不完全都市: 神戸・ニュ-ヨ-ク・ベルリン

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761540715

作品紹介・あらすじ

都市の破壊/再生をつぶさに追いかけ、空間浄化の危険と不可能性をえぐり出す。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/38063

  •  不完全都市というのは、自分なりに理解すれば、ホームレスとかスラムとかを抱えつつ、世界都市として存在している都市をいうようだ。

     被災後の神戸、ニューヨーク、特にグランドゼロ、ベルリンを例に具体的かつ批判的に都市計画を語っている。

     グランドゼロの港湾局の問題、ベルリンの統一後の混乱もおもしろいが、ここは、被災後の神戸の評価について、襟を正したい。

    (1)区画整理、再開発の地域では人口回復が遅い。(p45)

     今回の被災で、本当に手続や権利調整に時間のかかる土地区画整理事業を全域的にかけていいものだろうか。神戸の反省がいかせれてるか?

    (2)神戸市は建築行政の新しい制度として、1999年に近隣住環境計画を条例化し、道路幅員などに関係する基準を緩和した。(p84)

     不勉強だった。早速調べてみる。

    (3)公権力の都市計画は「合意形成」に基づく正統性の再生を必要とした。しかし、都市の場所が原理的に競合の空間を生み出すとすれば「合意形成」はあくまで仮構物でしかありえない。(p38)

     これは、法定事業で短期的に合意形成をする以上、先生の指摘はむしろ制度に内在したもの。ただし、今の復興計画の案はそのまま都市計画として強制力を与えていいものかどうかの検証は必要と考える。

     そのほか、ベルリンの記述など、大変おもしろい。今度は、ベルリンのまちあるきに出かけてみたい気分になった。

  • 20世紀末から21世紀初頭の神戸・ニューヨーク・ベルリンに起こった激動を丹念に追った一冊。引用文献の量は学術的背景を保障しており、加えて都市計画史としても読める。硬質な文章は明快に、そして客観的に都市に関わる人々の動きを描いている。

    著者の視点は、「都市計画を社会・政治的に中性の領域の中に位置づける見方は依然として根強く残っている。(中略)しかし、都市における摩擦の力学は”競合の空間”を算出し続け、それへの技術の関与は中性ではあり得ない。」という一文に明快に表出しているように思う。

    確かに現実の世界では、都市計画は単なる学問として中性ではありえない以上、様々な登場人物による「競合の空間」が現出する。つまりそれが都市そのものである、ということである。

    しかしながら、競合の空間としての都市は、その市場優先主義を背景に弱者を切り捨て、多様性を喪失していく。

    著者はあくまで客観的に事実を積み上げているが、そこには明らかに都市空間における多様性の喪失、弱者切り捨て対するエクスキューズを孕んでいるように感じられる。私も同意見。

    個人的には神戸で震災に遭い、9.11は会社のTVで崩壊するWTCを観、ベルリンの都市計画には92年のシュプリーボーゲン、93年のシュプレーインゼルのコンペに参加した経験などから思い入れもあり読み進んた。読み応え充分であった。お薦め。

  • 分類=都市計画・神戸(日本)、ニューヨーク(アメリカ)・ベルリン(ドイツ)。03年8月。

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著者プロフィール

1958年生まれ。神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。専門は住宅問題・都市計画。主な著書に、『東京の果てに』『都市の条件』(いずれもNTT出版)、『住宅政策のどこが問題か』(光文社新書)がある。

「2020年 『マイホームの彼方に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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