「生きる力」を育む道徳教育

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  • 慶應義塾大学出版会株式会社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766419665

作品紹介・あらすじ

いま、日本の道徳教育を考える。

▼なくならない、いじめ自殺、校内暴力、不登校、少年犯罪。
私たちは、日本の未来を担う子どもたちを、そして日本という国をいかに育んでいくべきか。「豊かな人間性」を強調するこれまでの道徳授業に疑問を投げかけ、新しい道徳教育のあり方を提唱する。日米の道徳教育史の丹念な比較とデューイの道徳教育論の批判的考察からみえてくる「第三の道」とは。人格教育の父リコーナ博士とも交流が深い気鋭の教育学者、傑出の一冊!

感想・レビュー・書評

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  • 師匠がよくおっしゃっていることを本にしたようだ。きっと師匠と気が合うだろう。とても読みやすく、入門書としてもいい。
    心情追求型の道徳教育がなぜ広まったのかを歴史や行政の視点から書かれているのも興味深い。心情主義的な道徳授業を批判しつつ、否定はしていない。心情主義的な道徳授業だけでなく、道徳的実践力をそだてる授業が必要だとして、たとえば問題解決型の道徳授業を提案する。とても面白く、実践を見てみたい。だれか実践家知りませんか。

    そういえば、筆者は去年一年間、人格教育についてアメリカに調査に行ったいたということを研究会で話していたような。古い人格教育は、現在の日本のインカルケーションだったらしい(p.137)。この人格教育の効果を客観的に評価するために大規模な調査が行われたそうだ。結果は次の通り。
    人格教育を実施している学校とそうでない学校とを大規模に比較検討したところ、両者に大きな差異はないことが客観的なデータ分析として示された。また、この調査によると、子どもは人格教育で正直な行為を心情的に共感理解したとしても、時や状況に応じて不正行為をすることがあると実証的に論じている。(p.139)
    この結果に対して、人格教育は有効な反論ができず、徐々に衰退したらしい。この研究結果は1928~30に発表された。
    日本で「道徳の時間」が特設されてから約50年。本当に古い人格教育が現在の日本のインカルケーションなら、効果がよくわからないという授業を50年もした結果はどうなっているのだろうか…。
    そして、日本で心情主義型の道徳教育が批判されて20年以上経ついまもなお、学会や研究会では心情主義型の道徳教育ばかり取り上げられている。どうしてだろう。

    (まっちー)

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著者プロフィール

1969年、福島県生まれ。岐阜大学大学院教育学研究科准教授。
2002年、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。早稲田大学文学部助手、山形短期大学専任講師を経て現職。
主な著者は、単著に『プラグマティズムと教育―デューイからローティへ』(八千代出版、2002年)、『問題解決型の道徳授業―プラグマティック・アプローチ』(明治図書、2006年)、『ローティの教育論―ネオ・プラグマティズムからの提言』(八千代出版、2008年)、『ポストモダンの自由管理教育―スキゾ・キッズからマルチ・キッズへ』(春風社、2010年)。
共著に『教育の可能性を読む』(情況出版、2001年)、『経験の意味世界をひらく―教育にとって経験とは何か』(東信堂、2003年)『教育の臨界―教育的理性批判』(情況出版、2005年)、『道徳教育入門―その授業を中心として』(教育開発研究所、2008年)、『学校教育と道徳教育の創造』(学文社、2010年)、日本デューイ学会編『日本のデューイ研究と21世紀の課題』(世界思想社、2010年)。
翻訳に、トーマス・リコーナ、マシュー・デイビッドソン著『優秀で善良な学校―新しい人格教育の手引き』(慶應義塾大学出版会、2012年)。

「2012年 『「生きる力」を育む道徳教育 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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