一歩を越える勇気

著者 :
  • サンマーク出版
3.91
  • (143)
  • (173)
  • (121)
  • (23)
  • (6)
本棚登録 : 1185
感想 : 172
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763199799

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先日、ラジオを聞いていてこの冒険家のことを知ったのですが、何
    でも20代にして世界6大陸最高峰を単独登頂したとのこと。また、
    ヒマラヤからのライブ映像配信などでも話題となっているようです。

    もっともそんな今時のやり方を快く思わない人もいるようですし、
    そもそも厳密な意味では「単独登頂」や「無酸素登山」でないのに
    「単独・無酸素」と誇張していると批判する人々もいるようです。

    ただし、色々な批判があっても彼が極限の地で自分の限界に挑戦し
    てきたという事実には変わりありませんし、その過程で感じ、考え、
    獲得してきた体験には、やはり極限状態ならではの輝きがあります。

    中でも印象的なのが、酸素欠乏で進めなくなった時、「ありがとう」
    とつぶやいてみたら何故か力でわいて登頂できたというエピソード
    です。この体験から、若き冒険家は、苦しみには対抗するのではな
    く、受け入れることが大事なのではないか、と思うようになります。
    負けそうな自分を否定するのではなく、弱さを含め自分の存在を受
    け入れれば、自然が生かしてくれる。「生きる」のでなく「生かさ
    れる」。そのためには「受け入れる」という発想の転換です。

    以後、「人間が本当に力を発揮できるときというのは、すべてを受
    け入れられたときなのではないか」と思い、執着を捨て、「ありが
    とう…ありがとう」と口にしながら一歩一歩登るようになった著者。
    その姿勢には、不意の悲しみや苦しみ、理不尽な状況に際しても、
    「ありがとう」と言ってまずは全てを受け入れてみる、ということ
    の大切さを教えられます。

    なお、本書のタイトルには『一歩を越える勇気』とありますが、何
    故「勇気」なのか。読みながら考えたのはこんなことでした。例え
    ば、進化論は、突然変異で爬虫類に羽が生えて鳥になったと教えま
    す。でも、羽が生えても、「飛んでみよう」という意志がない限り、
    その羽は使われることはないし、飛べるようにはならないはずです。
    つまり、進化の鍵を握るのは、新しいことをする意志=勇気ではな
    いのか。そうでないと生物は自らの可能性を広げられない。著者が
    「生きることは冒険である」と信じ、冒険の可能性にかけるのも、
    きっと自らの生命の可能性を使い切りたいと思うからでしょう。

    ちゃんと与えられた命を使うべく、勇気を持って一歩を踏み出して
    いるか。改めて考えさせられる一冊です。是非、読んでみて下さい。

    =====================================================

    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

    =====================================================

    山ではほんの少しの我欲が危険を呼ぶ。

    「死」と隣り合せになることで「生」を感じ、生きていることへの
    感謝の気持ちが出てくるのだ。死を覚悟することによって、自分は
    何のために生きるのか、何に命を果たすのかを考えるようになる。

    酸素マスクをとってあげると、声も出せないはずなのに何かを伝え
    ようとしている。母は小さな声で「ありがとう」と口を動かした。
    そして口を閉じて、眠るように息を引き取った。
    僕は廊下で夜が明けるまで泣きつづけた。
    それから僕は、母に誓った。けっして弱音を吐かないこと。そして、
    最期に「ありがとう」を言ってこの世から去れる人間になれるよう
    にと。そのためには、中途半端に生きてはいけない。

    苦しみに対抗しようとしても力は出ない。この苦しみを受け入れる
    しかないのだ。苦しみも不安もすべては自然の一部であり、僕はそ
    の自然の中で生かされている。

    人間は、自分の力だけでは生きられない。人間は山にいても、下界
    にいても、大いなる自然の中で生かされている。

    ニートでも引きこもりでも、そのままでいいと思っている人はいな
    い。誰もが自分の殻を破り、一歩踏み出し、自分が生まれてきたこ
    の命を思いっきり何かに使いたいと思っているはずだ。

