- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766420531
作品紹介・あらすじ
高等教育研究の泰斗が、大学の未来を歴史から見通す
▼ユニバーサル化時代を迎えた日本の大学は、自らの手でその将来像を示さなければならない。
▼トロウの発展段階論、クラークの比較高等教育システム論を手掛かりに日本の教育行政を俯瞰し、これからの大学が備えるべきシステム、価値、理念を見定め、「全入」問題、高大接続、秋入学やファンドレイジングなど、具体的かつ喫緊の課題に重要な示唆を与える。
▼全ての大学人にとって必読の1冊。
感想・レビュー・書評
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB12825957 -
この夏学期は、空いている時間は、修論のデータクリーニングと授業の課題を捌くことにほとんどの時間を費やした。それは、自然科学の研究者が実験を行うようかもしれない。ある程度データも溜まり、7月上旬の論文指導での報告を終え、なんともいえない余韻ひたっていたところ、何気なく院生部屋にあった本書が目に入ってきた。すかさず、一緒にいた一人に「この天野先生の本、読みました?」と尋ねた。彼は「修論のテーマに関する1章があったらか買いましたよ。」といった。私もパラパラ目次とまえがきを読んでみた。この本にはトロウとクラークへのオマージュとも書いてある…。高等教育研究の第一世代のうちの一人による、静かでやわらかい語り調ながらも、ものすごい気迫に満ちた本書を、知らず知らずにうちに1章分を読み切っていた。次の瞬間、院生部屋のPCから本書を発注していた。
本書における個人的な関心は、大学分類、機能別分化、教養教育、分野別評価・参照基準だ。しかしこれらは各個別の問題でなく、一連の大学の課題として複雑にからみあっている。16章までを読みとおすとそれがよくわかる。
多忙な読者は、実務で情報の取捨選択や意思決定に日々追われたり、論文のテーマ周辺の先行研究を渉猟や、関連データ作成をせざるを得ない状況だったりするかもしれない。
だが、そういう人ほどこそこの本を読み、大学教育という海の中で自分はどこにるのか、ということを確認したほうが良い。本書は読者に一定の著者自身の軸を示してくれる。それは半世紀におよぶ研究から抽出された確固たる芯のようなものだろう。本書を読み、軸となる指針を一度受け入れた後、各自の課題に取り組むとまた違った考察になること請け合いだ。幸いにも今月末、著者の特別講義を受講することになった。一言ひとこと、じっくり味わいたいと思っている。