- Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
- / ISBN・EAN: 9784763006295
作品紹介・あらすじ
この作品集は、驚愕の世界を描き続け、31歳で急逝した彼の創作活動10年の軌跡である。
感想・レビュー・書評
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本書を見ているとなんともやりきれない気持ちになってくる。魂を抜かれたような、目の虚ろな、あるいは怒りに満ちた、悲しげな、怯えたような、(おもに)サラリーマンのような男性が、事務用品や家電製品や建物(とくに生権力の発動する舞台になる会社・学校・病院などが多い)などと一体化している。
人間が人間でなくなっていくその過程がいろんなヴァリエーションで描かれている。毎日毎日同じことを繰り返しているうちに、環境が内面化されると同時に、内面が環境化していく。
お辞儀をしすぎて壁掛けフックになったり、コンビニで支払いをする男の両手がベルトコンベアになっていたりと、そうなったいきさつを想像すると息苦しく胸苦しくなる。
その苦しさから逃れるため、男たちはただただ弱ったなあという顔をして、状況に甘んじている。
しかしだんだんと男たちの顔に悲しみや苦痛や怒りがあからさまに表れてくるところが不穏だ。それにつれて絵も陰惨に、象徴的になってくる。
本書に描かれた男たちはみな、カフカの『変身』のグレゴール・ザムザだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【展覧会】
石田徹也―僕たちの自画像―展
主催:練馬区立美術館
会場:練馬区立美術館 企画展示室1・2
会期:2008年11月9日(日)~12月28日(日)
観覧料:一般 500円
観覧日:2008年11月29日
「石田徹也は1973年に焼津市に生まれ、静岡県立焼津中央高校を経て、武蔵野美術大学を卒業後、東京にて精力的に絵画の発表を続けてきた。2005年5月に東京の町田付近にて踏切事故にあい、不帰の人となった。NHK「新日曜美術館」にて紹介後、多くの鑑賞者に衝撃を与えることとなった。」(静岡県立美術館のホームページより)
NHK「新日曜美術館」で紹介されたのですが、その時の展覧会は、静岡県立美術館ということで、ちょっと見に行くには遠いのであきらめました。
練馬区立美術館で開催されていることがわかったので、見てきました。
感情のないうつろな表情の人物たちが、描かれています。現代の若者たちの表情でもあるようです。
「多くの作品に登場するうつろな目をした人物は、彼の分身であるとともに、現代に生きる若者たちの自画像でもあります。また、それは現代社会の中で生きる私たちが日頃は心の奥底に押し隠してしまっている精神のドラマを表現したものとして、世代を超えた共感を呼んでいます。あるときは哀しく、あるときは悲痛であり、また、滑稽な現代人の姿を、石田徹也は精密に観察しながら丹念に描き出しました。」(展覧会パンフレットより)
作品は、石田徹也公式ホームページでも見ることができます。
http://www.tetsuyaishida.jp/
犬小屋のなかの犬を描いた作品は、犬小屋の中からの視点で描かれていて、ちょっと不思議です。犬ののんびりした表情が心地いいのですが、犬小屋の板の木目が不思議な背景となっています。
毎日広告デザイン賞優秀賞受賞の「居酒屋発」の機関車と一体化した若者たちは楽しそうに見えます。
年代を追うごとに、さみしそうな表情になっていくようです。
会場には、ノートも展示してありましたが、思いついたテーマを書きとめています。
また機会があれば見てみたいと思います。
(2009年2月27日・記) -
【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
初めて買った画集。
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おそろしい。
こんな絵を書くことができる人がいたんだなぁ。
http://www.tetsuyaishida.jp/gallery/
ここでみれる -
画集のメッセージが強烈で、個々の作品に深みを感じた。
消費社会や機械で無機質な社会に対しての悲しさや憤り、落胆など色々な感情を描いている。 -
偶然見た日曜美術館の特集で石田徹也を知り、見た瞬間一気に引き込まれた「触手」という絵が今でも忘れられない。
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遺作集だから悲しさが醸成されるのではなく、一作品一作品が石田氏自身のとんでもない孤独感・疎外感が横溢しているから悲しいのだ。こころが疲れているときに氏の作品に出逢うと危険だ。
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【選書者コメント】なんでこんなもの書いた!
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数年前に日曜美術館特集で紹介されていて
見た瞬間、忘れられない衝撃をうけた
いつかTVで観た、飛べそうもないボロボロのプロペラ機と一体化した男の絵
偶然書店で見つけて思わずページをめくった
役割を与えられて社会にはめ込まれて
でもそのなかで奮闘している現代社会に生きる人々
学校や就職面接、スーツのサラリーマン・・・社会の違和感をこんな風に表せるのか
どの絵にも登場する男の目からあふれ出す孤独感と、笑わせるような人とモノの組み合わせ
冷たいようで温かい、息苦しくなるけど、目が離せない
いろんな感情が刺激されて
書店でひとり、ページをめくりながら泣きそうになっていた