    生きることは、冒険である。
    挑戦しても、後悔しても、必ずリスクがある。
    僕は「冒険の共有」をすることによって、誰かの一歩踏み出す勇気
    になりたいのだ。

    登山をしているときの、大きな課題がある。
    それは「執着を捨てる」ということだ。

    「執着」をすると大切なことが見えなくなる。山ではいつもこの執
    着との戦いなのだ。

    つらさに負けてしまうような弱い自分を克服し、打ち勝つことで初
    めて登れるのではないかと思っていた。
    でも、それはたぶん間違いで、人間が本当に力を発揮できるときと
    いうのは、すべてを受け入れられたときなのではないかと思う。
    不安も、苦しみも、いろんな気持ちも。何がいいとか悪いとかがま
    ったくなくて、とにかくすべてがいいんだということ。執着せずに、
    これでいいのだと思うこと。

    ある方向だけに執着してしまうのではなく、すべてを受け入れるこ
    とによって、自分がど真ん中に来るようにする。
    執着をしないとは、すべてをなくすことではなく、すべてに満たさ
    れることである。

    「苦しみにありがとう」
    僕は本気でそう思いながら山を登っている。苦しければ苦しいとき
    ほど、出てくる言葉だ。

    苦しみも不安もすべては自然の一部であり、僕らはその自然の中の
    一部である。
    苦しみを受け入れ、そして感謝する。「ありがとう」は、困難な時
    代を乗り越える力のある言葉かもしれない。

    世界の一番高いところから、僕は祈る。
    そして、その祈りの中で気がついた。同じ青い空の下で、たとえど
    こにいたとしても、自分がどれだけ光り輝けるのかを試されている。
    自分の命を燃やして、何を成し遂げられるのかを試されているのだ。
    どんな困難があったとしても、とにかく挑戦していくことで、自分
    は研かれ、光は増していく。そして、困難という闇は濃ければ濃い
    ほど光は輝く。そしてその夢がかなったとき、闇の中で自分が最高
    に輝ける瞬間が来るのだと思う。

    人間は山では生きていけない。
    人間は人と人がつながるところでしか生きていけないのだ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ●[2]編集後記

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    気づいたらベランダの鉢植えに、すみれの花がびっしりと咲いてい
    ました。娘に、「どうしてこんなところにすみれが咲いているの?」
    と聞かれて、「きっと虫か鳥が種を持ってきたんだよ」と答えなが
    ら、改めて思いました。

    植物は虫や鳥がいるから増えることができる。動けない植物は、他
    の場所に行くには虫や鳥や風に運んでもらうしかありません。動け
    ないという事実を受け入れ、その中でできることを最大限に工夫す
    る。その時、あえて自らの一部を食べさせるなど、自分に執着して
    いないところも凄い。執着せず、全てを受け入れ、生かされること
    で生きる、というのが植物の生き方なのです。

    地球上で最も長く生きてきた生物は植物ですから、サバイバルのた
    めには、もっと植物の生き方を学ぶ必要がありますね。今回ご紹介
    した栗城氏の登山の仕方にも、どこか植物的なものを感じます。平
    均以下の体力しかないと診断された栗城氏が最高峰で生き残ってこ
    れたのも、きっと植物的な知性を働かせてきたからでしょう。

  • 熱いメッセージがたくさんありました。
    体験したからこそ書ける文章と気持ち。
    文章が上手下手というよりも、ストレートなところが良かったです。
    中高生や社会人なりたてくらいの方に読んでほしいですね。

  • 生き抜くこと
    それは最後に感謝できる人生を送れるか。

    生きることとは何か。
    希望(夢)を持ち、行動すること。

    人の夢は絶対に否定してはいけない。

    生きていれば必ず挑戦できる
    生きていれば。どんなことでも。

    これらが印象に残った言葉です。
    大震災で日本は大変な状態だが、生きてさえいれば、希望を捨てなければ、必ず最後に「ありがとう」といえる人生を送れるはず。
    がんばってほしい。

