ドリナの橋 (東欧の文学)

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制作 : 松谷 健二 
  • 恒文社 (1966年9月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784770402202

ドリナの橋 (東欧の文学)の感想・レビュー・書評

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  • ドリナ川(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナを流れる川)にかかる橋、ソコルル・メフメト・パシャ橋が舞台のユーゴスラビアの歴史を背景とした作品。橋のあるヴィシェグラードの町(ボスニア・ヘルツェゴビナ)は国境に近く、歴史の変遷の影響(「いつも発火しやすい国境は、今回は火を吹かなかった」[p251])を直に受けてきた。その様子、感覚を町に立って肌で感じながら(これが物語の幹だ、たとえば最後のオーストリア・ハンガリー帝国軍による橋の破壊はアリホジャの視点「橋だ!」[p345])、橋にまつわるさまざまなエピソードの枝葉。枝葉は一見とりとめなく挿入されていて、「短編小説にしたほうが良いのでは」とおもうかもしれない。しかし、ロッティカ(後半ではロッテ)やアリホジャのように最後まで残る線がある(最初に出てきて全体の背景になる橋をつくったオスマン帝国の宰相メフメド・パシャのエピソード(暗殺)は、後のオーストリア・ハンガリー帝国の皇后暗殺にリンクいている[p249-250])。その挿入がとても自然でいやらしくない。多くを挿入しながら、回収される線とされない線の絶妙なバランスで構築された、模範的な作品ではないだろうか(作者イヴォ・アンドリッチはノーベル文学賞を授賞)。

    東欧の複雑で混沌とした歴史の、救いがなく(挿入されている背景を含めたエピソード、人物のどれにも救いがない。ロッテは狂ってしまう[p336]し、アリホジャは橋に張りつけにされたり[p131-143]、最後は店を壊されて自分も死ぬ[p349]し)陰気でじめじめとした魅力(傍からみれば)は地図をのぞきこむ老人たちが「生物学的に感じとって」[p257]いたような、現地人からにじみ出てくるものであろう。

    それにしても、イエニチェリとして徴集される(親、母親にとっては誘拐だ)様子[p40-41]や、おそらく冤罪だが見せしめのために杭を体に(肛門から)打ち込まれる様子[p66]や、フェドゥンの自殺の様子[p191]などがみてきたかのようにリアル(ちなみに作者はこの町で育ったが)。この橋は、たとえその上の中央のカピヤが人びとが楽しくすごせる場所だったり、川の増水では、異なった信仰どうしにかかる橋であったり[p95]しても、死や不幸を招く橋のよう。

  • 大好きだったユーゴスラヴィアの歴史をかいま見れる本。

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