インテリジェンス―機密から政策へ

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制作 : Mark M. Lowenthal  茂田 宏 
  • 慶應義塾大学出版会 (2011年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766418262

インテリジェンス―機密から政策への感想・レビュー・書評

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  • インテリジェンス。
    この重要性は昨今の日本でも盛んに言われる様になりました。
    しかし、日本の現状と言えば、インテリジェンスに接した経験が少ない政治家や政治学者によりこれが過小評価されていたり、逆に陰謀論めいたおどろおどろしい物かの様に受け止められています。

    原著はアメリカの大学や大学院でインテリジェンスの教科書として広く用いられており、本書はこの原著を上記の現状を憂慮した外務官僚らが自ら翻訳した物となります。

    この様な書籍なので実際のスパイ行動の詳細を述べた物ではなく、インテリジェンス提供者と政策担当者との関係性やインテリジェンス組織の運営における問題点、9.11やイラク戦争後のインテリジェンス組織改革の障害などに焦点を当てた内容となっています。

    尚、アメリカの教科書と言う事もあり、本書が取り上げているインテリジェンス組織はアメリカの物となっています。
    (ただし最終章の15章ではイギリス、中国、フランス、イスラエル、ロシアの諜報機関についての簡単な解説が載っています)

    内容は盛りだくさんなのですが、基本的に本書では

    インテリジェンスとは、政策担当者が自らの政策を実行する際に助けとなるインフォメーションをまとめたもの

    とされており、このインフォメーションの入手手段の事は指していません。
    従って、情報入手方法(ヒューミント、シギントと言った各方法)について解説している項目もありますが、それよりも入手したインフォメーションを分析し、インテリジェンスとして政策担当者に提供する過程において発生する障害や、インテリジェンス提供者と政策担当者との関係性により発生する障害(例:インテリジェンスの政治化)についての解説が多かったです。

    他の内容として

    冷戦終結後の1990年代において、「平和の配当」として(政治力の強いペンタゴンの)国防予算では無く、(比較的政治力が弱い)インテリジェンス機関の予算が削減され、その結果、退職、あるいはそもそも最初から採用されなかった人数も含めて約2万3千人もの分析官が削減され、インテリジェンスコミュニティの分析力が低下した。

    専門性の高い分析官は緊急事態だからと言って簡単には補充できないが、現在、国家が優先分野としていない分野の分析官はどの様に確保するか。

    分析官の人事評価はどの様に下すべきか。

    インテリジェンスコミュニティ内において、分析結果が玉虫色になる等の問題が発生する可能性がある。

    分析結果が公表され、それが議会の党派争いに用いられるケースが多くなっており、この党派争いに巻き込まれたくない分析官が分析内容を差し障りの無い物に改変しないか。

    シギントに頼ってヒューミントが疎かになっていると言う意見はよく言われるが、実際にはヒューミントの実行可能性やそれが失敗した時に発生するコストの事を考えれば、技術的な諜報手段を重宝する(あるいは用いるしかない)のには妥当性がある場合がある。

    公開情報をもっと活用すべき。
    (情報入手方法はこの方法さえあれば他の方法は要らないと言う事は無い)

    政策担当者に渡される分析結果(=インテリジェンス)は「絶対的な真実」では無い。また、努力を続ければ「絶対的な真実」が入手できる訳では無い。
    (これは、インテリジェンスとは分析官が限られた情報に基づいて、自らの専門能力を駆使して¨行間¨を埋めるような分析を行った結果、出てくる物だから)

    政策担当者が自分から欲しいインテリジェンスを伝えなければ、インテリジェンス提供者側は政策担当者のニーズを自ら検討しなければいけないと言う事態に陥る。


    等が気になった箇所でしょうか。


    著者は本書で何らかの結論を出そうとしている訳ではなく、本書を切っ掛けとして読者にインテリジェンスについて考え始めさせる事が目的なので、内容は多岐にわたり、分析的、思索的な物となっています。

    ただ、インテリジェンスと政策担当者との関係やインテリジェンス機関の運営上の障害に関して、自分が全く知らなかったのだと言う事はおぼろげながらも理解できる内容となっています。

    インテリジェンスに対する理解を、漠然としたイメージから(ほんの少しでも)はっきりとした物に変えるのに役立つのでは無いでしょうか。

    インテリジェンスに関心があれば一読する価値はあるかと思います。

  • アメリカの大学のインテリジェンス講義で使われている教科書とのことです。
    日本のインテリジェンス教科書本のほとんどが参考文献としてます。
    なにぶん翻訳なので、文章の難度が高い部分もありますが、内容もボリュームがあります。
    インテリジェンスを理解するために、おさえておきたい一冊ですね。

  • 情報共有ですら、まず情報収集にかかっている。
    インテリジェンス機関の役割は、大量破壊兵器を追求している可能性のある国家を特定し、計画の現状とともに、他の計画とのつながりや関連物資の入手先や専門知識などを突き止めることである。

  • 391.6||Lo

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。アドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/4283663.html

    「この本は専門書レベルで、インテリジェンス初学者にとっては若干ハードルが高いと思われる。この本はアメリカのインテリジェンスの機関を中心に取り上げられており、歴史・現状の課題を知ることができる。終わりに、イギリス、中国、フランス、イスラエル、ロシアのインテリジェンスの機関が紹介されている。これらの国のインテリジェンスの現状と課題を通して、日本の安全保障政策におけるインテリジェンスについて考えるきっかけになればと思う。日本では2014年12月10日に特定機密保護法が施行されたことをふまえて、今後機密情報と政策について考えるときに繰り返し読みたい。 」