  • ● 人間にとって、長く生きたかどうかは関係ない。大切なのはどう生きるのかだ。

    ● できれば、一日に十回、誰かに自分の夢や目標を語ってみよう。十回口にすることによって、漢字の成り立ちどおり、「叶う」になる。でも十一回以上言ってはいけない。なぜなら、「吐く」になってしまうから。

  • 栗城さんの、経験からのメッセージはとても励まされました。
    個人的には、もう少し山でのエピソードがあったらと思いました。
    リアルタイムの映像もいいですが、栗城さんご自身が“地上”で振り返ったとき、山でのことをどう語るか知りたいです。

  • 日本人初の単独・無酸素登頂をめざして
    ヒマラヤに挑んだ栗城史多のエッセイ。


    登山中の様子のネット中継には、賛否があります。
    ドキュメンタリーをみましたが、
    あまり感じるところはありませんでした。

    ただ、スポンサーを集めて登山をするというスタイルはすごいと思う。
    自分の情熱をプレゼンして、人や企業を動かすことができる
    栗城さんという人物は、人をひきつける力を持っているのでしょう。
    すばらしき「人間力」です。



    本自体はいまいちでした。
    『少々、息苦しくなる世界ですが、酸素ボンベを片手にお楽しみください。』と最初にあったとおり、
    確かに、息苦しかったです。
    ある意味、私の頭は高山病状態だったのかもしれません。
    単に寝不足、というだけかな。

  • <読んだ日>
    110219

    <概要>
    27歳で単独・無酸素エベレスト登頂に挑戦した登山家「栗城史多」のエッセイ。Giftedでない自分だが、夢を持ち続け、一歩を踏み出していく、それによってこんなに素晴らしい世界にたどりつけることを、世界中の人と共有したい!という想いを綴った本。

    <感想>
    内容としては、栗城氏の想い・考え・行動・結果が淡々と書いてあるだけであるが、ところどころ「人間としての芯の強さ」みたいなものを感じる部分があり興味深い。さら~っと読むには面白い本。

    <行き先>
    Amazon

  • 上司にとある事を相談した日に、貸して頂いた本


    夢を描き、夢を叶える

    たとえ資金面で困難があったとしても・・・
    たとえ物的支援が足りなかったとしても・・・
    たとえ仲間が身の周りにいなくても・・・

    あきらめずに進んで行く中で、助けが必ず現れる
    本気で挑む事で、賛同してくれる人がいる

    著者が実体験記す中で、
    【自分の夢を叶える】過程を描いています


    「無理・不可能を取っ払いたい」著者の男気溢れる思い

    「山に登る事で、帰るべき所のありがたみを再認識する」普段の生活にある幸せを感じ

    「山登りでは、少しの無理が死に直結する」実体験し

    「夢を叶えるために、夢を志に変える」コトを実行した


    著者は、山登りを通して自分の夢を叶える
    夢を描く→叶える 大切さを学ばせてくれました

  • 読みながら彼の冒険の様子がかなりリアルに伝わってくる。めっちゃ泣けた(T_T)非常に伝わってくるものがある本でした。<br /><br />最初のエベレスト挑戦の所で本書は終わっているが先日2度目のチャレンジで失敗に終わったと言う番組を見た。でも諦めない限り失敗ではない。次のチャレンジもまた頑張って欲しい。<br /><br />今度は生中継に立ち会って、成功するか失敗するか結果のわからない冒険のリアルタイムな共有に参加したい。

  • 昨年TVで観て以来応援をしている登山家のエッセイ。夢を忘れずに突き進む話ではあるが印象に残ったのは「執着をするな」というメッセージ。プレッシャーが襲いかかるときには魔法の呪文があるという。それは「これでいいのだ」という言葉。不安とか緊張とかそういうこともすべて含めて、あるがままを受け入れるという。

    「これでいいのだ」これまで多くの準備をしてきた人が言うのは勇気がいる。自然と対峙してきた数多くの経験から、執着することの危険と、自然への畏怖、敬意からこうした言葉が出てくるのだろう。頑張りすぎない、そんな感覚が書かれていたのが新しいと思った。彼はよく「ありがとう」と口にしながら登山を行うという。そんなことを見習ってみたい。

全172件中 71 - 80件を表示

栗城史多の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×