都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画

著者 :
  • 花伝社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763407627

作品紹介・あらすじ

人口減少社会において都市空間はどう変化していくか。
都市計画、まちづくりを専門に研究する若手准教授が縮小する時代のための都市計画を提起する!
熱心なフィールドワークでの実践を踏まえて考察する縮小する都市の“ポジティブな未来"を提示する、新時代の都市論。

感想・レビュー・書評

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  • 人口減少とそれに伴う都市のスポンジ化の減少についてわかりやすく分析されている。これまでの日本における伝統的な都市計画制度に対する批判及び指摘も的確。

    スポンジシティのレイヤーモデルは、確かに空いた土地に新しい存在意義を与えるという点では有効だが、それが行政/民間/コミュニティ等どのレベルで行われるべきであるかは曖昧。人口という都市のエネルギー(筆者の言う「捌く力」)自体が弱まってきた時、この解決方法には無理も出てくるだろう。しかし、一つの可能性としては有効であり、それを行うべき主体(恐らくコミュニティが主に想定されている)が出現することによって、地域の市民社会の発展およびソーシャルキャピタルの蓄積が期待できる。

    これらの考え方及び制度への批判を踏まえ、法的制度や民間のレベルでも何ができるのか考えるヒントになる。

  • 人口減少による都市衰退のイメージが変わる面白い本。都市が衰退していくと都市が縮んで小さくなるイメージだったが、実際は都市の大きさや形は変わらずにスポンジみたいにスカスカになるイメージとなる。
    机上での都市計画の歴史に関する分析から、足を使ってフィールドワークした実態に即した分析まで説得力がある。
    youtubeでの饗庭さんの対談も聞いてみたが、実際に都市の輪郭を探すために郊外まで車を走らせたとのこと。都市の中心程開発が先に進むので、建物が古く、都市の輪郭に行くほど建物新しくなっていくような現象が各地で発生しており、周りから縮小してコンパクトにすることはやはり難しいと。

    今後衰退する都市の対策として、コンパクトシティーのように都市の外周部から集約して中心に集める方法もあるけど、それは実際難しく、場当たり的に発生したスポンジの穴(空き家、統廃合され使われなくなった施設等)を上手く埋める必要がある。穴を埋める具体な対策は、その周辺環境や条件が大きく異なるので、コンパクトシティのような街全体を縮小する方法論は、難しく
    個別の事業(空き家の利活用、公有地の活用等)として、一つ一つ解決していく必要がある。

  • 人口減少時代の都市はスプロールの逆向き、内側に縮小していくのではなく、スポンジのようにだんだん密度が低くなっていく。すごくわかりやすいイメージを持つことができた。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704455

  • 開発目標11:住み続けられるまちづくりを
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99825954

  • 2019年の個人的ヒットの一冊。日本の都市をこれからどうしていくべきかを、コンパクトシティ等既存の政策を理性的に批判しつつ論じている。スポンジのように空洞化が進む、というイメージは木が朽ちる時に似ていて直感的にも納得感が高い。

  • 空き家が増える都市の活用について考える参考になりました。市場原理を組み込み急拡大した都市が、人口減少によりスポンジのように虫食いだらけになる現実が、大阪にも来てるなと思う今日日この頃。

  • 都市人口が全体の9割を占める国家、日本。いまや少子高齢化が進みスポンジ化の傾向が見られる。

    近年は「コンパクトシティ」が声高に叫ばれ、本書でもあるべき姿であることは肯定しつつ短期的な転換は難しいと主張している。

    ではどのように都市をシュリンクしていく、「たたむ」べきなのか。
    ここでは、大枠の方向性は示しつつ個別の事情にあわせて逐次最適化するという方法論が提示される。
    ある種のアジャイル開発的な発想で、5章では実際にその成果の一端も見られる。

    「たたむ」ことを悲観的に捉えず、むしろその変化の中で活路を見出す。これからの日本にとって大切なことが織り込まれた一冊。

  • 518.8||Ai

  • ・日本は人口の91.3%が都市に住む。そのような国で人口減少しているのは日本が世界初。
    ・中世の都市的性格を有する場所「市、宿、浦、泊、津、境内、門前」

    最初は興味深く読んでいたが、第2章都市を動かす人口の波、第3章縮小する都市空間の可能性、第4章都市をたたむための技術は頭のメモリが足りなかったので飛ばし読み。

    興味のある第5章都市のたたみかた へ。

    事例報告が2件。
    1・南武線のどこかの空き家活用。中心を街道が貫く歴史ある街だがスプロール(虫食い)状況。

    発端は地域で活動する建築家と都市農地の再生に取り組む市民グループが小さな平屋建ての借家を使って地域で活動する拠点をつくることになり著者に相談に来た。
    その借家の調査の過程で近辺に大きな空き家があることがわかったことから。
    オーナー退職までの5年間。幹線道路に面する三百坪。
    近隣の学生等も巻き込み、皆が使うことができる拠点の企画をつくるワークショップを数度にわたり開催。
    建物を中心にそれを使う人たちの社会的なつながりを形成していく取り組みでもあった。
    結果的にシェアハウス、コミュニティカフェ、シェアオフィス、工房、イングリッシュガーデンを混在させたプランに。
    草むしりや大掃除のワークショップなども。←作業量がわかってよい。

    2・東北地方の人口13万人の都市での空き家活用まちづくり計画とランド・バンク事業。
    こちらは概念的な説明が多く、読み飛ばした。

    第6章災害復興から学ぶも読み飛ばす。

    第7章都市をたたむことの先にあるもの
    どういう力がたたまれた空間を支えるか。
    都市の中でどこでも用を足されないようにするための都市計画という例がわかりやすい。
    政府→税で公衆トイレ設置
    上記の対策は限られるためコミュニティが発生→ここで用をたすべからず 看板を設置、見回りなど→人口減少するとこういう役割も果たせない→鳥居のマークを用を足してはいけないところに書く
    コストが一番小さな鳥居のマークを書くというほうほがたたまれた空間を支える都市計画。

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著者プロフィール

1971年兵庫県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(工学)。東京都立大学都市環境学部都市政策科学科教授。専門は都市計画・まちづくり。主な著書に『都市をたたむ』(花伝社、2015)、『平成都市計画史』(花伝社、2021)『都市の問診』(鹿島出版会、2022)がある。

「2022年 『シティ・カスタマイズ 自分仕様にまちを変えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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