- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768456316
作品紹介・あらすじ
孤立無援の台湾人による台湾語辞書づくりから、複雑多様な台湾の現在が視えてくる。
感想・レビュー・書評
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筆者の田村志津江さんはノンフィクション作家で、台湾映画の日本への紹介もしてきた人だ。しかし、ぼくはそんな経歴は知らず、この本のタイトルになんとなく引かれて買ってしまった。そもそもぼくはいわゆる共通語以外の中国の方言にはあまり興味がない。そのエネルギーはむしろ、ドイツ語やフランス語、韓国語の方へ行ってしまった。だのに、この台湾語復権の物語に引かれたのは、考えて見れば不思議なことだ。田村さんはぼくより5つ年上で、台南で生まれている。その彼女がこの、台湾語をパソコンに喋らせた男アロンと出会ったのは、今から10年ほど前、『非情城市』が話題になったころだ。(残念ながらぼくはこの映画をまだ見ていない)この映画は、戦後の混乱期を背景にした台湾人家族の物語で、その中には、47年の国民党による台湾人大量虐殺事件、2・28事件が出てくる。それはアロンに言わせれば、国民党のその後の40年にわたる戒厳令の出発点であるし、きわめて組織的なものであったのに、映画は、それを混乱期の出来事のように描いているという。アロンは根っからの台湾人として、国民党統治下で弾圧されてきた台湾語を守り、それを音声化するために、コンピューターを学び、妻をおいてアメリカにまで留学する。それはやがて実を結ぶのだが、本書は、台南を生まれ故郷にもつ田村さんとアロンとの友情の物語であり、アロンが台湾語をパソコンにしゃべらそうとした格闘の物語である。
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コンピュータ自体珍しかった時代、さらには台湾という複雑な政治事情を抱えた国でこのようなドラマがあったとは知らなかった。
コンピュータ自体の話というよりは、政治的な話が多いので、
前者を期待して読むと肩透かしをくうかなと思う。
ただ、このように消え行く可能性がある言語が世の中に存在し、
それを守ろうと奮闘している人のことを知っておくことは
決して無駄じゃないと感じた。