小学校での英語教育は必要ない!

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  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766411713

作品紹介・あらすじ

「早くから英語に親しませておいた方が英語に対する抵抗感がなくなる」は本当か?「小学校ではほかの教科の内容をしっかりと学ぶ」ことが先決ではないか?!英語教育、言語教育、認知心理学、言語学、言語政策などさまざまな論点から学校英語教育のあるべき姿を模索する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人バイリンガル化は「手段が目的」。英語を使うための目的の部分を育てなくてはならないゾ!


    いまさらの議論。2005年の著作を今読む。現在、英語教育強化の方向へ進んでいる。授業は全部英語でやるって方へ向かってる。
    全部英語授業を実施するなら選択教科を増やしたゆとり教育に戻るしかないと思う。いや、ゆとり教育って呼び方を変えて、新しい教育を考えな。
    土曜授業を実施して、土曜は4時間全部自分の選択した教科をできるとか、自己裁量の幅を追加することできないかな。勉強が嫌なら4時間ずっと体育とか技家音美の実技に集中して、ハイレベルな課題じっくりに取り組めるしね。

    とりあえず、この本を要約すると、
    1、早期英語教育を実施すれば、英語ペラペラになれるみたいな妄想があるけど、そんなん無理。英語ペラペラの人は血のにじむような努力の果てに身に着けたんだ。小学校から始めても数百時間の勉強時間しか増えないんだから、結局何も変わらない。
    2、英語は手段である。経済界は英語でビジネスに通用する人材がほしいんだろうが、日本語ですらビジネスに通用しない連中に英語で何が話せるのか。手段を極めても、中身がなけりゃ意味はない。

    こんなとこかな。

    1は確かにそうだと思う。求める部分がおかしい。もし子供を本当にバイリンガルレベルにしたいなら、家庭で英語を使って子供を英語漬けにしなけりゃ無理だろう。そこまでいけば親の責任だ。
    公立学校にはできない子は絶対いる。否定できない。目指すところが英語のエキスパ-トを養成することなら、そういう子たちは無視して授業を進めなければいけないだろう。でもそれはだめだろう。
    それじゃあ結局、中級レベルの英語教育をたくさんやるだけだから、エキスパートは生み出せない。

    2もそうだ。前にappleで働いていたエリートのエッセイを読んだけど、ビジネス英会話のレベルはヤバい。常人では無理だ。でも海外との英語での取引は大丈夫そうである。基本メールでの取引だから、英語の文章が作れれば大丈夫らしい。大学受験してるんだったらこれくらいは行けると思う。
    だったらもっと総合的な教養レベルを上げたほうがいいだろうね。
    それに1でもわかったけど、英語は結局自力で習得しなければだめなんだと。じゃあ、英語を使いたくなるような知的レベルに引き上げるほうが大事なんだろうなと思う。

    ____

    p48  錯角!?
    いくら多くの人が小学校早期英語教育に期待しても錯角は錯角です。   …らしい。数学やんww

    p51  販促『英語耳ー発音ができるとリスニングができるー』松澤喜好

    p132 自分の魂から、あるいは自分の心から湧き出るような「ことばの力」というものが、今の若い世代や子供たちの世代から消えつつあるのではないか」
    なんだ、それ? じゃあ何歳まので人が「ことばの力」があるんや?
    言いたいことも言えないこんな世の中で…
    ことばの力なんてのは世の中の人みんな去勢されてるよ

    p153  言語仮面からの問題
    「このメモを鬼入君が桃山君が野村君がいつも一人で本を読んでいる公園でデートをしたいと思っている薫さんに買ってあげたのと同じ本を図書館で読んでいる女の人に渡しなさい。」
    主語と動詞と名詞節とかに分けると見えてくる。これは面白い。

    p196  三流アメリカ人になるな。
    英語が喋れないとそれだけでアメリカ人に引け目を感じる。敗戦国の悪いところ。
    どうせ英語をしゃべれるにしても、語感的に日本人はネイティヴのようにはなれない。よ。変に英語に傾倒しすぎて思想まで毒されてはいけないよ。

    p239    イヌイットの雪の表現の数を例に…
    言語が人の価値観を決めている。早期の多言語学習はアイデンティティの混乱を招く。
    …たぶんそういう実例もあるし、多言語を学んだからこそ世界が広がったとかもあるはず。一概に言えない。
    これは理論武装としては「そんな装備で大丈夫か?」な奴だと思う。

    p248   語力! ここの記述いい!
    コミュニケーション力=①伝える力②理解する力③会話を広げて深める力
    ①伝える力…これは英語話せなくてもいける。ボディランもあるし、筆談もある。
    ②理解力…ゆっくり話してもらえ
    ③広げて深める…これだよ、これ。人間力ってのは。
    小手先の能力を伸ばすべきか、人間の本質を深めるべきか、さぁ、選べ!!


    ___

    文部科学省(だけでなくお上は)は小手先に走りすぎてるってことかな。

  • 文科省が定めているのは国際理解。理念は壮大だけど実践は厳しい。勢い「英語」になってしまうのか・・・

  • 今井先生が書いているので、3シリーズの中で最初に読んだ。全部反対派の意見ばかりなので、最後のほうは「もうわかったから」という気持ちにもなる。[06/08/05]

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授。関西大学・中京大学客員教授。日本学術会議連携会員。Ph.D.(MIT、1981、言語学)。東京言語研究所運営委員長、日本認知科学会会長、言語科学会会長などを歴任。専門は言語の認知科学および言語教育。言語教育関係の著作として、『日本語からはじめる小学校英語――ことばの力を育むためのマニュアル』(開拓社、2019年、浦谷淳子・齋藤菊枝と共編著)、『学習英文法を見直したい』(研究社、2012年、編著)、『ことばの力を育む』(慶應義塾大学出版会、2008年、窪園晴夫との共編著)など。

「2021年 『どうする、小学校英語?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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