれた)米ソ海上事故防止協定(INCESA)を参考にした海上連絡メカニズムの構築を提言しています。

    著者自身、両国の根深い相互不審、そして軍事交流や上記のようなメカニズムを(互いに相手に対する不信感が渦巻く中、トラブルを未然に防ぎ、やがてはある種、ある程度の信頼関係構築へ結びつけるメカニズムとしてではなく)現在の信頼関係の度合いを表明する道具として見なしている中国の態度によって、この提言が実現する可能性は厳しいと指摘していますが、両国関係の「全ての」問題を解決できなくても、現在解決できる問題を解決していけば両国関係の未来の影は暗黒ではないとの信頼につながると述べ、本書を締めています。


    内容は多岐に渡り、詳細な物となっていますのでかなり説得力があります。
    また何より東日本大震災の折り、全国民に明かになった日本中枢の想定外の事態に対処する能力の欠陥が、日本は自らの機構改革に真剣に取り組む必要がある事を明示しており、本書の指摘の妥当性を強く擁護しています。
    現状、日中の信頼関係は落ちる所まで落ちたと言った感じですが、日本としてはこの状況下でも(中国をいたずらに刺激しない様にしながら)危機管理能力を高める必要がある事を理解させてくれる本でした。

    現在の日本の状況を考えると、多くの人に読まれるべき一冊なのは間違いがありません。
    一読を強くお進めします。

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日中危機はなぜ起こるのか―アメリカが恐れるシナリオの作品紹介

安全保障レジームの創設を急がなければ、衝突は繰り返されるだろう。未来の影、国内政治、安全保障のジレンマ…。尖閣はじめ東シナ海をめぐる構図を解明!ブルッキングス研究所の衝撃レポート。

日中危機はなぜ起こるのか―アメリカが恐れるシナリオはこんな本です

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