  • 【124冊目】カバー袖には「米国で最も評価が高く、広く読まれているインテリジェンスのテキストの初の邦訳」と記載されています。読売新聞毎週日曜日掲載される書評で発見し、4,000円以上をはたいて即買いしたのはもう4年前のこと………いつか時間のあるときに、と思っていたらいつの間にかこんなに長い時間が経っていました…ぼくも老けました。でも、その間にいろいろ勉強したお陰でこの本の価値に(多少)気がつけるようになりました。

    教科書とは、読み手に基本的なリテラシーを提供してくれる本であることから、これを読む前と読んだ後では見える景色が異なります。また、限られた紙幅において網羅性を達成しなければいけないことから、ある表現が示唆するものを理解するためにはかなりの勉強を必要とします。また、同じ理由から、頻繁な編集・改訂が不可能であるため、時宜を得た記載を求めることはできません。

    本書は、007に代表されるスパイ映画等による誤ったイメージについて、インテリジェンスの本質とは、「政策過程に対し、適時に、有用な情報を提供」することと喝破します。
    そしてそうした視点から、主に、
    ●米国インテリジェンスのシステム
    ●インテリジェンスの一般理論
    ●インテリジェンスに内在する問題、及び政策過程の関連における基本的課題
    について説明を加えています。

    説明を補足する例が米国インテリジェンスに関連する主要事件に限定されているため(というか限定的にならざるを得ないでしょうが。)、歴史の勉強にもなります。あと、行政の役割や政策形成過程の勉強にもなりました。

    邦訳原著となった第4版の出版がいつ頃なのかは見つけられませんでしたが、本書の邦訳初版は2011年に発行されています。しかし、それ以降、米国のインテリジェンスのみならず世界のそれについて重大な環境の変化がいくつかありました。これらについての考察を深めることは、読み手に課された課題でしょう(もちろん英語でのアップデート版を読めばよいのでしょうが笑)。最後に、そうした重要な変化について、備忘的に、思いつく限り列挙しておこうと思います。
    ●wikileaksによる米国の軍及び外交機密公電の公開(2010年7月〜)
    ●アルジェリアにおける襲撃テロ(2013年1月)
    ●習近平国家主席の誕生(2013年3月)
    ●いわゆる「スノーデン事件」(2013年6月〜)
    ●ハッサン=ロウハニ・イラン大統領の誕生(2013年10月)
    ▲日本版NSC及び国家安全保障局が発足(2014年1月)
    ●ウクライナ危機(ロシアによるクリミア併合は2014年3月)
    ●「イスラム国」の台頭とそれに対する世界の反応(「イスラム国」の建国宣言は2014年6月)
    ●米国上院情報特別委員会によるCIAの拷問に関する報告書(2014年12月)
    ●ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント等に対するハッキング(2014年12月)
    ●フランスにおける雑誌社襲撃テロ(2015年1月)
    ◯これら以外にも、米国・英国・フランスにおけるホーム・グロウン・テロリストによる一連のテロ事件等、重要な動きはありますが、ここでは割愛。

  • 図書館でかりる。インテリジェンスの教科書として評判が高い。
    書籍としては小林良樹氏の『インテリジェンスの基礎理論(第二版のほう)』が完結で分かりやすい。本書はしかし、「この著者、こんなまとめ方してるけど裏でどんな仕事してきたのだろう?」と想像をたくましくよんだときの奥行きという点において、日本の実務家・研究者による本にない味わいがある気がした。

  • もともとはDan BrownのDeception Pointに出てくるNROからつながってアンテナに引っかかり、昨年から読み始めここまで時間がかかってしまった1冊。
    望むらくは海外駐在前に読みたかったが、2011年5月初版なので致し方がないところか。
    「インテリジェンス」という言葉が日本でどのように理解されて使われているのかという点はさておき、この本でその基礎が紹介されるインテリジェンスのプロセス、すなわち、「要求」に沿って情報を「収集」し、「処理・活用」、「分析・生産」し、「配布」され、「消費」されるという基本的なプロセスは、秘匿度の差異こそあれ、企業でも行政でも様々な分野で行われている日々の活動・業務のモデルとして、とても参考になると思う。

    このプロセスの中で、どのような落とし穴、生じやすい問題があるのか、バランスを取るのが難しいポイントはどこか、といった点を学ぶことができる教科書として、ビジネスパーソン、行政官問わず、一読の価値はあるので色々な人に読んでもらいたいと思った。特に分析可能以上の情報が収集・処理されていること、要求とのすりあわせが大切であること、消費からのフィードバックに欠ける例が多いこと、などは自省も含め、参考になった。

    専ら米国の事例にはなるが、組織のあり方や対立、事例(9.11とイラク大量破壊兵器)によってインテリジェンス・プロセスがどのように学んだのか、学べなかったのかの解説も興味深い。

  • 読むのがむちゃくちゃしんどかったけどなんとか読んだ。米国諜報の組織、プロセスに関する話が主。ちなみに、米国に対して最も熱心にインテリジェンスをかけてくる相手が中国、フランス、インド、イスラエル、台湾及び日本だというのがなんとも。

  • 国家間のパワーポリティクスに係るインテリジェンスの展開

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インテリジェンス―機密から政策への作品紹介

米国で最も評価が高く、広く読まれているインテリジェンスのテキストの初の邦訳。インテリジェンスとは何か、米国のインテリジェンス機関の機能と役割、情報収集、分析、秘密工作、カウンターインテリジェンス、政策決定者および議会との関係などをバランスよく解説し、今後の課題を探る。最後に英国、中国、フランス、イスラエル、ロシアのインテリジェンス機関の紹介を付す。

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